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書斎と暖炉のある、温かみのある洋館です!

 トウコたちを待つ間に、必要な品を【忍具作成】(クラフト)した。


 照明器具としてランタン。

 回復アイテムとして魔力回復丸。

 俺のクギ用ホルスター、トウコ用のウェスタン(西部劇風)ガンベルト。


 準備は万端だ。

 装備が整うと、安心感があるな!


 まだトウコたちは戻ってこないか……。


 【瞑想】して待つか?

 ちょっとでも魔力を回復しておけば足しにはなる。


 自分のダンジョンでは長い時間、安全な階段で休み放題だった。

 思ったよりも恵まれた環境だったな。


 この洋館では、そういう安全地帯がない。

 長時間休んだり、自由に出入りできるクローゼットダンジョンはその点、有利なんだ。

 アイテムも持ち込み放題。時間もかけ放題。

 時間がかけられるから魔力も使っていける。

 今は物資も時間も魔力もカツカツだ。


 もっとうまく動ければいいんだけどな。

 このダンジョンでは死んでやり直せるのはメリットだ。

 死なずに済むのが一番だけどね!


 だんだん、慣れてきた。

 少しずつうまくこなせるようになってきている。

 希望はある。なんとかなるさ!



「やはり、鎧が気になるな……」


 今回はボス攻略する予定だから、余力を残さないとな。

 武器がある今回なら勝てる気がするが……。

 でも、戦うのはやめておこう。


 よし、戦わずに物資だけいただこう!


「分身の術!」


 さっそく分身の術を出して、鎧のいる通路に向かわせる。

 鎧が気付いて、分身に向かって歩き出す。


 俺はドアから様子をうかがいながら分身を操作する。

 鎧が攻撃態勢に入らない距離を保ちながら誘導していく。


 暖炉部屋の反対側。通路の右側へと誘導する。

 鎧がドアの前を通過するとき、俺は見つからないように隠れる。



 通路を左にいけば、暖炉部屋に続く部屋への入り口がある。

 右に行くと何があるのかはトウコに聞いていないし、今は行く予定もない。

 今回は、その通路の行き止まりまで鎧を誘導できればいい。


 その間に俺は暖炉部屋を(あさ)れるってわけだ。

 無血開城(むけつかいじょう)だな。戦わずして勝つ。


 まあ、前回は無駄な争いをしてしまった結果がアレだ。

 反省しよう。


「よし、いいぞ」


 鎧を上手く釣りだして、分身をさらに右の通路へ向かわせる。

 エントランスホールに釣りだすと、三ウェーブの邪魔だからな。


 おそらくこの鎧は初期配置された位置から動かずに待っていて、近寄ると動き出す。

 動いた後はずっとうろつくのかもしれない。


 通路の端などに誘導しておけばエントランスホールには来ないと予想する。

 来たときは来たときだ。

 しょうがないから戦おう。

 うん、戦いたいからじゃない。しょうがないからね。


 分身が通路の行き止まりへと鎧を釣りだしていく。

 左手にドアはあるが、開けて余計な問題が起きるといけないので、開けない。

 ここで分身は逃げ場を失う。操作をやめて放置する。任務完了だ。

 このまま分身は倒されるが、問題ない。

 相変わらず、おとりとして有能な分身さん! 助かるぜ!


 俺はその間に鎧が守るように立っていた部屋へ【隠密】【消音】状態のままこっそりと入る。



「ほう、ここは書斎(しょさい)、かな」


 木製の立派な机。ペンとインク壺。枯れた観葉植物。

 本棚には本が並んでいるが……読めない。

 謎の言語で書かれている。


 この部屋に敵はいない。

 ドアは入ってきたもののほかにひとつ。

 右手側にドアがある。


 手早く机の引き出しなどを探ってみる。

 いくつかの魔石が手に入った。


 ほかに書斎には気になるものはないので、ドアを開けて進む。

 入った先の部屋には、暖炉がある。

 火も入っていて、部屋全体が暖められている。


「ここが暖炉(だんろ)部屋か。お、燭台(しょくだい)もあるな!」


 大きなソファーと机が置かれている。

 いわゆる応接室だろうか。


 机の上に燭台が置かれている。

 二階の寝室にあったものと同じ、三本立ての燭台(しょくだい)だ。

 火はついていない。

 俺は香炉の火種(ひだね)で火をつける。


 マッチや香炉のようなクラフトで創り出した火種がない場合は、この暖炉から火を得られるんだろう。

 俺の場合はこの部屋に来る意味が小さいか。


 とりあえず、目的だった追加の燭台をゲットした。


「お、これは使えそうだ。火かき棒だな」


 金属製の長い棒で、先端にフックがついている。

 バールに似た形状で、こちらの先端は尖っている。


 バールよりは細い棒だ。

 鈍器としても十分使える範囲だ。先端の尖った部分はそれなりに鋭利になっている。


 地下倉庫に行かずとも、ここにも最低限の武器はあるということか……。

 鎧をどうにかしないと来れない部屋に武器や火が用意されているのがいやらしい。

 このダンジョン、親切さがないわ。

 まあ、用意されているだけマシかな。


 一応、火かき棒も持っていこう。

 自律分身が使うかもしれない。


 右側にドアがあり、内カギがかけられている。

 通路側からカギがかかってて開けられなかったドアだな。


 カギを解除して、警戒しながら外へ出る。

 鎧は分身が誘導した位置で停止している。

 やはり、一定の距離に敵がいないと動かないんだな。


 ドアを閉め、エントランスホールへ向かう。


 戦わずにアイテムゲットだ!

 鎧さんは脳筋! 戦わなければチョロかったな!



 鎧が守る部屋からアイテムをせしめた俺は、エントランスホールへ向かう。


「あ、店長! なんでそっちから出てくるんスか?」

「まさか鎧と戦ったんじゃないよな?」


 トウコと自律分身が二階の踊り場から声をかけてくる。

 俺は燭台(しょくだい)と火かき棒を(かか)げる。


「いや、戦わずにゲットしてきたぞ」


 俺は戦利品を踊り場へ並べる。

 地下倉庫で手に入れたものと、暖炉部屋のものだ。

 豊作だぜ!


「ほら、好きなのを取ってくれ」と俺。

「俺はシャベルと……一応、火かき棒をもらうか」と自律分身。

「あたしはガンベルトと手斧とバールもらうっス」


 自律分身が魔石を差し出してくる。

 分担作業っていいよね。俺は一人二役みたいなもんだから、実入りも増える!


 魔石を使って二つ目のランタンを作成し、トウコへ渡す。


 燭台二つと携帯式のランタン二つ。

 これでかなり、俺たちの周囲は明るくなる。

 気分も上がるぜ。



「燭台がボマーの爆発で吹っ飛ばされると困るよなあ」と俺。


 前回は踊り場に転げ落ちてきたボマーに手を焼いた。

 未回収のアイテムや置いていた燭台を吹っ飛ばされた。


 ちゃんと対策しないと面倒だ。

 自律分身が俺に提案する。考えることは同じだな。


「入れ替えの術でボマーを処理したらどうだ?」と自律分身。

「離れた位置にボマーをどかすわけだな。いいと思う」と俺。


 ボマーは基本的に動きが遅い。

 立ち止まる時間があるから、そこに【入れ替えの術】はかけられる。


「そこをあたしが撃ち殺せばいいっスかね」


 入れ替え後、安全な位置からトウコがボマーを射殺する。


「爆弾処理はこれでオーケーだな……踊り場は戦いやすいけど、三方向から攻められるよな? 他の場所はどうだ?」


 俺は別の場所で戦うことを提案してみる。

 自律分身が答える。


「うーん。二階の階段上? 二階の右側の部屋はレベル上げで倒しておいたから、三ウェーブでの敵の()きは少ないかもな」

「でも倒した後でも敵は新たに湧くっスよ?」


 トウコが言っているのは、倒した後の部屋や通路からも敵が()くってことだ。

 ウェーブのタイミングで()くのだろう。


「敵が()くとしても方向が絞れる場所はあるか?」と俺。

「うーん……バルコニーなら二方向に(しぼ)れるし、爆発しても大丈夫っスかね?」

「バルコニーは一面が外だから、爆発の勢いは()れるか……」と自律分身。


 バルコニーは館の外。外壁に接している。

 普通なら外から敵が来ることはないんだが……。

 そこはなあ……。


「さっき、地下倉庫に行ったときに、窓の外で笑ってた女と戦ったんだ。館の外の壁を這いまわって、跳びかかってきたぞ」

「うええっ! あいつって、そういう感じなんスか! あたしは幽霊みたいな感じだと思ってたっス」


 トウコが舌を出して、イヤそうな顔をする。

 幽霊も嫌だけど、実体を持って襲ってくるのも嫌だね。


「てことは、バルコニーも安全とは言えないってことか」と自律分身。

「一匹だけの特殊なモンスターかもしれないが……。ウェーブのたびに湧くとしたら戦いたくはないな」と俺。


 見た目の怖さもあるが、素早くて強い。

 ゾンビと違って思考能力がありそうなのが厄介だ。


 俺が語る窓女の様子を聞いて、二人はイヤそうな顔を浮かべる。


「バルコニーはナシっスね!」

「今回は踊り場にしよう! ボマーは入れ替えの術で処理してくれ!」と自律分身。

「おう。そうするか。そろそろ始まるしな!」


 じっくり考えている時間もなくなってきた。

 三ウェーブがはじまる。


 回数を重ねて、俺たちも慣れてきている。

 次はもっと、うまくできるだろう!

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2022/08/14 表現見直し

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[気になる点] 俺は見つかないように距離をとればいい。
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