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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
三章 冷蔵庫は無理ゲーで!

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ボス部屋のブリーフィングと威力偵察!

 自律分身がトウコに言う。


「トウコ。偵察に行く前に知っていることを教えてくれ。ボス部屋の状況説明(ブリーフィング)だ。ボスと戦ったことがあるのはお前だけだからな」


 トウコが一階のエントランスホールのドアを指し示す。


 騎士鎧(きしよろい)がいる暖炉(だんろ)部屋とは逆側だ。

 両開きの重厚(じゅうこう)なドアで、閉ざされている。


「ドアを入ると食堂があって、その先が厨房っス!」

「ああ」

「で、ドアにはカギがかかってるっス!」

「カギだと……!? 今から探すのは――」


 そんなことをしている暇はないぞ。

 五ウェーブがはじまってしまう。


「あ、カギはなくても大丈夫っス! いつもはショットガンでぶち抜いてたっス!」

「ワイルドだな!?」


 カギとか謎解きとか無視しちゃう系なの!?


 カギがかかっているとはいえ、木のドアだ。

 ……破壊可能なのか。

 まあ、ゲームじゃないし、アリなのか!?


 自律分身が先をうながす。


「で、食堂はどうなってる?」

「大きなテーブルにロウソク立てとか食器が乗ってるっス。貴族のおしゃれテーブルな感じっスね」


 食器があるならナイフやフォークなどがありそうだな。

 投擲具(投げモノ)として使えるかもしれない。


 燭台(ロウソク立て)はいくつあってもいいね。


 トウコが続ける。


「で、食堂に入るとボスが入ってくるっス。ボマーよりもっと大きなゾンビで、エプロンしてるっス」

「エプロン……? なんだそれは」

肉屋さん(ブッチャー)とか料理人さん(コック)っスかねえ」

「職業を持ったゾンビかもな」


 俺のダンジョンではゴブリンが(ジョブ)を持っていた。

 例えば斥候や呪術師のゴブリンだ。

 システム的な職業を持っていて、それに応じた動きをしてくる。

 呪術師なら魔法を使うといった具合だ。


「肉屋とか料理人だと、どういう動きになるんだろうな」

「でっかい包丁で襲ってくるっス! あとはスゴイ頑丈っスね!」


 トウコはげーっという表情をしている。

 苦い思い出があるんだろう。


 ……俺もデカいゾンビなんて会いたくない。

 そうも言っていられないが。


「しかし、ざっくりした情報だなあ」と自律分身。

「じゃ、動きは自律分身がチェックしてくれ!」と俺。


 げんなりした様子で自律分身が俺を見る。


「他人事みたいに言いよる……。ま、あとでお前も味わうことになるがな!」


 単独でボスと戦えばまず死ぬはずだ。

 自律分身が体験した出来事は、俺にフィードバックされる。

 だから他人事ではない。

 自分を使った決死の情報収集だ。軽い気持ちではない。


 いつもなら自律分身にこんなことはさせない。

 俺は自分に優しくしたい。

 死ぬようなことはさせたくない。


 でも今は別だ。

 俺自身が死ぬ覚悟で挑んでいる。

 実際に死にもするし、生き返りもする。


 それなら、無茶な偵察だってさせられる。

 させなくてはならない。


「じゃ、行ってくるが……。まずはこのドアをこじ開けないとな」


 自律分身が食堂のドアを示す。


「今ショットガンはないっスよ。店長の力でド派手にドアぶち破っちゃってほしいっス!」


 トウコはレベルが足りないためにショットガンは創れない。

 なぜか期待に満ちた顔で笑いかけてくる。


「ド派手にやってどうする! 地味に堅実にこじ開けるわ!」


 俺は忍者であって、アクションスターではないのだ。

 ドアはこっそり開けるべきものである!


 鍵開けするスキルや知識は俺にはないので、工具が頼りだ。


 俺と自律分身は二人がかりで鉈や火かき棒をバールのように使ってドアをこじ開けた。

 さすが工具!


 ――小さな音をたてながらも、ドアは開いた。



「じゃ、行ってくる。お前らは見つからないように隠れててくれ」


 自律分身が燭台を手に食堂へ入っていく。

 さすがに、その表情は硬い。緊張しているようだ。


 食堂のドアの外から俺たちはそれを見ている。


 食卓の上に置かれた燭台に火をつけ、視界を確保していく。

 部屋には窓もあって、明るさは充分だ。


 テーブルの上には片付けられていない食器が乱雑に置かれている。

 食器には、黒っぽいものが乗っている。

 カビか腐敗物のようなものだろうか。


 自律分身がナイフをテーブルから数本拾い上げ、厨房へ続くドアを覗く。

 そして厨房へと入っていく。


 俺たちからは姿が見えなくなる。



 厨房から、この世のものとは思えない怒号(どごう)が聞こえてくる。


「――グォォォォァ!」


「ッ! 奴に気付かれた見たいっスね!」

「すげえ声だな……」


 俺たちからは自律分身の姿は見えない。

 激しい戦闘の音だけが聞こえてくる。


 その音を聞いて、トウコが飛び出そうとするのを手で制する。


「やっぱりあたし達も一緒に行ったほうがいいんじゃないっスか!?」

「いや! 自律分身がやられるとフィードバックがある。俺が動けなくなって死ぬ!」

「うー。そうかあ! ……でも、待つのはキツいっスね……」


 自律分身が死ねば俺にフィードバックが来る。

 戦闘中のフィードバックは致命的な隙になる。


 前回は、フィードバックの受け取りを遅らせることができた。


 これは慣れや成長なのかもしれない。

 スキルは思ったよりも融通(ゆうずう)が利く。

 ある程度は俺の意思や要望に応えてくれる。


 最初はもっとゲーム的なものだと思っていた。

 だけど、もっとあいまい(ファジー)だ。そして柔軟(フレキシブル)だ。


 これに気付けたのはリン(オトナシさん)のおかげだ。

 想像力でスキルの限界を越える。

 彼女はナチュラルな思い込みで、できてしまう。


 ゲーム脳な俺とは違う。

 俺は自分に言い聞かせてやっとできる。

 できるはずだ。やれるはずだと。


 フィードバックも柔軟に受け取れればいいんだがな……。

 一度できたなら、今度もできるはずだ。

 だが、危険は冒せない。ボス戦で試すことではない。


 そんなことを考えながら、自律分身を待つ。



「――うぐあっ! か、解除しろーッ!」


 自律分身の叫び声が届く。

 苦し気なその声は、致命的なダメージを負ったように聞こえる。


 俺は【自律分身の術】を解除する。

 ――と同時、俺にフィードバックが走る。


「ぐっ! やられたぞ……準備しておけ!」

「て、店長!?」


 俺は自律分身の記憶を読み取っていく――

自律分身は身をなげうって情報を持ち帰る忍者の鑑!

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