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ウェイ オブ ザ 地下倉庫! ~バルコニー~

 トウコは気が進まない様子だ。


「……でも地下倉庫にはネズミが出るから、行きたくないっスねー」

「工具はぜひ欲しい。行かない手はない!」

「花台とかナイフじゃマズいんスかね?」


 トウコは不思議そうな顔をしている。


 ナイフや包丁はある。花台もそれなりに使える。

 だが、あくまで急場しのぎの武器でしかない。


「俺は忍具(にんぐ)使いだ。工具は忍者道具と言える。スキルもちゃんと乗る」


 忍者大工道具、略して忍具だ。

 農具もそうだ。


 バールやカマは前に試したことがある。

 俺用の武器になりうる!


 【打撃武器】や【忍具】が乗る。


「え? 工具と忍者関係ないんじゃないっスかね?」

「関係あるぞ。ホラ、有名な忍者集団にもいるだろ。コウグ忍軍。イガじゃないのほうの……」


「……それ、甲賀(こうが)っスよね!?」

「コウグと読むとか読まないとか……」

「読まないっス!」


 断言しよる。

 まあ、読まないね。


「冗談はさておき、鎌とかシャベルは忍者っぽいだろ。そういうことだ」

「ぽいっスけど……。じゃあ、地下倉庫へ行ってみるっスかね……」


 そういうワケで、地下倉庫を探索することになった。



「で、そこへはどうやって行くんだ?」

「一階のエントランスホールを抜けた先にあるっス。中庭に向かうドアを通って外に出る感じっスね」


 俺は脳内に館の地図を思い浮かべる。

 今いるのは二階の左側の奥だ。窓の外は中庭になっている。

 エントランスホールを抜けた先ということは……。


「この部屋からバルコニーに抜けると、その真上か?」

「えーと、そうなるっスね。あ、そこを通っていくんスか?」

「ああ。ショートカットだ!」

「いいっスね!」


 最速攻略に向けて、時短である。

 ついでに未探索のバルコニーもチェックできるぞ。


 寝室のドアを開け、広めのバルコニーに出る。

 左を見ると、館の外が見える。

 外には中庭が広がっている。だが、霧が立ち込めていて見通せない。


 バルコニーには鉢植(はちうえ)えの植物がいくつも置かれている。

 イスやテーブルも置かれていて、ちょっとした休憩スペースのようだ。


 こんな場所の植物がちゃんと手入れされている不思議。

 ゾンビが手入れしてたりして。


「おっ? これはハーブか?」

「緑のハーブっスね。食べてみたけどマズイだけで、ケガが治ったりはしなかったっス」

「治らないんかい! ――まあ、待て。俺にとっては薬になるかもしれん。集めてくれ」


 緑のハーブといえば、ケガが治りそうなイメージ。

 俺は食べる勇気はないが……トウコはすぐに試したんだろう。


 ハーブの種類はさまざまだ。

 バジルやミントに似た種類のものが多い。


 すべての鉢植えからハーブをむしり取る。


 摘んだハーブを並べて、俺はその前に座る。


「……一気食いしたって意味ないんじゃないっスか?」


 トウコは(いぶか)しんだ。


「そんなことするか! まあ、見てろ。――薬術!」


 俺は素材(ハーブ)に手をかざす。


 【薬術】の効果で、素材から作成できるアイテムのリストが表示される。

 リストにあるのは――


「――作れるのは薬草丸各種、だな!」

「やくそうがん? なんスかそれ?」


 一般的な言葉じゃないからな。


「その名の通り、薬草から作る薬だ。ケガが治るぞ」

「……回復アイテムっスか? マジっすか!」


 トウコは目を見開いて驚いている。


「そうだ。俺のダンジョンには薬草って品物があるが、この緑のハーブは似た効果があるんだろうな。量は必要だけど」


 俺のダンジョンの薬草なら二束で薬草丸が作れる。

 緑のハーブは薬効が低いのか、もっと必要だ。


 ハーブからも、体力回復丸と魔力回復丸を作ることができる。

 必要な素材量が違うだけでレシピは同じってことだ。


「へえー!」

「ちなみにハーブを一気食いしたらケガが治ったかもしれないぞ」

「マジっすか……!」

「でも、ケガしてピンチなときに草をムシャムシャ食う余裕なんてないだろ?」

「そうっスね。それに、スゲーまずいっスから!」


 トウコは舌を出して、顔をしかめる。

 量を食うなら、味がマズイとムリかもしれんね。


「というわけで、丸薬だ。作成するぞ。――薬術! 強力薬草丸!」


 素材が光る。

 ハーブすべてと魔石ひとつ。


 ――俺の手の中に光が集まり、丸薬が生み出される。


「うおー! スゲー! 魔法っスね! ファンタジーっスね!」

「忍術な。まあ、ファンタジーみたいなもんだけど」


 丸薬をシーツの切れ端に包んで、ポケットへしまう。


 こういうとき布を持っておくと便利だ。手拭いは忍者道具だし。

 寝室のチェストに入っていたシーツは清潔だ。



「さて、下に降りるぞ」


 バルコニーの手すりに飛び乗る。


 下を見るとかなりの高さがある。

 現代の建物よりもずっと高い。


 だが、俺なら無傷で着地できるだろう。

 なんなら、館の外壁を歩いて降りてもいい。


「えっ!? 飛び降りるんスか? ちょっとあたしには無理じゃないっスかね」


 トウコが衝撃を受けたような表情で固まる。


「そこで、シーツの出番だ! これでロープを作る!」


 シーツ有能!


 ただの割いたシーツでは強度が不安なので【忍具作成】で作成する。

 材料はシーツと魔石ひとつ。安いものだ。

 こういうところでケチってはいけない。


「おーっ! さすが店長エモン! 不思議アイテムの完成っすね!」

「ほれ、進め!」


 俺はバルコニーから飛び降りる。


 【跳躍】が着地の衝撃を殺してくれる。

 朝練でスキルレベルも上がっていたので、いつもより衝撃は小さい。


 手すりにしっかりと結び付けたロープに、トウコがぶら下がる。


「ひえー。ちょっと怖いっスねー」

「落ちたらちゃんと受け止めてやるから安心しろ」


 俺は下で待ち構える。

 不安定に揺れながら、ロープをつたってトウコが下りてくる。

 ロングコートがひらひらと揺れている。

 その下のスカートも揺れている。

 その下の……。


「ふうー。到着っス。……店長、スカートの中、見たっスね?」

「……見てないが?」

「ふーん。そーっスかー?」


 トウコは(いぶか)しんだ。

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