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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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ところで、俺のマフラーを見てくれ。こいつをどう思う?

すごく……ピロピロです……。

「あ、そうだった。忍者マフラーを作ろうと思ったんだった!」


 いまは【忍具(にんぐ)作成】のレベル1だけ取得した状態だ。


 スキル取得はいったん中断。まずはマフラーを作る。

 これができたら、つぎに熟練度システムの検証をやろう。

 そのあと、スキル取得の続きをやる。


 一つずつこなしていこう。


「うーむ。やる事が山積みだぜ」


 やりたいことがたくさんある。

 素晴らしいことだ!


 意味のない仕事(ブルシット・ジョブ)はつまらないものだ。

 クソオーナーの下で働いたり。

 そういうものとは違う。


 でもこれは意味のある仕事(ライフワーク)だ。

 意味とは、お金ではない。


 なにしろ俺のダンジョンは金にならない。


 外にダンジョンの品物は持ち出せない。

 だから売ることもできない。


 ダンジョンの中で金銀財宝を得ても、大金持ちにはなれない。

 金儲けの手段にしたいわけじゃないから、いいのだ。


 求めているのはやりがいだ。

 誰かに搾取されるものではなく、自分で味わうものだ。

 自分で望んで、自分で決める。


 やりたいことが多すぎて手が回らないこの感じ。

 いや、楽しいね!


 これまで趣味ってものがなかった。


 今ではもう、ダンジョン探索が俺の趣味なんだ!


 山登りだって、そこに山があるから登る。

 楽しいからやる。それだけだ。


 ダンジョンはお金を生まない。


 苦しいことも痛い目を見ることもある。

 でもいいんだ。


 俺は趣味でダンジョンをやっている忍者だ!

 それでいい。



 よし! それじゃあ、忍具作成にとりかかるとしよう。

 とりあえず試してみるしかない。


 【忍具(にんぐ)作成】を使おうと念じてみる。


 すると、スキルから情報が流れてくる。


 不思議な感覚だ。

 【歩法】の時と似ている。


 頭に直接、働きかけてくる感じ。

 言葉ではなく、ふわっとした情報だ。ニュアンスのような……


 レベルアップしたときのシステム音声みたいに、明確な文字や声が響くわけじゃない。

 スキル取得みたいにウィンドウ表示はされない。


 どう使えばいいかの情報が頭に浮かんでくる。


「作りたい品物を強くイメージすればいい……のか」


 イメージは具体的であるほどいい。

 あいまいだと、品質は落ちる。


「イメージか……」


 材料があれば用意して、ベースにする。

 材料が足りない分は魔石で補うこともできる。

 全く材料がなくても魔石だけで作ることも可能だ。

 その場合はコストが増えてしまう。


 作成できるのは忍者道具だけ。

 それ以外は作成できない。


「マフラーは忍者の装備品だから大丈夫だ!」


 大事なことなので、何度でも言う!

 マフラーは忍具だ。いいね?



「じゃあ、さっそくやってみるか」


 アパートの部屋から持ってきた黒いマフラーを手に持つ。

 長さが二メートルに満たない、普通のマフラーだ。

 これだけだと少し短い。


 逆の手に魔石を持つ。

 どれだけ必要かわからないので、今ある分だけ。


 三階層で得た魔石はモノリスに貯金してしまったので、手元には帰り道で狩ったゴブリンの魔石が7つある。

 足りなかったら、狩りに行けばいい。


 作りたい品物を頭に浮かべる。


 できる限り詳細に。できる限り強く思い描く。


 黒いマフラー。暗闇に溶け込めるよう光を反射しない艶を消した黒。

 首に巻いた時に地面につかないギリギリの長さだ。

 走るときにはためくイメージ……。

 マフラーをつかまれたり攻撃されても首が締まったりしない。

 自分で踏んだりしない。動作を阻害しない。

 強度は弱くていい。トカゲのしっぽのように千切れる。

 あとは……軽く、音を立てない。


 漫画やゲーム、特撮に登場する先輩忍者たちの姿を思い描く。

 都合のいいイメージをふんだんに盛り込む。


 別に実現しなくても構わない。

 思った通りにできればラッキー、くらいの気持ちだ。


 スキルにイメージを伝えていく。



 さあ、頼むぜ!


「【忍具(にんぐ)作成】!」


 スキルが発動する。

 材料と魔石がぼんやりと光を帯びる。


「おおっ」


 光が強まって、変化が起こる。


「できた!」


 光が収まると、俺の手の中には新たな忍者道具が生まれていた。




 長く、黒いマフラーだ。


 見た目はイメージ通り。

 ベースにしたマフラーの安っぽい光沢は消え、質感のいい黒に仕上がっている。

 暗い場所に潜むのにうってつけだ。


「なかなかいいじゃないか……どれどれ」


 さっそく首に巻いてみる。

 二本の先端が後ろに流れる巻き方だ。


 感触はなめらかで、肌に刺激がない。

 もとにした安物のマフラーよりもずっと上質だ。


 たなびいたマフラーの先端は、立ち上がった時に地面すれすれの長さになる。

 しゃがみこめば足元に垂れて地面につく。音は立たない。


 ステータスと【歩法】のおかげもあってか、走ったり止まったりしても、自分のマフラーを踏みつけるような間抜けは晒さない。


 体にまとわりつくこともなく、絶妙なバランスを保っている。



 オシャレのためにちょっとくらい努力はする。

 実用性ばかりを求めて、現場系野球忍者になっていた姿を思い出す。


 あれじゃあダメだ。

 誰にも見られないとはいえ、自分のテンションが上がらないからな。


 見た目にもこだわっていこうじゃないか!


「さっそく、お披露目といこう!」


 単にマフラーをなびかせたいだけじゃない。

 ないったらない!


 もう一つの作業も並行させるのだ。

 スキルの熟練度稼ぎを兼ねて、ゴブリンに見せつけてやるのだ!



 できたての忍者マフラーをなびかせて、ダンジョンを疾走する。


 洞窟の壁を、天井を駆け抜ける。


 左手を壁にそえてバランスを取る。

 三点で身体を支え、右手にはバットを握る。


 進路上にゴブリンを発見。

 勢いを落とさずに走り寄り、バットをお見舞いする。


「うりゃあ!」

「グエッ!」


 くわぁんと、バットがいい音を立てる。

 ゴブリンが吹き飛び、塵となる。


【壁走りの術】を解いて床へ降りたつ。

 着地した俺に続いて、ふわりとマフラーが舞う。


「ううむ。なかなかいいじゃないか!」


 ゴブリンに対してマフラーのかく乱効果は期待できない。


 ただの目立つ布だ。

 艶消しの黒色で目立ちにくくした、目立つ布だ。


 つまり、さりげないオシャレだな。



 マフラーは、なかなか気に入った。


 【忍具作成】スキルで生み出した第一号の忍者道具だ。

 コウモリの攻撃を引き付けるデコイとしての働きを期待している。

 普段は忍者らしいさりげないオシャレ感を演出する小道具だ。


 安全性もバッチリなはず。

 イメージ通りにできていれば、首が締まることはない。

 いざという時は、プッツリとちぎれてくれるにちがいない!

マフラーは忍者道具だと思った方! ブックマーク、評価をお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 必要なときに、ぶっつりと いや、あれは本人が切るんだよ、ぶっつりと……………ww
[一言] 壁走りを極めたら空中ダッシュになるだろうか。
[気になる点] そもそもコウモリ対策のためにマフラーを作ることになって、そのためにスキルを取って作った。 であれば、最初にやるのは、マフラーがコウモリに有効かを確認することでしょ? ゴブリンを殲滅して…
感想一覧
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