表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

281/1461

ホワイト忍者は条件について話したい!

編集履歴 2022/09/16

表現やジェスチャーの追加(内容は同じ)

 公儀隠密という組織や悪性ダンジョンについては理解した。


 これで、職場と仕事内容がわかった。

 次は待遇と条件の話だ。



「それじゃあクロウ君が公儀隠密で働く条件について話そうか……」


 御庭のテンションはまだ低い。


「まず、俺たちの保護です。俺、リン、トウコのことです。敵対的な勢力(グループ)からの保護や、生活が脅かされないようにしてほしい」


 俺が求めたいのは安全の保障である。

 公儀隠密に所属することは別グループの敵になる可能性がある。


 それに、忍者バレして普通の生活が送れなくなるのは困る。


 隠蔽があるから、一般人にダンジョンのことはバレない。

 だけど、異能者には知られる可能性がある。


 完全な保護はムリだとわかっている。

 それでも、できる限りの保護は求めてもいいだろう。


 御庭は頷く。


「それは仲間として当然のことだ。ほかのメンバーも同様に保護しているよ」

「とくにトウコのことを配慮してほしい。変異だとか、なれの果てだとか言って変な目で見られたくない。御庭さんのチーム内であってもね」


 俺は御庭をじっと見る。

 御庭は俺の目を見返す。


「それはメンバーに言い聞かせておく。でもトウコ君の面倒を見るのはクロウ君の仕事になる。もちろん、きちんと管理するんだよ」

「もちろん面倒は見ます。他の誰にも任せられない」


 俺以外の誰かがトウコの面倒を見ると言っても、断るだろう。

 目の届くところに置いておきたい。

 御庭であれ大河さんであれ、人任せにできることじゃない。


 御庭は俺の目を見続けながら言う。

 その目は強く問いかけている。


()()()()()()は、わかっているね?」

「そのときは俺がカタをつける。その覚悟はできています」


 俺は断言する。覚悟を決めて強い意志を目で示す。


 冷蔵庫で俺がどうしようもないとき、トウコは俺にカタをつけた。

 その決意を俺が持てなくてどうする。


「さすがだね。一晩でそれほど決意が固まるとは思わなかった。なにかあったのかな?」

「それは、秘密にしておきます」


 御庭が頷く。

 忍者に秘密はつきものだからな。

 お互い、あまり探らない。


「そうかい。他に希望する条件はあるかな?」

「特別な条件としてはこれだけですね。質問はいろいろあります。たとえば仕事はどうやってはじめるんですか?」


 悪性ダンジョンへの対処が主な仕事だ。

 どのくらいの頻度(ひんど)で、どうやって集まるんだろうか?


「必要なときにはこちらから連絡する。普段は自由にしていてくれて構わないよ」

「フルタイムで働く忍者になるわけじゃないんですね」


 出勤自由。拘束なし。

 呼ばれたときだけ働く感じか。


「フルタイムを希望なのかい?」

「いえ、ぜんぜん」

「だよね。君は自由にしていたいだろうし」


 当然そうだ。

 あくまで公儀隠密は副業だ。

 俺のメインは自分のダンジョン生活だ。


 いちおう、店の仕事もあるけどこれは副業以下だな。


 史実の忍者も副業や表の顔を持っていたという。

 農民だったり薬売りだったりする。

 ほとんど忍者としての仕事をせず潜伏していたりね。

 場合によっては潜伏したまま動かないこともある。


 忍者に副業はつきものだ。


「元の仕事……普通の飲食店の仕事をちょっとやる予定だけど問題ないですか?」

「表の仕事を持つのはいいことだ。こちらの仕事を頼むときに抜けれる程度にね」


 どっぷり仕事に戻る気はない。

 引継ぎや手伝い、補佐みたいなもの。本気の復職じゃない。


 公儀隠密の仕事は人命に関わる。優先度は高い。


「ま、ちょっと手伝う程度の予定だから大丈夫です」

「ならオーケーだね」


「仕事の頻度はどれくらいですか?」

「月に数回くらいかな。不定期だよ」


 それだけ? 少なくない?


 仕事としては楽でいい。

 だけど、悪性ダンジョンへの対処はそれで間に合うのか……?


 俺はもっと多いものだと思っていたんだが……。


「あれ? 悪性ダンジョンってあんまり発生しないんですか?」

「悪性ダンジョンはかなりの数が生まれる。だけど全部に間に合うわけじゃないのさ」


 俺は首をかしげて問う。


「トウコのダンジョンは前兆があったんですよね。だから潰しに来た。ダンジョンを見つける方法があるんじゃないですか?」

「トウコ君の件は、もともとクロウ君をマークしていたからわかったんだよ。毎回見つけられるわけじゃないんだ」


 ああ、俺のことをスカウトしようと目をつけていた。

 悪く言えば監視していたのか。

 だから、周囲の異常に気付けた。


 じゃあ、マークしていない場合は?


「見つからないで大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃないよ。だけど隠蔽のせいで見つけるのが難しいんだ。時間制限もある。対処する前に切り離し(パージ)が起こってしまう」


 悪性ダンジョンは日々発生する。

 だけど、ほとんどは対処する前に時間切れになる。


 災害は起こるけど、発覚しない。

 世界が悪性ダンジョンを切り捨てるからだ。


 日々、被害が出ているわけだ。


「見つける方法はあるけど、限られているってことですか?」

「うん。日本全国を守り切ることはできないんだ。残念ながらね」


 御庭は表情を曇らせる。


 見つけられない。間に合わない。手が回らない。勝てない。

 いろいろと問題があるってことだろう。


「それは人手不足だからですか?」


 公儀隠密は人手不足だ。

 異能者やダンジョン保持者は少ない。


「人手不足のせいもある。警察や消防みたいに全国をカバーしてるわけじゃない。当たり前だけど、火事や犯罪みたいに通報されるわけじゃないんだ。こっちから見つけて介入しなきゃいけない」

「全国をカバーしていない……人口密集地を重点的に守っているんですか?」


 現代の通信網だって全国をカバーしていない。

 電波の届かない地方はある。

 過疎地にはインフラが行き届いていなかったりする。


「それすらできていない。僕らの組織は小規模だ。別のチームを含めても、ごく一部しかカバーしていない。救えない。……ガッカリしたかな?」

「いえ。考えてみれば当たり前ですね。そんなに異能者が多いわけはないんだ」


 火事や犯罪とは違う。

 警察や消防みたいに全国に拠点があるわけじゃない。


 非公式で秘密組織だ。

 規模が大きいわけはない。


 実在する公安とか特殊部隊だって、そんなに人数はいない。


 犯罪はなくならないし、火事で燃え尽きる家も多い。

 人間は病気にも犯罪にも災害にも対処しきれない。


 同じことだ。

 ダンジョンの害をすべて防ぐことはできない。


「わかってくれるかい? 僕も全員を救えればいいと思う。誰も泣かない世界になればいいと願う。だけど現実には力が及ばないんだ」

「だからできる範囲でやるんですね。無理をせず、逃げもする」


「そうだよ。僕らは異能を持っている。だけどスーパーヒーローじゃない。できることには限界があるんだ」

「そうですね。俺も一人を救うので精一杯だ。この手が掴めるのは、手の届く範囲だけです」


「それでも僕らは諦めない。現実的な手段で、理想を追い求める!」


 御庭が立ち上がって宣言する。

 ナギさんも頷いている。


「わかりました。呼ばれたらすぐ駆け付けるようにします」


 ちょっと脱線したけど、仕事のやり方はわかった。


 月数回程度、呼ばれたときに駆け付ける。

 最優先で駆けつける!


 では次は現実的な条件だ。

 お賃金(ちんぎん)の話である!

ご意見ご感想お待ちしております! お気軽にどうぞ!

「いいね」も励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 御庭さんは微妙に信用出来ない感じだけど、お賃金がいっぱい貰えるならどんな上司でも関係ないねw
[一言] 浸食しようとするダンジョンと、それを阻止しようとする力 どちらも人間に優しくないね(涙) 頑張ってくれー! 忍者!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ