第三階層の偵察結果を報告します! 見えてきた課題!
なんだか報告書を書いている感じになってしまった。
偵察結果のまとめだから、どうしても表現がかたくなってしまう。
隠れて調べるのが偵察で、戦闘や攻撃もしかけるのが威力偵察だ。
今回は戦闘もしたので威力偵察をしたことになる。
結果、いろいろとわかった。
まず地形。
これまでの階層との違いが大きい。
三階層はドーム状の広い空間になっている。
全体を把握できたわけではないが、
外周部分については、様子がわかった。
壁沿いに進んだ範囲では、広い空間が続いている。
他の空間へつながりそうな通路は見当たらなかった。
床は平らで、歩いたり走ったりに支障はない。
大小の岩が積み重なっていたりする。
落盤があったのだろうか。
充分な高さがあるので、身を隠すことはできそうだ。
鍾乳石もみられる。
天井にはつらら石、床からはタケノコ状の石筍がある。
そういう場所は水が滴っていて、すべりそうだ。
飲む勇気はないが、一応水もある。
天井から滴った水がたまっている箇所や、川のように小さな流れになっている。
ごく浅い流れなので、潜ったりすることはできないだろう。
明るさは二階と変わらない。天井は光源が少ない。
壁や床には発光植物やキノコがあり、ぼんやりと明るい。
【暗視】をオンにしているので、暗いことは問題ない。
ただ、白黒の視界になるために目が疲れてくる。
普段と違う見え方をするので、戸惑う部分もあるのだ。
天井は高い。
【壁走りの術】で登ることもできそうだが、10歩ほどの範囲では天井にたどり着けないだろう。
天井には鍾乳石やでこぼこがある。
カーテン状に成長した鍾乳石などもあって、見通しは悪い。
ぶら下がっているはずのコウモリを見つけにくい。
理由は天井の高さ、白黒視界、鍾乳石が視界を遮ったり、紛れるためだ。
二階層では簡単にコウモリを見つけることができた。
飛び立つ前に攻撃すれば数を減らして戦うことができる。
ここでは天井の高さもあって、不意打ちが難しい。
広い空間のせいか、最初から飛んでいるコウモリもいる。
ここがコウモリのホームグラウンドなのかもしれない。
ゴブリンもコウモリも、多少は強くなっている。
だが戦って勝てない相手ではない。
ないんだけど……。
地形のせいで、戦いにくいんだよな。
通路と部屋で区切られていた二階層との違いが大きい。
このせいで、隠れて敵を各個撃破していく方法がとれない。
広い空間だから、戦っている間に別の敵に発見されてしまう。
先ほどコウモリに奇襲されたのも、ゴブリンと戦っていたときだ。
全方位を同時に警戒することは難しい。
【危険察知】がなければやられていた。
やはり身を守るスキルは取っておくに限る!
「結局、ネックになるのはコウモリの探知能力だよなあ……」
俺の【隠密】系能力や【分身の術】などの隠れるスキルが通用しない。
発見されずにこの階層を突破することはできない。
対策を考えなければ!
中央部分については調査できていない。
遠目に動いている何かが見えたが、明確にはならなかった。
サイズ的にはゴブリンだと思うが……保留にしておく。
二階層からの階段は壁面にあったので、下層へ向かう階段も壁面にあるはずだ。
そうであれば、無理に中央部分を調査する必要はないだろう。
階段が壁面にある保障はない。
床に穴が開いていて、そこが階段になっていることもありうる。
これまでの階段は壁面にあったので、同じだと思いたい。
そうじゃないと発見しにくい。
床にはおうとつがあるため、見通しが悪い。
広いフロアを歩き回って探すのは面倒だ。
偵察はこれで十分だ。
二階層に戻ろう。
手裏剣の残弾も乏しくなってきたし……。
いつもなら回収してリサイクルするのだが。
ここでは難しい。
広いフロアのどこかに、手裏剣は飛んでいってしまう。
無理して拾うのはあきらめた。
見つけたものだけ回収したから、良しとしよう。
数十円の釘だし、気にしない。
でも気になってしまう。
貧乏性である。
でも魔石は回収したい!
これは結構、頑張って探した。
それでも三階層で拾えた魔石は10個ほど。
倒した数と魔石の数は合わない。
コウモリの魔石のいくつかは、倒してすぐ拾う余裕がなかったから見失ってしまった……。
なんか、腹立つな!
テレビゲームじゃないので、自動的にアイテムが回収されたりはしない。
しかたないことだけど……。
敵は多少強化されたけど、魔石の見た目は変わらない。
ゴブリンのは赤黒く、コウモリのは黒っぽいのも同じだ。
魔石を稼ぐという意味では二階層でコウモリ漁をしたほうが早い。
ひたすら二階層を周回するという手もあるが……。
無事に二階層まで戻る。
モノリスに魔石を投入しておく。
残ポイント
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ゴブリンの魔石:4(増加)
コウモリの魔石:51(増加)
汎用ポイント:0(減少)
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とりあえず引き換えはしない。
貯金しておこう。
二個目の治癒薬を確保したいからな。
一階の出入口部屋に戻ってきた。
この部屋のことは拠点と呼ぶことにする。
「ふう。拠点に戻ると落ち着くな」
腰袋に棒手裏剣を補充する。
五寸釘を減らして、三寸釘を多めにしておく。
在庫はあるけど、あとでネット注文しておこう。
なにしろ安いからな。ケチってもしかたがない。
腰袋とナタを外して、収納箱へしまう。
アパートの部屋に置いておくと、狭い部屋のスペースをとって邪魔くさいのだ。
バットは部屋に持ちかえる。
ダンジョンへ入るとき、拠点部屋にゴブリンが湧いている可能性もあるからだ。
ゴブリンくらい素手でも倒せるだろうけど念のため。
「こいつも、傷んできたな……」
ゲームで武器が壊れたり使用回数がある設定は邪魔なものだ。
その要素いる? って思うんだけどね。
だけど、武器を使っていけば壊れてしまうのは仕方がないことだ。
もう相棒のようになっているこのバット。
安物の金属バットとはいえ、愛着がわいてしまった。
なんとか補修して使っていきたい。
有刺鉄線でも巻きつけて名前でも付けようか。
革ジャンも着て。
有名な悪党バットキャラみたいにね。
名前なんてつけないけどね。
いや、名前つけるとか……ないない。
バットしか友達いないみたいになっちゃう。
バットを振り回しているせいで、手のひらにはマメができている。
筋肉痛もひどい。
かすり傷といえど、ケガも増えている。
ここらで治癒薬を使ってしまいたい……!
しかし、ダンジョンの外に出られなくなるのはいやだ。
まだ、使う勇気はない。
今日はやめておく。
安全第一である。
報告書を提出された優しい上司の気分で、ブクマ・評価をお願いします。
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