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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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威力偵察! 【スキル検証】【危険察知】【消音】

 はじめてコウモリと戦ったあと、その生態を調べた。


 コウモリの飛行能力は高い。

 鳥類と比べても劣らない飛行能力を持っている。


 哺乳類(ほにゅうるい)では唯一の飛行能力持ちだ。

 ムササビなどは滑空(かっくう)するだけで、飛行とは言えない。


 ちなみに日本に生息するコウモリは血を吸わないらしい。

 だが、ここはダンジョン。

 この大コウモリが同じとは限らない。


 どんな能力をもっているか、わかったものではない。


 コウモリのサイズは二階層よりも少し大きい。四十センチ程度か。

 だが、大きくなっても動きが鈍くなってはいない。


 サイズが増したことで牙や爪も相応に大きくなっている。

 直撃すれば、大ケガだ。


 だが、俺は忍者。回避に優れている。

 直撃なんてしない!



 腰袋から三寸釘を数本つかみ出す。

 手のひらと親指で(はさ)むようにして、振り下ろすように放つ。


 素早く動くコウモリを狙うのは難しいが――

 先を予測して、おおよその狙いで投げ放つ。


 命中!


 片翼を傷つけたコウモリがきりもみ回転しながら地面へ激突。塵と化す。


「キィ!」


 ――同時に別のコウモリが突っ込んでくる。


 迎え撃つ余裕はない!


 【回避】スキルが安全な位置を示してくれる。

 俺は大きく跳びのく。


 先ほどまで俺が立っていた位置をコウモリが勢いよく通りすぎる。


 コウモリは地面にぶつかることなく、再び上昇していく。

 素早い動きで、ひとところに留まらない。

 やっかいな敵だ!



 俺は壁を背にして、コウモリが襲ってくる方向を前方に限定する。


 それでも、左右……上下方向も含めて同時に見ることはできない。


「目で見るだけではだめだ! 感覚をとぎすませ!」


 コウモリが羽ばたく音に耳をすませる。


 羽が打つ空気の振動を肌で感じろ。

 獣のようなにおいを()ぎ分けるんだ。


 五感を総動員しろ!


 足りない部分は【危険察知】さんに頑張ってもらう!

 たのむぜ!


 【受け身】君もたのむよ! 期待してるよ!

 いままで無能スキルと思っていてすまないね!


 手のひらクルッ!


 俺は成果主義なのだ。

 使えるとわかったなら、頼っていく。


 それに、わざわざスキルとして存在しているんだ。

 ハズレスキルとか、無能スキルなんてないはずだ。

 もしそうでも、役に立たせてやる!


 使い方と状況次第。生かすも殺すも使い手次第だ!



「キィ!」

「キキッ!」


 群れたコウモリは厄介だ。

 一匹ずつかかってきてくれるわけじゃない。

 敵だからな。親切さはない。


 ――連続して上下左右から飛びかかってくる。


 極限の集中力のなか、わずかな安全圏に身をかわす。

 かわした先に、後続のコウモリが襲いかかる。


「くっ! きりがない!」


 攻撃をかわす。

 わずかに稼いだ時間で手裏剣を投擲する。

 狙いをつける暇はない。棒手裏剣を数本まとめて放つ。


 数うちゃ当たる!

 そして一本でも当たれば、撃ち落とすことができる。


 俺の投げた棒手裏剣が次々とコウモリたちを撃ち落としていく!



 コウモリは飛行に特化しているために歩行は不得意だ。

 ()い回ることしかできない。

 とどめを刺すのは後でいい。


 問題は手裏剣の残弾数だ。


 ダンジョンに潜るたび、釘は補充している。

 五寸釘を二十本、少し短い三寸釘を三十本だ。


 出入口(拠点)部屋まで戻れば在庫はある。

 だが、今は手持ちが心もとない。

 三寸釘はもう十本を切っている。



 コウモリの攻撃は激しい。

 俺はその攻撃をかわす。


「よっと!」


 いまのところ、なんとかよけ続けている。

 【回避】と【危険察知】のおかげだ!


 【危険察知】は俺自身が知覚している攻撃に対しては反応しない。


 俺が見落としている危険を、虫の知らせのように知らせてくれる。

 背後や死角からの攻撃を受ける直前、何かヤバいと直感的にわかる。


 これは、本当にギリギリだ。

 もっと早く知らせてくれればいいとは思うが……。

 このあたりはスキルのレベルが足りていないのだろう。



「ッお! りゃあっ!」


 左手に持ち替えたバットで、向かってきたコウモリを叩き落とす。

 右手には手裏剣を構える。


 まとめて何本か投擲することで、精度は落ちるが当てることができる。

 【投擲】スキルの補助と、高い敏捷のなせる技だ。


 素早く飛行するコウモリでも急に方向は変えられない。

 こちらへ攻撃を加える瞬間ならなおさらだ。

 俺へ向かってくるのだから、自然と進路(コース)は限定される。



 最後のコウモリを、バットで打ち払う。


「ギィ!」


 なんとか、コウモリを撃退することができた。

 ステータスの体力のおかげで疲れにくい俺でも、息が上がっている。


「よっしゃ! 全部倒したな。はあはあ……ちょっと疲れた」


 休憩がてら、少し考えてみる。


 コウモリは強い。

 それは、俺との相性だ。


 隠密系の能力が効きにくい。

 【隠術】はおそらく、視覚に対して効果を発揮する。

 しかし、コウモリは目で俺を捉えているのではない。


 エコーロケーション(反響定位)は超音波の反射だ。


 音の反射で地形や獲物の位置を知る。

 潜水艦(せんすいかん)のソナーのようなものだな。


 【消音】も発動させているが、これで隠れることもできない。


 【消音】は自身の発する音を低減する、という効果だ。

 俺が発する、衣擦(きぬず)れや足音が小さくなる。


 呼吸音や心音すらも低減しているだろう。

 もし俺がしゃべれば、その音も小さくなる。


 意図して切ることができるから、しゃべりたいけど音が出なくなる心配はない。


 だから、俺は音もあまり立てていないはずなんだ。

 つまりコウモリは聴覚で俺を察知しているのではない。


 【消音】でもコウモリは(あざむ)けない。



 超音波も音――であれば【消音】は一定の効果がある気もする。

 人間には聞き取れない音だとしても、音なのだ。


 しかし【消音】は相手の出した音をかき消してはくれない。

 相手や周囲の環境音を打ち消すことはできないんだ。


 あくまでもこのスキルの効果は、自分で出した音を消すこと。

 コウモリが出した超音波も消せないだろう。



 だが、反射音はどうか?

 俺の体にぶつけられて出る反射する音だ。

 ならば俺が出した音、と解釈することもできる。


 この音は【消音】で低減させている?

 可能性はあるな。

 完全無効化するわけではないから、コウモリは俺を襲ってくるわけだが。


 この低減のおかげで、コウモリから見ると俺はぼやけて見えているのかもしない。

 おかげで、直撃を食らわずに回避しきれるのかもしれないな。


 地味に働いてくれている【消音】さん。

 ありがたいね!



「ふう。周囲に異常はないな」


 俺は壁際に後退して、壁を背に寄りかかるように休んでいる。

 座り込むととっさに動けないから念のため立ったままだ。



 もっと考えてみる。

 【消音】がどこまでの音を消してくれるかはわからない。


 人間に聞こえる音――可聴域(かちょういき)にしか効果がないのか。

 低周波や高周波など、範囲外の音に対しても効果があるのか。


 このあたりの検証は、測定器具などを持たない俺にはむずかしい。

 効果があると信じたい。

 ゴブリンやコウモリの耳の構造なんて分かりっこないからな。


 ゲームや漫画によくある【鑑定】なら教えてくれるだろうか。

 そんなに細かい情報まで、鑑定できないような気はするけど。


 俺の選択可能なスキルに【鑑定】は現れない。

 ぜひ欲しいのに。必要性も充分なはずだ。


 検証作業という行動も充分にとっているのに、なぜ取れないんだ!

 喉から手が出るほど欲しい……!


 エコーロケーション(反響定位)は【分身の術】でもあざむけない。

 実体のない分身では、超音波も突き抜け、反射しないからだ。


 つまり俺が必死に【分身の術】を出しても、相手は何も知覚していないことになる。

 効果がないどころか、気づいてすらくれない。

 強い、強すぎるぞエコーロケーション(反響定位)


 コウモリさん、絶対忍者殺すマンなの!?

 なんだ、俺の天敵か!

コウモリ研究家に一歩近づいた。

なお、日本ではコウモリは鳥獣保護法で保護されています。

捕獲、処分してはいけません。ご注意を。


(意味はないけど)タメになったねぇ……という方! ブクマ・評価お願いします!

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― 新着の感想 ―
こうもりさんエコーロケーションがある為にクラッカーみたいなのには弱いのかな?
[一言] 野生動物は手を出すと、破傷風とか、狂犬病とか、うつる可能性があるのでさわらずに置きましょう(//∇//) 野良猫や、野良犬も野生動物
[一言] >>タメになったねぇ…… もう中?
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