表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

283/1461

ブラック社員から忍者にジョブチェンジしたら年収一千万プレイヤーになった件!?

編集履歴 2022/09/16

表現微修正(内容は同じ)

 年収千二百万になってしまった……!

 しかも入社支度金(サインオンボーナス)が二百万円!

 非課税のあやしい(クリーンな)お金だ!



 札束が立った! 札束が立った!


 クロウの甲斐性ナシ! もう知らない! と言われずにすむ。

 ヒモ忍者と(さげす)まされることもないぞ!


 リンはそんなこと言わずに喜んで(やしな)ってくれそうではあるけど。

 尻に敷かれたくは……ある!

 チガウそうじゃない!


 落ち着け。落ち着くんだ……。

 金を前に動揺するとか小物っぽいことだ!


 素数を数えて落ち着くんだ……。


 2……3……5……1193……1201!


 千二百万!?

 落ち着けないわ!



 俺は冷静を装って言う。


「そういえば御庭さんは、俺の実力も知らないでお金を出しても平気なんですか?」

「君の実力はもうわかっているじゃないか。これ以上なく証明されているよ!」


 俺は忍者だし、術も見せた。

 でも戦うところは見せていない。

 俺はそんなに強いほうじゃないと思うんだけどな。


「証明されている? 忍術を使うからですか?」

「それもあるけど、ほら、そこの冷蔵庫さ!」


 ああ、そっちか。


 御庭が続けて言う。


「悪性ダンジョンの前段階からトウコ君を救ってみせた。これは誰もなしえなかったことだ!」

「まあ、それは俺がダンジョン保持者だからですよね」


 異能者はそもそもダンジョンに入れない。

 悪性前段階では入れるけど、力が弱まる。


 俺じゃなくてもダンジョン持ちならできるんじゃないの。


「強者が弱者を打ち倒すのは簡単だ。その点、クロウ君は違う。勝てるからやるんじゃない。まさに命がけで挑んでいくんだ。英雄的行動だよ!」


 御庭はパチパチと手を叩いている。

 弱いと思われてんじゃんやっぱり!


「なんか、馬鹿にしてません……?」

「もちろん本気だとも!」


 ナギさんが小さく口の端を上げて(笑って)言う。


「……嫌いじゃないですよ、そういうの」

「そうですかね……」


 御庭が言うとちょっとうさんくさいけど、ナギさんが言うならオーケーだな!

 小さな笑みには真実味がある。


 御庭が言う。

 イケメンサングラスがなに言っても、うさんくさい。


「リスクとかリターンとか、(さか)しく考えて動かないんじゃ、なにも変えられない!」

「そうですよね。頭で考えたってしょうがない。動くことでしか、誰かを救うことなんてできない! トウコを見捨てて逃げたとしたら、俺はこの先ずっと悔いることになったでしょう」


 理屈じゃない。逃げられないときもある。

 やらなきゃならない。


「……僕も考えさせられた。忍者は生きて帰るのが原則だ。だけど滅私奉公(めっしほうこう)の精神も大切だよね!」


 私を滅し、(人々)に奉ずる。

 公儀隠密っぽい。


 武士っぽくもある。

 ――武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり


 この考え方は行き過ぎればブラック労働にも通じる。


 でも俺は武士じゃないし、社畜はもう脱した。


「死なない範囲でやりますよ」

「そうだね。何事もバランスだよ。(かたよ)ってはいけない」


 御庭が手を叩いて話題を変える。


「さてと! 話は以上だ。質問とか気になることはあるかな?」

「連絡のないときはどうしていればいいですか?」


 呼ばれない限り悪性ダンジョンの仕事はないはず。

 だとしたら待機中はなにをしていればいいのか。


「自由にしていてかまわないけど、トウコ君のダンジョンの面倒を見てほしい。ダンジョンは定期的に攻略しないと悪性化する。日々のメンテナンスが必要ということだね」

「はい。もちろん俺のとリンのも。ちなみに間引きを行う頻度ってどれくらいですか?」


 俺のダンジョンは毎日潜るから問題ない。

 リンもトイレのたびにモンスターを倒している。

 トウコは放置していたみたいだ。


 どれくらいの頻度で掃除すればいいのか。


「トウコ君のダンジョンは成長が早いタイプみたいだから、最低でも週に一度はやらないと危ないね。このペースはダンジョンによって違うみたいだよ」

「週一なら余裕ですね。もうちょいやっときます」


「あとは……この街に公儀隠密の拠点を作っておくつもりだ。セーフハウスみたいなものだね。誰か人を配置しておく。クロウ君達も自由に使ってくれていいよ。後で連絡する」

「セーフハウスですか。なかなかロマンありますね」


「忍者の隠れ家さ。何か所もあるから、他の街に行くときは使えるよ」

「隠れ里みたいでいいですね」


 俺が何となく口にしたワードに御庭が激しく反応した。


「里か……! 今はまだビルとかマンションの一室でしかない。いずれは忍者を増やして里を作ろう!」


 御庭が決意に満ちた表情を浮かべる。


 忍者の里を作る……。

 面白そうだけど難しそうな夢だ。

 まず忍者を増やすなり探すなりしなきゃな。


 ただでさえ隠蔽される異能者やダンジョン保持者。

 さらに人目を忍ぶ忍者を見つけるとか……。


 これは俺の夢じゃなくて御庭のだ。せいぜい頑張れ。

 ……まあ、見つけたら連絡くらいしてあげよう。


「……まあ、頑張ってください」

「つれないねクロウ君! 一緒に頑張ろうナギ君!」

「……」


 ナギさんは無言で目をそらした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ