エリア越しの攻撃は有効か? ……試してみた結果!?
第四エリアと第三エリアの境目にやってきた。
充分に離れているので第五エリアに銃声は届かない。
第四エリアと第三エリアは乾季のサバンナだ。
霧雨に濡れた体はもうすっかり乾いている。
境目の向こうにウサギが見えている。
エリアを超えてもモンスターは見える。
「さっそくハメ技を試すっス! うらっ」
トウコが銃を発射する。
命中。
「キュウッ!」
撃ち抜かれた角ウサギが倒れ、宝箱に変わる。
「お、ちゃんと攻撃は通るな」
「ほかのウサギさんは逃げていきますねー。音も聞こえているみたいです!」
「ってことは、外から撃ってもバレるっスね! ちぇー」
エリアの外から気づかれずに撃ち続けるハメ技はダメってことだ。
音でバレる。
「ウサギだと逃げてくから確認できないな」
「スライムならおびき出せるっスかね?」
「あっ! スライムさんなら、あそこにいますよー」
リンが示したスライムを分身で釣りだす。
近づいて、あとは逃げるだけ。
こちらに気付いている敵がエリアを超えられるかを確認するのだ。
俺の操作する分身がエリアの境界線を越えて逃げていく。
スライムはそれを追う。
スライムは境界線に向かって進み――通過した。
「あーっ! 境界を通ったっス!」
「あら……ズルはできないんですねー」
「ハメるのは無理か。しゃあないな!」
スライムが分身の体に這い上がろうとしたところで、術を解除する。
スライムはぼとりと地面に落ちる。
俺たちは少し離れた位置にいるので、スライムには気づかれていない。
スライムはその場で動かず砂に擬態するように地に伏せる。
薄く平たくなって、地面の砂と混ざってしまう。
もう、よく見なければわからない。
「へえ、そうやって潜むのか……」
「すごいですね。スライムさん。魔力の反応も弱くなってます」
「せっかくだから撃ってもいいっスか? やっちゃってもいいっスよね!?」
トウコがショットガンを手に訊ねる。
「いいけど……言い方! サイコパスキャラかよ!?」
ひひ、コイツ殺っちゃってもいいよね? ヒャッハー! みたいな聞き方ですよ!?
「シャッガンなら、核が見えなくても一撃っスよ! うらっ!」
トウコが手にしたソードオフショットガンが火を噴いた。
派手な銃声。
小さな複数の弾が飛び出して、砂に潜んだスライムに突き刺さる。
切り詰められた銃身のおかげで、広い範囲に弾が拡散する。
砂煙が舞う。
核の位置がわからなくても、面で攻撃する散弾の威力はスライムを倒すのに充分だった。
スライムが塵に変わる。
トウコが撃ち終えたショットガンをくるくると回転させる。
回転を止めると銃を折る様にして排莢した。
空のショットシェルが押し出されて後方へ飛んでいく。
「トウコちゃんすごーい!」
リンが拍手を送る。
「おお、ショットガンかっけえな!」
「へへー! やっぱ強いっスよねー!」
分身にスライムが落とした宝箱を拾わせる。
中身は――
「――ショットガンの弾だな。一発か」
「そうなんス。ショットシェルは一発しか出ないんでコスパ悪いんス」
トウコは拾い上げたシェルを装填する。
中折れ式だ。
上側からシェルを装填すると、トウコは折った銃を元に戻す。
これで再度発射できるわけだな。
「一匹倒して、弾が一発か。増えないんだな」
確かにコスパは悪い。
だが強いからヨシ!
リンが残念そうにため息を吐く。
「ズルはできないんですね……」
エリアチェンジを利用したグリッチは無理だった。
ワニをハメることはできないだろう。
エリアを越えて追ってきて、全滅する可能性がある。
「いきなりワニで試さないでよかったな!」
「思いついただけでやらないっスよ! ちゃんと相談したっス!」
トウコはドヤ顔だ。
「やる前に口に出したのは成長したな」
「えらいね、トウコちゃん!」
「でしょでしょ!」
トウコはさらに腰に手を当てて鼻を高くした。
普通にしただけで褒められているんですけどね!
 




