間引きと地図埋め。ナタは刃物なのか鈍器なのか……?
検証回。バトルもあり!
一階のゴブリンはなるべく倒しながら二階へ進んでいく。
草刈り鎌は主武器としては微妙という結果だ。
そもそも農具であって武器ではない。
歴史上の忍者にとっては、農民に紛れて持つには都合がよかったらしい。
しかし現代では草刈り鎌を持って歩くのは不自然だ。
ナタでもバットでもそうだけど。
路上で武器らしきものを持っていると犯罪になってしまう。
まあ、ダンジョン内なら偽装する必要も隠し持つ必要もない。
というわけで、基本的に鎌は不採用だな。
鎖鎌を作ればまた違ってくるかもしれないが、キワモノを目指す気はない。
ナタはどうか?
ゴブリンを暗殺する場合、やはり一撃で倒すことができる。
見た目はちょっとグロい。
鎌よりは雑に扱える点は評価できる。
取り回しがいい。
ナタは切れ味が悪く、半分鈍器みたいな感じになる。
ゴブリンに振り下ろしても、切断されたり、切り裂いたりという感じではない。
とは言っても、刃物は刃物。切断武器扱いになっているのだろう。
【打撃武器・威力強化】は乗らない。
隠密を解いて戦ってみる。
正面から挑んでも、ゴブリン一匹であれば危なげなく戦える。
ただ、一撃でしとめられない場合がある。
頭蓋骨をカチ割ったり、腕をへし折られながら即死しないゴブリン。
弱ったゴブリンは動きも鈍り、こちらは敏捷の差で素早く動ける。
反撃されることなく二発目で塵へ還すことができる。
試しにナタの刃でない部分……峰で殴ってみたらどうなるか。
予想では【打撃武器】扱いになるはず……。
「ていっ! みねうち!」
「ギァ!」
ゴブリンの頭蓋が陥没する。
打撃が強化された手ごたえ!
やはり【打撃武器】は乗る。
しかし、威力はいまひとつ。
【打撃武器】の威力強化分をいれても、十分とは言えない。
素の攻撃力……重さや遠心力がバットに劣るせいか、即死には至らない。
バットは両手で振っていて、こちらは片手ということもあるだろう。
倒れたゴブリンはしばらく痙攣し、塵へ還る。
倒すことはできるとはいえ、ちょっと泥臭い。
やはり気づかれずに一撃で始末してやるのが情けだ。
鎌とナタの検証をしながらゴブリンの間引きを行っていく。
そうしている間に、手書きの地図が完成した。
一階は完全に制覇した。
地図が全部埋まると気分がいい!
仕事を成し遂げたような感じがするな!
すべての分岐を網羅して、行き止まりまで確認済だ。
宝箱の一つもない。
このダンジョンでは宝箱はないのかもしれない。
ちょっと寂しい。
もっと深く潜れば出てくることに期待だ!
そういえば、ダンジョンに持ち込んだり持ち出したりできる条件の一部がわかった。
書いた地図は外へ持ち出すことができる。
書いた内容が消えたりもしない。
つまり、ダンジョンの中で持ち込んだ品物が変化しても、外ではそのままだ。
短くなったろうそくも、減ったままになる。
俺の体もそうだ。ケガをしても外に出て治ったりしない。
紙、ボールペン、マジックは持ち込めて、使うことができる。
時計、懐中電灯は持ち込んでも動かなくなってしまう。
電池が使用不可になるんだろうか。
機械がダメなんだろうか。
最初に潜ったときにスマホが使えなかったのも同じ理由かもしれない。
階段を降りて二階へ。
もうおなじみのコウモリが、怖い顔をして眠っている。
寝る時くらい安らかに寝てくれないか。
コウモリの数も、先日に比べると少ない。
今日はコウモリ漁はやめておいて、先を急ぐ。
モノリスを検証することが目的だからな。
寄り道ばっかりしていたら進まないよ。
未探索の分岐を見つけると二階のマップも埋めたい衝動に駆られるが……。
我慢しよう。
モノリスまで、一気に駆け抜ける。
運動靴は身軽で、足音もより小さくなった。
いい調子だ!
モノリスの近くに、ゴブリンを発見する。
「お、いたいた。こいつを引っ張ってこう!」
三階への階段付近にあるモノリスの近くまで、ゴブリンを釣り出していく。
「おーい。こっちだゴブリン君!」
「アギっ! ギャギャ!」
俺を見つけるなり、殺意をむき出しにして大声を上げる。
棍棒を振りかざしながら俺のほうへと走り寄ってくるゴブリン。
敏捷に優れる俺には追いつけない。
つかず離れずの距離を保ちながら、モノリス前まで誘導する。
【分身の術】を置いて、俺は隠れる。
俺の分身を力任せに殴りつけ……分身が消えてキョトンとするゴブリン。
「ゴブッ! ア? アギ……?」
気のせいか……とばかりに小首をかしげている。
ゴブリンはすぐ目の前にあるモノリスには興味を持たないようだ。
変わった一枚板なのに、興味を惹かれないのか?
ゴブリンにとってはありふれたものなんだろうか。
あるいは、そこにあるということに気づいていないのか。
ふむ。自発的に触ってはくれないか。
なら、ちょっと後押ししてあげるしかない。
後押し(物理)である。
ゴブリンを後ろから突き飛ばし、モノリスにぶつける。
「君には実験台になってもらう! てい!」
「ギッ!? アギャ!」
ゴブリンは痛がって騒いでいる。
ゴブリンは爆発したり、消えたりはしなかった。
見た目に異常はない。
モノリスも……無反応だ。
やはり微動だにしない。
うーん。転移の機能を持ったモノリスではないのか。
だとすれば、一番警戒していたパターンではない。朗報だ。
モンスターには反応しないという可能性もあるが、考えればきりがない。
「ま、試せることは試した。じゃ、君とはこれでお別れだ!」
悪者じみた笑みを浮かべて、ゴブリンを打ち倒す。
塵になって消えたゴブリンがドロップした魔石を空中でキャッチする。
試すべきことは試した。
リスクはあるが、自分で試すしかない。
いつまでも足踏みをしているわけにもいかない。
自ら手を伸ばさなければ結果は出ないのだ。
次回、モノリスの謎に迫る!




