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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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草原ダンジョンの調査・第四エリア

 サバンナエリアを進んでいると、システムさんが反応した。


<この先は第四エリアになります>


 事前にエリアを()えたときに教えてくれるように頼んでおいたのだ。

 草原からサバンナに切り替わったときのような変化はない。

 サバンナが続いている。


 リンがシステムさんへ問いかける。


「システムさん。第四エリアは第三エリアとなにが違うの?」

<フィールド設定としては第三エリアと同じです>


「サバンナ風ってことかな。見た目は同じだな」

「ウサギもいるっスね!」

「リン。どういうモンスターがいるか聞いてみて」


「第四エリアにはどういうモンスターがいますか?」

<不明です。または、権限が不足しています>


「ふーん。モンスターの情報は教えてくれないか」


 そうなると思った。

 システムさんに聞いてもたいていは空振りだ。

 たまに情報が得られればラッキーくらいに思っている。


「システムさんはもともとチュートリアルシステムだからですかね?」

「そうかも。もっと育てればいろいろ教えてくれるのかもね」


 チュートリアルシステムからスキル化した【サポートシステム】だ。

 リンのサポートをするスキルであって現地ガイドではない。


 トウコがタコウインナーに不満げな視線を送る。


「ケチくさいっスねー!」

「じゃあトウコ。モンスターの情報を教えてくれ」

「うええ? そんなんあたしが知るわけないっス!」


 トウコがかぶりをふる。


「とまあ、これと同じことだと思うぞ。別にケチってるわけじゃない」

「あー、専門外だって言いたいんスか?」

「まあそうだな。システムさんは便利だけど万能じゃないってこと」

「しゃあないっスねぇ」


 トウコはしぶしぶ頷く。


「でもシステムさんはカワイイからいいですよね!」


 リンはタコウインナーに微笑みかけている。

 とぼけた顔のタコウインナーは無言で浮かんでいるだけだ。


「……うーん? ソウダネ」

「一周まわってかわいく見えてきたかもしれないっス」


<――リン。アバターを変更しますか?>

「アバターはそのままで!」


 断固変更しないらしい。

 システムさんはエリアの境界がわかるだけでも便利だ。



 第四エリアを進む。

 日差しは相変わらず強く、乾燥した風が吹いている。

 風にススキのような植物が揺れる。


「おっ! 木が生えてるな」


 第三エリアにはなかった木が見えてきた。

 遠くにぽつぽつと背の高い木が生えている。


「あの木、なんスかね?」

「おおきいですねー」

「ちょっと見てみようぜ」


 近くに寄ってみると見上げるほど背が高い。


 充分な太さがあるが登るのは難しい。

 トゲがあるからだ。


 幹は背が高く、葉は木の先端側にある。

 背伸びしても手が届かない。


 アフリカでキリンがムシャムシャしてるヤツに似ている。


「システムさん。この木はなんて名前ですか?」

<不明です。または、権限が不足しています>


「使えないっスねー!」


 まあ、ぶっちゃけそうだな。

 もっと便利に答えてくれたらいいのにね。


「ちょっと登ってくる!」

「あっ! ゼンジさん。トゲがあってあぶないですよ!」

「大丈夫だ。普通に登るのとは違うからな!」


 幹にはトゲが生えていて木登りは難しい。

 枝にも葉を守るかのようにトゲがある。葉を手で摘み取るのは危険だ。


 念のため防刃手袋をはめる。


 でも俺は普通に木登りなんてしない。

 ただ歩くだけだ。


 木の側面も壁みたいなもの。ならば歩ける。


 靴の底で大きなトゲをよけながら歩いて登っていく。

 トゲのない部分に手をそえて、安定した枝の上に登る。



「おおー! さすが忍者っス!」

「すごいですね!」


 【壁走りの術】は便利である!



 俺は手ごろな枝を数本、ナタで切り落とす。

 せっかく高いところに上ったので周囲を見渡す。


 ギラギラと照り付ける太陽。

 熱せられた地面がゆらゆらと陽炎を立ち上らせている。


 角ウサギが草を食んでいるのが見える。

 キリンはいないようだ。

 ゾウとかライオンみたいな大型の動物も見当たらない。


 ひとまず安心だな。

 スキルやステータスがあっても、大型動物に勝てるかはわからない。

 仮に現実世界のサバンナに放り出されたら生き残れる自信はないな。


 ここは地球のサバンナによく似ている。

 俺はアフリカに行ったことはないから、あくまでもイメージに過ぎないけど。


 でも地球のサバンナには角ウサギみたいなファンタジーな生き物はいない。

 似ているけどダンジョンの中なんだ。



 リンが樹上の俺を見上げている。


「なにか見えますか?」

「とりあえず大型動物は見当たらない。見渡す限り草原が広がってる」


 トウコが切り落とした枝をつついている。

 トゲがあるから危ないぞ。


「この枝はどうするんスか? ――いてっ!」

「おい、触るなって。システムさんに鑑定してもらうんだよ。リン、頼む」


「システムさん。これはなにかな?」

<名称:アカシアの枝。カテゴリ:素材>


「あっ! システムさんが答えたっス!」

「使いようだな。これなら専門分野だ」


 生えている木は鑑定できない。

 でも枝を切り落としてしまえば、ただの物品だ。

 【物品鑑定】の対象になる。


「しかしアカシアだって……? 地球の植物だよな?」

「ハチミツが取れたり、花を天ぷらにして食べれたりするんですよね!」

「さすがリン姉! 食べ物に詳しいっス」


 木を食べ物として覚えてるのスゴイ!

 さすがって言うかなんて言うかスゴイ!


 街路樹(がいろじゅ)として植えられたりもしているはずだ。

 俺は樹木に詳しくないので、見ただけじゃわからんな。



「システムさん。これ、食べられますか?」

<不明です。または、権限が不足しています>


「キター! また専門外っス!」

「システムさんは食材も専門外か。そりゃそうだな」

「【食品鑑定】とかが必要なんでしょうか……選べませんね」


 リンは手元をのぞき込んでいる。

 俺も【鑑定】系は選べない。


「選べたらそのスキル取るつもりっスか?」

「取ります!」


 即答だ!


 【敵鑑定】とか【人物鑑定】があるならそっちがいいと思うんだが……。

 まあ自由だよね。人のスキルに口出しする気はない。


 スキルはたぶん、本人に必要なものや適性のあるものが現れる。

 押し付けるものじゃない。


 ガチ攻略するならスキルは厳選するべきだし、死にスキルを取らないほうがいい。

 でも実際に使ってみないと有用かはわからない。

 【モデル】だって予想に反して強力だった。


 こうしてサバンナで日差しにあぶられてもリンは日焼けしない。

 角ウサギに刺されても大ケガをしないで済むほどに肌が強い。

 【モデル】に含まれる【美肌】のおかげだ。


「日焼け止め持ってくりゃ良かったな」

「このままじゃ黒ギャルになっちゃうっス!」

「そもそもお前はギャルじゃないんじゃないか?」


 ギャルってもっと陽キャだよね。

 明るさと社交性とファッション性を兼ね備えるのがギャルだ。

 トウコには何かが足りていない。


 トウコは変わり者とかオタク枠だろうな。

 アホ枠か……?


「女子高生は日焼けすると黒ギャルに進化するっス!」


 トウコは手を目元に当ててギャルのようなポーズをとる。

 やっぱりアホ枠だな!


「ええっ!? そうなの?」

「違うと思うぞ!」


 信じるなリン! 天然枠かよ!?

【読まなくてもいいうんちく】

サバンナに生えている木を調べたらアカシアが該当した。

しかし……ややこしすぎる!


日本に生えているのはニセアカシア。

ハチミツが取れるのもニセアカシア。

アカシアと呼ばれているものはたいていニセである。


ミモザと呼ばれることもあるが、アカシアとは違う。

ミモザはオジギソウのこと。


ヨーロッパに持ち込まれたときにオジギソウに似ているのでミモザアカシアと呼ばれた。


日本に明治時代に輸入されたとき、ニセアカシアをアカシアと呼んでいた。

あとからアカシアが日本に入ってきて、区別のためにニセアカシアと呼ばれるようになった。


このため今でもニセアカシアがアカシアと呼ばれる。

本来のアカシアは日本では育ちにくいのでマイナーである。


ニセアカシアはエンジュに似ているのでハリエンジュとも呼ばれる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 防刃手袋って購入品でしたっけ・・・こっちのダンジョンで作成したのかな
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