リアル・ダンジョン攻略記~架空のゲームの攻略情報を載せてみた~
飯テロ会!
鍋を温め、ふたを取る。
肉じゃがのいい匂いが食欲をかき立てる。
皿に盛りつける。
見た目からしてうまそうだ!
ニンジンの赤、インゲンの緑が食欲をそそる。
口の中にあふれたつばを飲み込む。
ほかほかと湯気の立ちのぼる肉じゃがを前にして、手を合わせる。
「いただきます!」
ひとくち目を口に運ぶ。
「うまい!」
ホクホクのじゃがいもにしみ込んだタレの甘みがなんともいえない。
味付けは薄すぎず濃すぎず。
少し物足りないような味……と思えば、噛んでいるとうまみが口の中に広がる。
絶妙な味付けに箸が止まらない!
「う、うますぎる……!」
さっき軽い朝食を済ませたばかりというのに……。
まるで空腹であるかのように次々と胃に収まっていく。
身体の芯から温まる。暗い洞窟に潜って荒みがちな俺の心までぽかぽかしてくる。
ああ、なんか涙が出そうだ。
一人暮らしが長かった俺は、ひさしぶりにあたたかいごはんを食べた気がする。
「ごちそうさま……ふう。満たされた……!」
ああ、うまかった。
なんだかすぐに動こうという気が起こらない。
いいんだろうか。こんなことがあって。
明日も飯を作ってくれるって?
ちょっと怖くなってくるな。
このままだと俺は爆発してしまうんじゃないか?
俺の幸運のストックは大丈夫だろうか。
反動が怖い。
さて、ダンジョンに行く前に調べものをするぞ!
食ってすぐ運動するのはよくないからな。
まずは情報収集だ。
ニュースサイトを流し読みする。
ダンジョンやモンスターがこの日本に現れたというようなニュースはない。
パンデミックも収まるどころか被害は拡大する一方だ。
若者の自殺者や行方不明者が例年になく増えているとか。
今後の生活への不安や恐怖をあおるような報道ばかりだ。
こんなニュースばかり見ていては楽しい気分になんてなれない。
気分転換に外へ遊びに行くことも許されない。
我慢を強いられる。
俺はダンジョンへ行くことができる。
やりたいこと、試したいことがたくさんある。
いっそ、仕事を失う前より充実しているくらいだ。
リア充ならぬ、ダン充だ。
これまで仕事ばかりの日々だった。いまはその代わりにダンジョンだ。
あ、そうだ。
ダンジョンで見つけたモノリスについて調べようと思っていたんだった。
パソコンに検索ワードを打ち込む。
「どうせ検索してもヒットしな……したな。……リアル・ダンジョン攻略記?」
個人が作成しているホームページのようだ。
サイト名はリアル・ダンジョン攻略記。
モノリスが登場するゲームなのかな。
『はじめに』のページを見ればどういうものかわかるかな。
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はじめに。
ようこそ! リアル・ダンジョン攻略記へ。
当ページは実在しないゲーム『リアル・ダンジョン』を攻略する様子を描くブログと、攻略情報のデータベースです。
創作の一種と思って読んでもらえればと思います。
ダンジョンやそこに棲むモンスター。
アイテムやスキル、オーブやモノリスなどなど。
わかっている範囲で思いつく限り書いていきたいと思います。
この情報をあなたの架空の冒険に役立てていただければ嬉しいです。
掲示板も設置しているので、質問があればぜひ書き込んでください。
※リアル・ダンジョンをプレイしているテイで質問してくれると管理者としては臨場感を持って返答できます!
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「……ほう。架空のゲームのプレイ日記か」
自分で考えたゲームの設定を書いてあるホームページなのか。
コンピューターゲームとして売られているわけではないようだ。
自作テーブルトークRPGのリプレイみたいなものだろうか。
ゲームの開発者というわけでもない。
そういうゲームがあるテイで、それをプレイしているテイで……というひねくれたスタイルの書き物だ。
変わった形式だな。
最近はこういうのが流行なのか?
いや、流行ってるとは思えないな。
直接的な答えは得られないかもしれない。
だけど、ゲームの中でモノリスがどういうものなのかを知るにはいいかもしれない。
関係なくても参考くらいにはなるはずだ。
さて、まず読むべきは……。
『キャラメイク』とか『オススメスキル』のページも気になるが……。
とりあえずは『用語集』からだな。
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『用語集』
・魔石
モンスターを倒すとドロップする場合がある。
エネルギーの結晶体のようなもの。
特殊な方法で魔力として使用することもできる。
武器や道具のクラフト素材になる。
通貨のように交換することにも使われる。
ダンジョンの床に放置すると消えてしまうので、急いで拾おう!
・モノリス
有名なSF小説に登場したモノリスに似ていることからそう呼ばれる。
金属または石のような材質の一枚板である。
継ぎ目も傷もない。破壊することもできない。
色やサイズなどの見た目はダンジョンによって違う場合がある。
機能は様々。ダンジョンによって異なる。
また、同じダンジョン内に複数の種類がある場合もある。
以下は一例だ。
・案内板の機能。
触れるとメッセージが再生される。音声、文字、映像の場合がある。
・階層移動の機能。
階層移動を瞬時に行うエレベーターのようなもの。
・転移の機能。
異なる位置に転移する。
対になる板へ転移する場合と、片道の場合がある。
罠の場合もある。
・アイテムの引き換え機能
魔石と引き換えにアイテムの交換ができる
・スキルの付与
レアなスキルを得られる。
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「……魔石を置いておくと消えるのは俺のダンジョンと同じだな」
ゲームや小説の設定としてはよくある感じなのかもしれない。
魔石にはいろいろな使い道があるらしい。
うらやましい。
今のところ俺は貯めてるばかりで使い道が見つかっていない。
貯金していくだけで、満足してしまっている。
収納ケースに増えていく魔石を眺めるだけでちょっと幸せになる。
ニヤニヤと眺めていても始まらないから、使い道についても考えてみたい。
「モノリスについても、似てるな」
見た目の説明は俺のダンジョンのものと似ている。
そもそもモノリスの語源は「一枚の」「岩」らしい。
見た目が一致するのも納得だ。
一枚岩とか一枚板のことをモノリスと呼ぶんだから。
この攻略サイトでは、有名な映画のモノリスに似ているからそう呼んでいるとか。
俺もダンジョンにある一枚板を見て、有名な映画を思い浮かべたしな。
考えることは一緒だ。
効果については、候補があり過ぎて絞り込めない。
結局、触って確かめるまではわからないか。
この説明を見る限り「転移の機能」がヤバそうだ。
ダンジョンの奥底とか、石の中に飛ばされたりしたら生きて帰れないかもしれない。
まあ、悩んでいてもしかたがない。
ダンジョンへ行って試してみるか。
……ゴブリンで。
この物語はフィクションです。実在のサイトやゲームとは無関係です。
と、魔よけの呪文を唱えておきます。
モノリスとかで検索すると、結構ヒットしますね。




