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三人寄れば文殊の知恵! 一人プレイより三人プレイ!?

 三ウェーブを無事に乗り切った俺たち。


 エントランスホールの階段踊り場に集まっている。

 ここは視界も開けていて比較的安全だ。


「さて、四ウェーブに向けての課題を整理するぞ!」

「またっスかー?」


 トウコがげんなりした顔をする。

 すぐ突っ走ろうとするけど、がむしゃらにやればいいってもんじゃない。


「まあ、聞けよ。情報こそが生死を分けるカギなんだ」と俺。

「俺もまだわからないことが多い。トウコも一緒に考えてくれ」と自律分身。

「しょうがないっスねー」


 多数決の術!

 自律分身がいると俺の意見が多数派みたいになるぞ。忍者汚い。



「まず、トウコのレベル上げ……デスペナルティの影響で下がったレベルを上げるのが優先だ!」と俺。

「やっとレベル3っスよ。これ以上下がるとヤバいっス!」

「今回もトウコがメインの攻撃役で頼むぞ。俺はトドメ役を続ける」と自律分身。


 最低でも戦えるレベルを維持しなければならない。

 レベルが下がれば火力が下がる。

 そうなると、レベル上げも難しくなる……。



「つぎ、自律分身について。どうだ?」と俺。

「トウコと一緒に戦うのはいい感じだな。いつも通りの分担でいける」と自律分身。

「あたしと店長二号はいい感じっス!」


 トウコが軽いノリで自律分身と腕を組む。

 自律分身がそれをやんわりと振り払う。


「そういう()()()()じゃない。戦いの相性だ」と自律分身。

「体の相性がいい感じってことっスね!」

「違うな!」と自律分身。

「違うだろ!」と俺。

「ダブルでめっちゃツッコんでくるっス!」


 トウコと(本体)で戦う場合とほとんど同じということだな。


 自律分身はスキルはないが、それ以外は俺と同じだ。

 今は【打撃武器】にしろ【片手剣】にしろ、スキルが乗るいい武器がない。


 格闘や包丁で戦う分には俺と自律分身はほとんど変わらない。


「単独での戦闘は厳しそうか?」と俺。

「三ウェーブからは厳しいな。手裏剣や鎖分銅(ふんどう)があればいいんだが……」と自律分身。


 トウコが俺のウォレットチェーンを指さす。


(くさり)っスか? ウォレットチェーンじゃダメなんスかね?」

「短くてイマイチだな。いつもは三メートルのを使ってる」と自律分身。

「長っ! そんなの使える気がしないっス」

「スキルと練習でなんとかなるぞ。今度、俺のダンジョンへ来たら見せてやるよ」と俺。

「楽しみにしとくっス!」


 ここから出れたらの話だ。

 ……必ず出してやる。


 自律分身は普段、中長距離武器でサポートに徹している。

 被弾の心配があるからだ。

 被弾、死亡すると意識のフィードバックで俺が連鎖(れんさ)的にやられる。

 自律分身はケガなく、死ぬことなく戦わせないといけない。


 クールダウンの関係で次回も【自律分身の術】が使えるかはわからない。

 それがわかるのは()()だ。



「つぎ、弾丸と魔石不足だな。魔石は足りそうだ。弾丸はどうだ?」と俺。

「弾丸は余裕っスね! 店長二号が手伝ってくれるのは助かるっス」


 ……二号って自律分身のことか。


「そうだな。ふたりでちょうどいい。俺は一人だと火力不足だ」と自律分身。

「またまたー。もっとイケるっスよ!」


 トウコが自律分身(二号)を肘でつついている。

 謙遜(けんそん)しているようで、実は自律分身の火力不足は事実だ。

 トウコは自律分身の実力を大きく見積もっているようだ。



「弾丸は問題なしと。ペアもこのままでいいな」と俺。

異議(いぎ)なしっス!」


 魔石は今回はなんとか足りている。

 自律分身の分の稼ぎが増えたからだ。

 クラフトしたい品物も増えたから助かるね。


 魔石ばかりを集めるわけにもいかないのが悩みどころだ。

 トウコの経験値と弾丸稼ぎとの兼ね合いもあるのが難しい。

 探索範囲を広げるか、攻略スピードを上げればたくさん入手できるだろう。



「つぎ、俺の武器が貧弱なことだな」と俺。

「あたしは銃があればダイジョーブっス!」

「包丁じゃ、ちょっと厳しいぞ」と自律分身。


 今のところはナイフ、包丁が主武器だ。

 トウコのキッチンから持ち込んだ包丁で最初から武器があるのは大きい。

 ゾンビは弱いとはいえ、素手で倒すのは手間がかかる。


「地下倉庫の工具武器が手に入ればいいんだが……」と俺。

「シャベル、ナタ、マチェット、クギ、手斧、バールを入手したいな」と自律分身。


 手斧とバールはトウコ用だな。

 前回の地下倉庫で使おうと用意していた。

 使う機会はなかったようだが。


「いま地下に行くのは危ないんじゃないっスかね?」

「ウェーブ四で行くのは危険だから、今回は難しいだろう」と俺。

「ランタンと香炉があれば、どうだ?」と自律分身。


 視界の確保。暗闇の対策。これは確保できた。

 マッチ、ロウソク、ランタン、香炉で視界が確保できそうだ。

 ロウソクは今のところ二階の寝室の燭台から手に入れることができる。

 クラフト用の素材と魔石集めが手間だが……。

 視界が確保できれば暗い場所の探索ができる。


「暗さ対策はオーケーだ。だけどボマー対策ができないとムリだな」と俺。


 地下倉庫は暗くて狭い。

 見えない敵。ネズミの大量発生。

 課題が山積みだ。


 しかし、工具が手に入る。ぜひ行きたい。

 ……だが、今回はムリだ。

 ウェーブが進む前の早い段階で行くべきだろう。


「ボマーは広いところなら問題なかったっスね!」

「ああ、エントランスホールなら十分広い。距離が取れるし爆風も拡散する」と俺。


 狭い部屋、密閉された部屋で戦うのは危険だ。

 廊下で倒して部屋に隠れるとか、広い部屋で十分距離を取ればしのげる。

 エントランスホールであれば爆発もさほど脅威ではない。


「トウコはこれまでどうやって倒してたんだ?」と自律分身。

「爆発前に別の部屋とか廊下に避難してたっス! でもちゃんとチェックしないとネズミが出るんスよね……」


 爆発は壁やドアを(へだ)てれば安全だ。

 爆発に巻き込まれた別のゾンビの死体が残るとネズミがわく。


 死体を破壊すればアイテムドロップがあるから、どちらにしても死体処理は優先度が高い。


「戻って死体処理すればいいんじゃないか?」と俺。

「できればそうするっス。でも、ひとりだと倒しきれないし。どんどん敵が来て移動しなきゃいけなくって……弾も拾えなくなって詰んでたっスね」

「ああ……なるほどな」と俺。


 トウコ一人の場合はボマーの爆発は部屋移動で問題にならない。

 火力や手数が足りなくて、もと来た道を戻れない。追い立てられる。

 だから戻って死体処理をしたり弾丸を拾う余裕がないんだ。

 で、ネズミがわいて詰み、と。


「今回は店長がいるから弾と死体処理はいい感じなんスけど――」

「――部屋移動をせずに立てこもるような戦い方だからボマーが脅威になるんだな」と俺。

「そうっス! ひとりでやるときとはちょっと違うっスね!」


 ひとりプレイと多人数プレイではぜんぜん違うものだ。

 自分のダンジョンだって、ひとりの時とリンがいる場合では攻略の進め方が違った。

 こういうことをすり合わせるのが大事だな。


「参考になるな。こういう話、どんどん聞かせてくれ」と自律分身。

「役にたったっスか!? ひとりでするときの話をもっとしたらいいっスか?」

「ああ、頼む」と俺。


 トウコがにやけた笑いを浮かべる。


「俺様系イケメンに壁ドンされてムリヤリに……みたいなシチュとか。……お姉さまとの百合(ユリ)な関係も捨てがたいっス!」

「なんの話かな!?」と俺。


 トウコがドヤ顔で胸をはる。


薄い(えっち)本の話っス!」

「その一人プレイの話じゃないわ!」と自律分身。


 なぜ堂々と胸をはる!

 はばかれ! 恥を忍べ!


「店長と二号がくんずほぐれつする薄い本が欲しいところっスね!」


 トウコが流し目で俺たちを見る。


「やめろ! そんな目で俺を見るな!」と俺。

「腐ってやがる……!」と自律分身。


 こいつ……ゾンビより危険だぞ……!

トウコが一人プレイするスピンオフを近日投稿予定!

エロじゃないよホラーだよ!

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