第五エリアと切り詰めたアレ……!? その2
トウコが手の中でショットガンをくるくると回す。
ぴたりと回転を止めて銃を構える。
「ソードオフショットガンか。なかなかいいじゃないか。だけど――」
銃身が切り詰められてコンパクトになっている。
限界まで切り詰めた銃身は拳銃に近いサイズだ。
ショットガンとして見れば少しアンバランスに見える。
「かっけえっスよね!? ――だけど?」
俺はあきれ顔で言う。
「だけど、そういうのはもっと早く見せろよな!」
ここはもう第五エリアだ。
ボスがいるかもしれない。新種のモンスターが現れるかもしれない。
そんな状況で銃の性能を見せてもらうわけにはいかない。
銃を撃てば音が出るからな。
トウコが慌てて弁明する。
「うええっ!? そ、そうっスけど……さっきレベル上がったばっかりなんスよー!」
「あー、さっきのウサギでか?」
「そうっス! ついさっきっス! もったいぶったわけじゃないっス!」
いや、もったいぶっただろ……。
ボロがでよる。
リンがフォローに回る。
「それならしょうがない、ですよね?」
「でしょでしょ!? レベル上がったり下がったりはしょっちゅうだからっ! 忘れてたわけじゃないっスからっ!」
忘れてた説もあるのかよ!?
レベルが下がるのがしょっちゅうというのは……。
「ま、いいや。――自律分身の術! ちょっと偵察してきてくれ」
自律分身が現れる。
説明するまでもなく状況は理解している。偵察だ。
ボスがいれば様子を見るのだ。
「おう。了解だ、俺! 行ってくるぜ」
「分身さん。いってらっしゃい!」
「お、店長二号! 頑張れっス!」
第五エリアは霧雨のせいで視界が悪い。
天気が悪いせいで少しうす暗い。
自律分身はエリアの奥へと先行する。
奴に偵察を任せている間にトウコの話を聞こう。
「で、そのショットガンの性能はどんなもんだ? いちおう言うが、いま撃つなよ」
銃声で無用の注意をひきたくはない。
トウコは口をとがらせる。
「撃たないっスよぉ!」
「どうだかな……」
「これは単発のショットガンっス。小型だから片手で扱えるし、威力はいつもの銃より強いっス!」
「単発? 微妙じゃねーか?」
「見ての通り単銃身っス! せめて二連だったらいいんスけどねえ。頑張っても出せないっス」
シングルバレルとは銃身が一つということだ。
ダブルバレルであれば、二発の弾丸を一度に装填、発射できる。
「頑張ってもムリか」
「水平二連とか、ポンプアクションは出せないっスね。連射できるヤツはムリみたいっス!」
「へえ。そりゃスキルレベルの制限だろうな」
俺の【忍具作成】や【薬術】などもスキルレベルが低いと作れるものが限られる。
なんでも作れるわけじゃない。
「いつもの西部劇風の銃も好みで出してんのか?」
「出したい銃をイメージするんス。いつもは世界で最も高貴な銃、シングルアクションアーミー風をイメージしてるっス!」
リンはよくわからないといった感じで首をかしげている。
銃の話題は入ってこれないんだな。
何度か口を開こうとして、黙ってしまっている。
俺はちょっと待ってみる。
「……あーみー風ってことは、なんとなくなの?」
「っぽい感じっス! ゲームで見たくらいっス!」
そんなイメージでちゃんと動く銃が出るのか。
スキルはイメージの影響を受ける。
だけど、足りない部分は補われる。
便利なものだ。
「ショットガンの弾はどうするんだ? 補充できるのか?」
「できるっスよ! 敵を倒せば【弾薬調達】で手に入るっス!」
「よかったー」
「拳銃で倒せば拳銃の弾。ショットガンで倒せばショットガンの弾が出るわけか?」
「そうっス! それに事前に銃を出しておけばいいっス!」
トウコは二丁目のショットガンを出して両手に持つ。
さらにホルスターには拳銃が二丁収まっている。
やたらと銃まみれだな。
「使い捨てるわけか? 重そうだけど」
「ちょっと重いっスねえ。まあ、ボスがいるかもしれないから念のためっス!」
「お、ちゃんと考えてたんだな」
俺も今回は調査のつもりだったから重い武器は持ち込んでいない。
ボスと戦うのは避けて様子見だけにしたい。
俺やトウコのダンジョンと同程度の強さなら勝てるだろう。
「あれっ!? 分身さん大丈夫でしょうか!?」
リンが指さした先に大きな水しぶきが上がっている。
自律分身が進んだ方向だ!
 




