表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

222/1461

目指そう! グッドエンディング!?

「いけそうか?」

「うん! 諦めないって決めたっス! 店長とグッドエンディング目指すっスよ!」


 トウコがぐっと手を握りこんで宣言する。

 このダンジョンのグッドエンディング……脱出エンドだな!


「おう。その意気だ!」

「なんか……にぶいんスねぇ……。ま、いいっス! もうターゲッティング(ロックオン)したっスから」


 俺の胸元に指を銃の形にして突きつける。



「ポーズきめてる場合じゃないぞ! ランナーだ!」


 ランナーが二階から現れた。

 腕を振り上げ、威嚇音をあげている。


「ガアァァァ!」

「シャアアアッ!」


「二ウェーブっス! ……あ、店長。ちなみにあたしのレベルは2まで下がったっス」

「2ってお前……! 戦えるのか!?」


 前回の開始時は5だったはず。

 デスペナルティ……下がりすぎだろう……!


 トウコは楽観的な表情を浮かべて、銃を生み出す。

 手の中に現れた銃のトリガーガードに指をかけてくるくると回転させている。

 見事なガンプレイ……ガンスピンだ!


銃を撃つ(戦う)意思は残ってるっスよ!」


 回転を止め、銃を構える。

 それと同時に引き金を引く。


 階段を降り、俺たちに向かっていたランナーの後頭部から血と脳漿が噴き出す。

 糸の切れた人形のように、床に倒れ、跳ね返る。


「……そうだな。レベルなんてどうでもいい。戦おうとする意志があれば十分だ!」

「ういっス! ほら、もう一匹は店長の分っスよ!」


 ランナーが走ってくる。

 俺は前に出て、ウォレットチェーン(鎖分銅)を垂らすように構える。


「シャアッ!」


 ランナーが床を蹴る。

 それと同時に俺は(たい)を開いて、横にずれる。

 わずかに軸をズラす。これだけで、攻撃はあたらない。


「くらえっ!」


 俺はウォレットチェーンを振るう。

 ランナーの足に絡みついた鎖がぴんと張る。


 ジャンプの勢いでランナーが床に叩きつけられる。

 倒れているランナーの頭部へ鎖を振り下ろし、頭部を砕く。

 さらに数回、鎖を振り下ろし、魔石へと変える。


 鎖は少し非力だな。

 靴がないのでゾンビを踏みつけるのははばかられる。



 さらにウォーカーが三体。

 トウコが銃で狙いをつける。


「もらうっス!」

「遠慮なく持ってけ!」


 トウコはいつもより時間をかけて発砲する。

 二匹のゾンビが頭部を撃ち抜かれて倒れる。

 三匹目は倒れない。……銃弾は外れた。


「あっ! もう一発っス!」


 三匹目は少し引きつけてから狙って撃つ。

 命中。今度こそゾンビは倒れる。


 手分けして死体を塵に変えながら聞く。


「外すとはめずらしいな……スキルのせいか?」

「そうっス……。【照準精度】と【安定化】のせいっスねー。全体的にレベルダウンしてるっス」


 スキルがなくなったのではなく、スキルレベルが低下しているんだな。


「ほかに、できなくなったことはあるか?」

自動式(オートマチック)拳銃が出せなくなったっス! ちなみに、店長はどうっスか?」


「俺のレベルは12に下がってる。でも、スキルに影響はない」

「え? レベルが下がるとスキルも減るはずっスよ?」


 スキルポイントは減っている。

 6あったのが1になっている。


「13に上がった分のスキルポイントは使ってないから、変わらないってことだ」


 貯金が目減りしたみたいな感覚……。

 うぬぬ。なんか腹立つ。

 でも実害はない。戦力は落ちない。


 さらにレベルが下がるとレベル12で使った分のスキルポイント分、弱体化する。

 【入れ替えの術】【毒術】のスキルレベルが下がる。

 気を付けないとな。


「へえーっ! 取っておくとか、あたしはできないっスね! ちなみにレベルが上がっても、スキルは選びなおせないっス。前に取ったスキルが戻るっス!」

「へえ、そうなのか」


 レベルが上がると元と同じスキルが自動的に選ばれるんだな。

 毎回違うスキルを試すことはできない。

 いらないスキルを消して取り直すこともできない。

 うーん、便利に使うことはできないか。 


「だから、いらないスキルをとると詰むっスよ」

「いらないスキルってなんだ?」

「【苦痛耐性】っスね……」


 トウコは苦い表情を浮かべている。


「え? 痛みを感じずにすむんだろ? 良さそうじゃないか!?」

「……それが良くないんス……死にそうなのに……死ねないっス。死んだほうがマシな場合もあるっス……」


 そうか……このダンジョンならではだな。


「ああ、そういうことか。痛みで意識が飛ばないのは……地獄だな」

「……取らないことをおすすめするっス」

「おう。わかった」


 だけど、死なない前提なら便利なスキルだ。

 痛みってのは(あなど)れない。


 コウモリと戦った時は痛みで回避が難しくなった。

 魔力酔いで頭痛がすれば、動きは鈍る。


 痛みは、これまで【自律分身の術】を使わなかった理由のひとつでもある。

 意識のフィードバック。

 痛みの記憶が俺に書き戻されるのが心配なんだ。

 このダンジョンでは、ケガや死の可能性が高い。

 戦闘中にその記憶が書き込まれれば、危険が大きい。


 使わなかった理由のもう一つは、クールダウン時間だ。


「ところで、スキルのクールダウン(再使用可能)時間って死んで復活するとどうなる?」

「クールダウン時間? あたしのスキルだと【緊急回避(ドッジ)】が連続で使えないっスけど……数秒なんでわかんないっス」


 トウコのスキルは常時発動(パッシブ)スキルが多いのかな?

 俺のスキルでも【隠密】などの常時発動(パッシブ)スキルはクールダウン時間がない。


「んじゃ、試してみないとわからないな」


 死んで復活するとき、消費した魔力は回復している。

 傷も治って、魔力も補充される。

 ということは、スキルのクールダウン時間もリセットされてもいいんじゃないか。


 ()()どうなるか、復活後に出せるか試してみよう。

 次回、か。

 俺も今回でクリアできない前提で考えてしまっている。


「てーか、店長。クールダウン時間なんて、なんで気にするんスか?」

「俺の【自律分身の術】は六時間かかるんだ。さっき使ったから、次も使えるかと思ってな」


 トウコが大げさに驚く。


「六時間!? ひえー。そんなに待てないっスね! どんだけ強いスキルなんスか!」

「強いというか、便利だな。……いまごろは二階を探索しているぞ。そろそろ戻ってきてもいいんだが」


 靴と服、寝室の物資調達だけ。

 新しい部屋は探索させない。


「二階を探索? 勝手に動くってことっスか?」

「俺と同じように考えて行動する。ステータスは俺と同じだけどスキルはないからガチの戦闘は無理だな」


 ひとりで三ウェーブは無理だろう。

 ボマーが倒せなくて詰む。


「普通のハリボテ分身じゃないんスね! 別々に行動できるとか、いやー便利っスね!」

「弱点もある。死んだり消したりすると記憶が俺にフィードバックされる。ケガしたり死んだ記憶が戻ってくると俺は動けなくなる。そのときはフォローしてくれ」

「リョーカイっス!」


 自律分身が二階から顔を出す。

 なかなかの大荷物だ。


「お、ちょうど自律分身が戻ってきたぞ」

「噂をすれば影分身っスね!」


 うまいこと言いよる!

ご意見ご感想お待ちしております! お気軽にどうぞ!

「いいね」も励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 普通に更新楽しみにしてます なんのひねりもない感想でした
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ