対策して挑む四ウェーブも……順調!?
「トウコ。ケガが大丈夫なら、魔力についてはどうだ?」
「あたしは大丈夫っス」
「俺はもともと術が使えないから魔力は関係ないな」と自律分身。
トウコは最初に銃を出して、そのあとはあまり魔力を使わないスタイルだ。
自律分身はスキルが使えないから、魔力の消費はない。
「あ、今のうちに予備の銃を出しておくっス」
手の中に二丁のオートマチック拳銃を創り出す。
それを両腰のホルスターに収める。
「コイツを撃ち切ったら、オートマチックに切り替えるっス」
トウコはリボルバー拳銃を指でくるくる回しながら自慢げに言う。
それを自律分身が感心しながら見ている。
「さまになってるな! 三銃流って感じか」と自律分身。
俺は【入れ替えの術】をボマー対策で使ったために魔力は減っている。
「となると俺が魔力回復丸を使うぞ」
「おう!」
「どーぞっス」
ハーブから魔力回復丸を作り、飲み込む。
材料がマズいハーブなので、味はひどいものだ。
味わうことなく飲みこむ。
「まずっ!」
これで、魔力はじわじわ補給される。
四ウェーブを越えたらボスに挑むんだ。
魔力を無駄遣いせず、ケガもせずに四ウェーブを乗り切る。
三ウェーブで使っていた判断分身は時間切れで消えてしまった。
もう一つ出すのは魔力が惜しいいのでケチろう。
「みんな、ドロップアイテムを集めておいてくれ。俺はクラフトする」
「りょー」
「わかった」
クラフトするのは……。
――トウコ用の弾丸ポーチ。
――自律分身用のクギポーチ。
ボマーが破壊した階段の手すりを原料に、バットやトンファーも作れるが……。
「おーい自律! 武器が必要なら作るが、いるか?」
「んー。シャベルと火かき棒で充分だな。もう持ち切れない」
「そうか。じゃ、ランタンをもう一つ作るか」
燭台とガラス片を原料に、ランタンを作成する。
これは自律分身に持たせる。
全員分のランタンが作成できた。
ランタンは吊り下げることができて、手が空く。
風や血しぶきで火が消えない。
各自が装備できたので安心だ。
残った燭台一つは踊り場へ配置。
余ったロウソクは、邪魔にならないよう床にロウで固定して置く。
踏まれたらおしまいだが、倒れたりはしないはずだ。
これで明かり対策は万全だな。
ぐっと部屋が明るくなった。
少し心にも余裕ができる。
四ウェーブも引き続きこのエントランスホールで戦おう。
もう対策パターンはできた。
ランナーやタフ、ボマーが増えるだけ。
敵の分量さえしのげれば、乗りこえられる。
今回は武器も充実している。
火炎瓶も温存している。
連携もばっちりだ。
いけるぞ!
四ウェーブがはじまった。
――そして俺たちは、無事に四ウェーブを乗り切った。
「……どうだ? ケガはないか、みんな」
「はあ……はあ……。大丈夫っス……なんとか乗り切ったっスね!」
「俺も問題ないぞ」と自律分身。
俺と自律分身は体力のステータスのおかげで疲れにくい。まだ余裕がある。
トウコはなかなか辛そうだ。
四ウェーブは三ウェーブまでとやることは変わりなかった。
量と質が上がるだけ。
慣れてくれば対応できる。
これまでに何度も死んで積み重ねた経験。
不運を発生させないようにミスを防いだ結果だ。
俺たちがシステム的に強くなったわけではない。
レベルはスタート時点より下がっているなかでの戦いだった。
それでも、知識と経験の積み重ねが俺たちを強くする。
お互いの動きのクセ、足りないところを補い合える。
「どうだトウコ? レベルは上がったか?」
「ふぅ……四に上がったっス、よ!」
トウコは息を整えるのに精いっぱいという様子だ。
疲労がたまっている。
「んん? 前回はこの時点で五だったよな? なんでだ?」
レベル上げを優先したわりに、あがりが悪い。
トウコがかぶりを振る。
「……さあ、わかんないっスね」
自律分身が思案顔で言う。
「スタート時点で下振れしたのか? 同じレベル二でも一に近い感じだったとか」
「そうかもしれないっスねえ……」
「このあとボスにいけそうか?」
俺はトウコへ訪ねる。
レベル的にはギリギリといったところだ。
装備、弾は充実している。
魔力は戦える程度にはあるが満タンとは言えない。
回復手段はもうない。時間回復は望めない。
俺のレベルは13に上がって、元の状態に戻っている。
必要ならポイントを振ることも考えるが、ボスの様子を見てからがいいだろう。
臨機応変に決めたい。
スキルは一度取ったら変えられないからだ。
デスペナルティでレベルが下がればそのレベルで取得したスキルは使えなくなる。
だが、再度選びなおせるわけじゃない。
使えなくなって、次にレベルが戻れば同じスキルが使えるようになるだけ。
慎重に選ぶ必要がある。
死にスキルを取って詰むのはごめんだ。
「……イケるっス! というか、やるしかないっス! でも、レベルは上がりにくくなってる感じがするっスね……」
「経験値が得られにくくなってきたということか?」
「いや……わかんないっスけど……ジリ貧みたいな感じがするんスよね」
トウコの表情ははっきりしない。
自分でもわかっていない体感があるんだろうか。
俺も行き詰まり感は感じている。
守りに入っていてはテンションが持たないというか……。
「やるしかない、か。そうだな。やってやるか!」
「やるっス!」
「おう!」と自律分身。
俺は自律分身を見る。
「じゃあ、いい返事をもらったところでお前の出番だな!」
「ああ、まかせろ! 威力偵察だな! 死ぬ気で情報取って来るぜ!」