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次に生かそうフィードバック!

 自律分身の経験、記憶をたどる。


 今回(三周目)の攻略開始すぐ、混乱しているトウコをなだめている間、自律分身は二階に物資の調達に行った。


 途中で数体のゾンビを倒しつつ、衣裳部屋で服と靴を選んで持ち出す。


 ――似た服だとトウコが混乱するだろうから、俺はこっちの白い服にしておくか……


 衣裳部屋や鏡部屋では、特に変わった出来事はなかったようだ。



 続けて、寝室の記憶だ。

 前回(二周目)と同じ調子で寝室のチェストの中身を回収して戻る。


 ――窓の外に笑う女が見える?

 ――窓に近寄り、外をのぞく。霧がかかった中庭がぼんやりと見える。

 ――ヘンなものは見えないな。トウコの見間違いか?


 俺は窓の外は見ないように【判断分身の術】でチェストを開けさせていた。

 自律分身は術を使えないから、自分で近寄って開けたんだな。

 勇気あるな(自律)。自画自賛!

 窓の外も異常はなかったと。


 ――荷物が多くなるから、シーツやハーブは後回しにするか


 ここで自律分身は二階の荷物回収を切り上げてる。

 俺とトウコの分の服や靴がかさばっているからな。

 それ以上持って歩くのはムリだろう。


 荷物を持って俺とトウコへ合流する。

 俺がクラフト(角灯・香炉・火炎瓶)している間に、トウコとレベル上げをした。


 エントランスホールからの階段は踊り場で左右に分かれている。

 向かった先は二階の右側。寝室や衣裳部屋とは逆側だ。


 トウコの先導に従って、館を進む。


 ――廊下には敵はいないな。

 ――こっち側は客室(きゃくしつ)って感じっス!

 ――たしかに旅館やホテルの客室の雰囲気だな。


 廊下には四つの閉じたドアがある。どのドアも見た目は同じだ。

 ドアを一つずつ開けて、中の様子を確認していく。


 ――三つ数えたらドアを開けてほしいっス!

 ――ゼロで突入か?

 ――いや、ドアを開けたらここから撃つっス!

 ――……三つ数える意味あるか?

 ――っぽいじゃないっスか。映画みたいでやってみたかったんスよね!

 ――まあ、いいか……。


 自律分身のあきれた感情が伝わってくる。

 なにやってんだコイツら。


 ――さん、にー、いち、ぜろ!

 

 ドアを開ける。

 室内にはウォーカーが一体。

 ゆっくりとこちらへ振り向く。


 ――死ねっス! 敵は一体! ダウンさせたっス!

 ――うりゃっ!


 トウコが銃撃し、自律分身が頭を砕く。

 連携も問題ない。


 次の部屋も同様だ。

 ウォーカーが二体いる場合もあるが、危なげなく処理していく。


 ――あたしと店長二号は相性バッチリっスね!

 ――そうかあ? ところで俺がドア開ける意味ある?

 ――あるっス! 相棒の役割っスよ!

 ――……そうかぁ? ま、トウコが楽しくできるならいいけどな。


 客室の家具などをあさって物資を探している。


 ――お、魔石が出たな。

 ――あたしがそこを開けると弾丸になるっスね!


 やはり、俺や自律分身が宝箱に相当する家具や箱を開けると魔石が手に入る。


 ――この客室には武器になりそうなものはないな。

 ――燭台もないっス!

 ――生活できなくないか、この部屋……。

 ――廊下には壁掛け燭台があるっスね。でも、ロウソクはないっス。


 この洋館は、間取りなどは実在してもおかしくない感じになっている。

 だが実際に生活が成り立つほどの物資はない。

 あくまでも()()()()()ダンジョンなんだろう。


 レベル上げを終えて三ウェーブがはじまる前にエントランスホールへ戻る。

 (本体)もクラフトを終えたところだ。


 三ウェーブ。

 自律分身は踊り場でトウコを護衛しながら戦っていた。

 特に印象深い出来事はない。いらない記憶としてほとんど整理されているようだ。

 火炎瓶も無事に使えたってくらいだな。


 四ウェーブに向けての課題を整理したときの記憶か……。

 これは俺もその場に居たから、受け取るまでもない記憶だな。


 ――店長と二号がくんずほぐれつする薄い本が欲しいところっスね!


 って、いらない記憶じゃねーか! 整理しとけよ!


 整理できないほどの衝撃を受けてる俺たち……。

 勘弁してほしい。



 トウコと自律分身が繰り広げた、踊り場での死闘。

 俺が一階の敵と戦っている間の出来事だ。


 トウコと自律分身はレベル上げで築いた連携で敵を倒していく。

 敵の数の多さ、勢いが問題だ。


 ――くそ、俺は火力が足りない!


 自律分身にはスキルがない。

 踊り場は動き回って格闘するには適さない。

 トウコを守るためには大きく動くことができないから、仕方がないのだ。


 トウコが足を掴まれて倒れる。

 ボマーが階段を転げ落ちてくる。

 俺が踊り場へ走り寄る。


 ――俺がすべきことは、これだ!


 自律分身はとっさの判断でトウコの足を掴むゾンビを狙う。

 俺のやってほしいことを理解してくれる俺自身。


 この行動がなければ、今回トウコを救えなかった。

 さすが自律分身だ! 自画自賛!


 倒れたトウコと俺が入れ替わったときの自律分身の感動が伝わってくる。

 ――さすが本体だ! よく間に合ってくれた!


 自律分身も自画自賛しとる!


 転がるボマーから俺を救うため、無理を承知でボマーへ向かう自律分身。

 ――少しの足止めにしかならないぞ! わかってるな本体……解除してくれ!


 そうして、記憶のフィードバックは終わった。


 記憶の整理は夢を見るようなものだ。

 現実にかかる時間はそれほど長くはない。

 戦ってる最中では危険だけどね。



 俺はフィードバックと瞑想を切り上げて、立ち上がる。


「――よし! 無事に自律分身の記憶と体験は受け取れたぞ」

「ビビったぁー! 急になんスかぁ?」


 急に立ち上がった俺に驚くトウコ。

 気を抜きすぎじゃないかね。


「さっきの自律分身の記憶を、いまフィードバックした。俺のいないところでのトウコの活躍もわかったぞ!」

「てへっ。そうっスか? ()れたっスか?」


「なにがテヘだよ。さて、そろそろ五ウェーブがはじまるぞ。弾は足りてるか?」

「無情なスルーっス! ……最低限の弾はあるけど、踊り場に落ちてた分は拾うまえに吹き飛ばされちゃったっスねえ……。五ウェーブを戦うには足りないっス」


 俺もドロップアイテムを拾う余裕はなかった。


「魔石もあんまり拾えてないな。――判断分身! 魔石と弾丸を拾ってこい!」

「あと、燭台も! 壊れてないといいっスけど……」


 分身が戻ってくる。

 弾丸と魔石はいいとして、燭台は爆発で壊れてしまったな。


「どっちにしろ、弾丸は足りないし、レベルも足りなくて五ウェーブはムリじゃないっスかね?」

「諦めたくはないが……たしかになあ。残された時間で次に繋がることをするか!」

「そうっスね! やるだけやってみるっスかね!」


 この周回で五ウェーブを乗り越えるのは難しい。

 死んでも次がある。今回を()()()のは後ろ向きではない。


 次に進むため。先を見るため。生きて脱出するため。

 そのための情報収集だ。


 これまで俺がやってきたことと変わりはない。

 問題点を洗い出して解決していく。


 目標はダンジョンのクリア。トウコを連れての脱出だ。

 これは諦めない!

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