二周目! 第二ウェーブ!
寝室へ突入する。
中には二体のゾンビがいる。
俺達を見つけて威嚇音を上げる。こいつらはランナーだ!
「ッシャアア!」
「カアアアア!」
「ランナーっス! ウェーブ二に入ったっスね!」
「俺が倒す! 魔石を手に入れる! トウコは待機!」
「りょ!」
俺は一気に間合いを詰める。
そして、一体目のランナーの首を包丁で深く切り裂く。
もう一体には蹴りを入れる。
よろけた二体目の腕をつかみ、床に叩きつけ、踏み砕く。
倒れかけている一体目の頭部へ包丁を突き入れる。
二体のランナーが塵となり魔石に変じる。
「ひゃー。店長すばやいっスね!」
「そこは忍者だからな」
「二回攻撃っスね!」
ランナーが速く動くといっても、しょせんはゾンビだ。
忍者の素早さには敵わない。
これで寝室の敵はいなくなった。
「魔石があれば、クラフトもできる。経験値的にはトウコに倒させたいけど……」
「あたしの経験値は前回稼がせてもらったっス。弾丸も今は十分!」
前回の最後、大量のゾンビをしとめた。
ボマーの爆発に巻き込んだ分も俺のキルと判定されているなら、かなりの経験値を手に入れていたはずだ。
「そうか? 俺は前回はレベルダウンしなかったから余裕がある」
「あたしも前回は収支がプラスだったっス! 店長が死んだあと、有り余る弾をブッパしてレベル上げしたっス! 最近はマイナス気味だったから、助かったっス!」
「そりゃよかった。トウコの無双姿も見てみたかったな」
「ははっ! まあ、五ウェーブでボコられたっスけどねー」
経験値の分配の仕組みについてはまだよくわかっていない。
経験値はステータスウィンドウに表示されない。
王様が次のレベルまでの経験値を教えてくれたりもしない。
そもそも誰だよ、王様って。
倒した場合に多くもらえる気がするが、総取りではない。
二人で協力して敵を倒すと、経験値は分配されているはずだ。
なにもしない場合でも、連れが倒せばある程度の経験値は得られる。
「さて、寝室の物資をあさるぞ」
「今回は店長が箱を開けてみるっスか?」
「んー。そうだな。開けよう」
トウコが開けた場合との違いを見ておきたい。
チェストを開ける。
シーツ、水差し、酒瓶、彫刻の施されたナイフ、宝石箱が入っている。
前回と同じだ。
宝石箱も俺が開ける。
「ん? 魔石が十個と赤い宝石か……」
赤い宝石は初登場か?
前回はなかったよな。
アイテム的な使い道があるんだろうか。
体力や負傷が回復するとか……。
「あたしが開けたときは魔石五個と弾丸でしたね。宝石も入ってたけど無視したっス」
「ええ? なんで無視すんだよ! 宝石は……使い道がないのか?」
ホウレンソウちゃんとしてくれ!
使い道があるかもしれないし、トウコに意味がなくても俺には意味があるかもしれない。
「使い道なんてないっスよ? たとえば壁のくぼみに嵌めたら隠し扉が開くみたいなギミックはないっス」
「そうか。ゲームじゃあるまいしな。でも、とりあえず持ってくか」
なんとなく、捨てていくのは惜しい。
換金できるわけじゃないが……なんとなく。
庶民の感覚としては、高そうな宝石を捨て置けないわ。
「持ち出せないし、死んだら消えるっスけどね。まあ、持っといたらいいんじゃないっスか」
「なんか、冷めてんね」
「最初はあたしも喜んで持ってったっスけど。それが役に立ったことはないっス」
「そっか。まあ、いらないものだとしても一応は教えてくれ。俺にとっては意味があるかもしれない」
「リョーカイっス」
魔石が手に入った。魔石は十二個ある。
これでクラフトができる。
前回同様にマッチを作成し、燭台に火を灯す。
火炎瓶も作成し、これはトウコに渡す。
手に入れた鞘付きナイフは俺の腰に装着する。
これで二刀流できるな。
包丁よりナイフのほうが取り回しがいい。
そもそも包丁は武器じゃなくて料理道具だからな。
鞘がないから手に持っていなければならない。
片手はあけておいて、必要な時に抜ける鞘付きナイフは便利だ。
「武器がどうにも貧弱なんだよな……」
「店長は格闘で行けるんじゃないっスか?」
「ある程度はな。でも、敵が多いとムリだぞ」
武器が必要だ。
ナイフや包丁では力不足だ。
「なあ、この館には物置とか武器庫とかはないのか?」
「んー。地下に物置があるっスよ。ガラクタしかないっスけど……」
「ガラクタ? たとえば何があるんだ?」
トウコにとってガラクタでも、俺にとってはそうでないかもしれない。
ガラクタは忍者用の武器じゃなかろうか。
トウコは首をかしげて思い出そうとしている。
「何があったかなあ……ボロ布とかトンカチとかシャベルとか?」
「それだ! トンカチやシャベルは俺にとっては立派な武器になる。そこへ行こう!」
「店長の目の色が変わったっス! 工具フェチっ! ヘンタイっス!」
「ヘンタイじゃねーわ!」
次の目的地は地下倉庫だ!