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忍者になれると思っていた時期が僕にもありました……!?

没タイトルシリーズ

■異能者が悪性ダンジョンに入った結果!?

 悪性(あくせい)ダンジョンは周囲にダンジョン領域(りょういき)を広げる。

 この領域内にはモンスターがあふれ出し、人間を(おそ)う。


 人間はこの領域との境界(きょうかい)線を出入りできる。

 しかし、この境界線は一般人には見えない。


 そして、悪性ダンジョンとは別に世界による隠蔽(いんぺい)の力が働く。

 隠蔽には二種類の力がある。認識阻害(ブロック)切り離し(パージ)


 記憶や認識を書き換える認識阻害の力。

 異物を消し去る切り離し、追放の力。


 ダンジョンは世界にとって異物だ。

 悪性ダンジョンは大きな異物だから、認識阻害も強く働く。

 さらに、対処できない悪性ダンジョンは切り離される。周囲ごと消される。


 異能者やダンジョン保持者は認識阻害を受けない。


 異能者は一般人と同様にダンジョンの中に入れない。

 だけど悪性ダンジョンは別だ。

 異能者も中に入ることができると御庭は前に言った。



 悪性ダンジョンの対処をするとき、基本的に異能者はダンジョンの中に入らない。

 不利(アウェイ)でも入る場合があるらしいけど……。


 俺はそれを御庭に聞いてみる。


「御庭さんは悪性ダンジョンなら入れるんですよね?」

「入れるよ。でも基本的には入らずに外側……ダンジョン領域で戦う。ダンジョン領域の中心に悪性ダンジョンの()()ともいうべき入り口がある。これは普通のダンジョンと同じ転送門だね」


「転送門を通って、中に入ることもあるんですよね?」

「被害が大きくなりそうならね。あんまり入らないけどね」


「被害が大きくなりそうな場合って、どんなときですか?」

「人が多いとかね。といっても、人が少ないところにダンジョンは湧きにくい。なんでだと思う?」


 これは簡単な理由だな。


「ダンジョンには持ち主がいるからですね」

「そうそう。ダンジョンは基本的に人の家にできる。だから、たいていは住宅地に発生する」


 御庭はキッチンの冷蔵庫を見る。

 俺は頷く。


 トウコの家も俺やリンのアパートもそう。

 周囲は住宅地だ。


「住宅地なら人は多いですね」

「うん。時間帯や場所によっては急いで元を断つ必要がある」


 都会ほど人口密度も高いから危険ということだ。


「そういう場合は中に入ると」

「うん。勝てそうならね。規模が大きいとか、強力なダンジョンだった場合は無理はしない。僕ら異能者の力はダンジョン領域では弱まる。ダンジョン内だともっと弱まる。さらに銃や電気製品が使えなくなる」


 公儀隠密は銃を使うんだな。

 大河さんが撃たれて、この部屋の食器棚が壊された。

 日本で銃をぶっ放すとか、なかなかヤバいな。


 あのとき銃声は聞こえなかったから、なにかバレない方法があるんだろう。


 俺のダンジョンでも電子機器は使えない。

 このあたりのルールも同じってことだ。


「俺のスキルが外で弱まるのと同じですね。ダンジョン領域は中間ってことなんですかね?」

「お、いいところに気が付いたね! この世界とダンジョンの間。浸食されて混じりあった場所だね!」


 汽水域(きすいいき)みたいなものかな。

 河口付近とかで、淡水と海水が混ざる場所。

 海の生物と川の生物は生きる場所が違うみたいな?


 似てるようで似てないかもしれないな。


「中間ということなら、スキルの力は強まるんですね?」

「そうだね。現実世界よりもダンジョン領域のほうがダンジョン由来の能力は強くなる。悪性ダンジョンの中は普通のダンジョンと同じように力が使える」


「つまり、俺なら……ダンジョン保持者なら悪性ダンジョンを潰すのに向いているってことになりますね」


 御庭は大きく頷く。


「だからダンジョン保持者は貴重なんだよ。クロウ君が仲間になってくれてよかった!」

「公儀隠密にはダンジョン保持者は少ないんですか?」

「ダンジョン保持者もいる。だけど異能者のほうが多いね。いつでも仲間は募集中だよ!」


 御庭はウェルカム! という感じで両手を広げてクイクイしている。


「リンやトウコも公儀隠密に誘いたいって意味ですか? 忍者じゃないけど」

「もちろん大歓迎だ! 忍者じゃなくても、忍者になれるよ!」

「なりたいかな忍者……?」


 俺は(いぶか)しんだ。


 みんなが忍者になりたいわけじゃないぞ!

 あこがれの職業ランキングで忍者は上位にいない。


 小学生の男子ならスポーツ系。女子なら医療系が人気らしい。

 中学生だとどちらも会社員になる。現実が見えちゃうんだなあ。


 つまり御庭は小学生以下の夢追い人ってことだ!

 たぶん御庭は俺より年上だぞ!


「といっても、クロウ君が嫌がるなら無理に誘ったりしない。欲張るとロクなことはないからね。ちょっと考えてみてほしい。本人とも相談して、返事してくれるかな?」


 これは……どうしたものかな。


 俺は悪性ダンジョンと戦うことになる。


 トウコは危険なダンジョンを持っている。

 変異しかけていることもあって、公儀隠密と大河さんたちに見守られる(監視される)立場だ。

 すでに関わっている。


 リンのダンジョンは安全そうに見える。

 戦うことが好きではない性格だ。


 でも俺やトウコが危険なダンジョンに挑むなら、一緒に戦うと言うだろう。

 誘わないと逆に悲しむかもしれない。


「二人とも相談してみますね。それも条件次第ではあります。条件の話を聞いてからになりますね」

「それもそうだね。じゃあそろそろ条件の話をしようか」


 俺は公儀隠密に入ると言ったが、条件はこれからだ。

 危険が大きいことはわかった。

 人を助ける、価値のある仕事だともわかった。


 やっぱ辞めた! なんて言うつもりはない。


 でも仕事だ。

 公儀隠密は公務員じゃないし、非公式の組織だ。

 雇用契約を結ぶわけじゃないだろう。書類なんてない。

 口約束であっても、きちんとしなくちゃ安心できない。


 ブラック忍者になる気はない。

 現代忍者はホワイトな働き方を求める!


「条件の話、したいですね。でもその前にひとつ疑問があります」

「なにかな?」


「誰でも忍者になれるって話です。悪性ダンジョンに入れるなら、そこで職業を取ればいいんじゃないですか?」


 俺は疑問をぶつけてみる。


 俺はダンジョンの職業で忍者になった。


 悪性とはいえ、ダンジョンだ。

 入れるなら職業が得られるはずだ。


 御庭は肩を落としている。


「……うん。そう思うよね。そんなふうに考えていた時期が僕にもあったさ。でも残念ながらダメなんだ。資格がない。波長が合わない。僕は職業をもらえなかった……」

「試したんですね」

「もちろん、試したさ。ウキウキでステータスオープンと唱えたさ……!」


 御庭が悔しげな表情を浮かべる。

 うわあ……。かわいそう……。


 また御庭がしょんぼりしているが、俺は気づかないフリをして続ける。

 触れないであげるやさしさだ。忍者の情けだ。


「――つまり、異能者も一般人も、ダンジョンの力は得られないということですか?」

「そうだよ。僕が調べたり試した限りではね」


 一般人はダンジョンに入れない。知ることもない。

 さらにダンジョンの中に引き込まれても力は与えられない。


 ダンジョンに入るだけで、レベルやステータスが与えられるわけじゃないんだ。

 意外な事実……。


 いよいよ悪性ダンジョンやその前段階ってヤバイな。

 一般人は生き残れないんじゃないか……。


「波長の合う異能者とか、その場でダンジョンを持つことはないんですかね?」

「あるかもしれないけど……僕はそうじゃないな」


 あ、いじけてる。

 ないとは限らないけど御庭は知らないのかもね。


 どうやっても忍者の力を得られない御庭。

 悲しみを背負ってるな!

ゲームの職業ランキングだと魔法使いが一位らしい。

忍者は十位。健闘している!

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