納涼! 夏の風物詩!?
銃は好きだけど、ガンマニアではないので調べながら書いています。
ヘンなところがあればやさしくご指摘ください。やさしく!
ゾンビはヘンでも……なんでもあり!
「アウアアアッ!」
「おっと!」
ゾンビが大口を開けて食いついてくる。
その喉元を手でおさえる。
がちんと歯が鳴る。
押す力は強い。
歯をガチガチと鳴らしながら、うめくゾンビ。
俺はその力に逆らわず、そのまま体を引く。
ゾンビが体勢を崩す。
その後頭部に手を添えて、勢いよく振り下ろす。
押そうとした力と崩した体勢、そこに俺の力をかける。
ゾンビを床に叩きつけ、踏みつける。
「アアウッ」
「トドメいれろ!」
「リョーカイ! スイカ割りっス!」
トウコが倒れたゾンビに花台を振り下ろす。
果汁のように、血液が飛び散りトウコを汚す。
ゾンビが塵となり弾丸に変わると、汚れも塵となって消える。
ずっと血みどろで戦い続けなくていいのは、ダンジョンの良さだな。
「シャアアアッ!」
次のゾンビが喉を鳴らすような威嚇音をあげる。
走りながらつかみかかってくる。
振り回した手に当たらないように、俺は横へと体をずらす。
腕をつかんでゾンビをスイングし、走らせる。
プロレスのロープに投げる技に近い。
もちろんここはリングじゃない。
洋館の二階。その廊下だ。
――投げる先は壁である。
「うおりゃっ!」
「アガッ!」
振り回し、回転する力そのままに、ゾンビを壁にぶち当てる。
そのままつかんだ腕をへし折る。
ズリズリと血の跡を壁に残しながら、そいつは倒れる。
それを尻目に、次のゾンビの足を払う。
よたよたと歩いていたゾンビはたやすく倒れる。
倒れたゾンビはトウコが花台で叩き潰す。
トウコは拾った弾丸をパーカーのポケットに突っ込んでいく。
弾丸を節約する作戦は順調だ。
弾を撃たなければ、増える一方である!
ゾンビと戦うにあたっては【体術】が役に立つ。
【体術】は体の動かし方を教えてくれる。
柔術や拳法のような、体を使って攻撃や防御をするスキルだ。
格闘技の技に近い。でもそれは、空手や柔道といった、特定の武術ではない。
【忍術】に関連するスキルだから、忍者的な体術なんだろう。
これはコウモリやスライムには役に立ちにくい。
人間型の敵にこそ真価を発揮する。
ゾンビにはうってつけというワケだ!
廊下のゾンビは片付いた。
「……これで終わりか?」
「まだっス! あのドアから次が来るっス!」
トウコが指し示した先には両開きのドアがある。
そのドアが、ぎしぎしと音を立てる。
何かがドアに内側からぶち当たっているかのようだ。
「……ゾンビってドア開けられるのか?」
「あいつらアホっスから、開けはしませんね。でも――」
ドアの金具がびしり、と嫌な音を立てる。
破壊されたドアが通路へと倒れる。
大量のゾンビがドアと共にあふれ出してくる。
将棋倒しのように通路へと倒れるゾンビたち。
「壊してくるわけか……」
ゾンビたちを踏みつけて、巨体のゾンビが現れる。
ぶよぶよと膨れたその体は今にもはじけそうだ。
「こいつはあたしがやるっス!」
「あれやっぱ……爆発するやつだよな」
「そうっス! 離れて!」
俺はげんなりした表情を浮かべながら後ろへ下がる。
腐敗ガスなり体液なりで膨張していて、攻撃すると爆発する。
新種ゾンビの一種で、ゲームや映画ではお決まりのヤツだ。
素手で戦うのはいろんな意味でイヤである。
「グウェエエッ」
巨体の太ったゾンビが口から何かを吐き出す。
踏みつけられたゾンビにかかった液体が、ゾンビを溶かす。
ゾンビがもがく。
ゾンビの肉が……いや、あんまり見ないようにしよう。
トウコが銃を構える。左手を銃の上にそえている。
連続して六発。あざやかな連続射撃だ。
いわゆるファニングショット。
手のひらで撃鉄を起こして連射する技術だ。
西部劇の早撃ちガンマンがやる動き。
タタタタタタン、と発砲音が連続して聞こえるほどの早さ。
早撃ちは命中精度に難がある。
拳銃はそもそも至近距離でないと命中しにくい。
だが――発射された弾丸は太ったゾンビの膨れた腹をしっかりと撃ち抜く。
全弾命中だ!
太ったゾンビがよろけ――
――トウコがその場に伏せながら叫ぶ。
「伏せるっス!」
「お、おう!」
いそいで伏せる。
それと同時に、太ったゾンビが破裂する。
爆弾が炸裂したかのように、周囲のゾンビを巻き込んで爆発する。
周囲に血と体液と肉片をバラまく。
ドア周辺にいたほかのゾンビも、まとめて一掃された。
「――きたねえ花火っス!」
「マジに汚いよ!?」
爆心地は血と臓物でひどいありさまだ。
匂いもひどい。
それらが塵となって消え、赤く染まった廊下が元に戻る。
床には弾丸が散らばっている。
血の海から拾い上げるなんてことにならなくてよかったわ。
マジでね。
トウコは空になった回転式弾倉に一発ずつ弾を込めていく。
その手つきは慣れたものだ。
リボルバー拳銃の弱点は、弾丸の装填に時間がかかることだ。
自動式拳銃の弾倉交換と比べるとどうしても時間がかかる。
だがトウコは、あっという間に装填してしまった。
「すげえ器用だな。スキルか?」
「リロードはレボリューションっス! 【銃器】の【装填】スキルのおかげっスけどね!」
いいセンスのガンマンみたいだな。
【銃器】が基礎スキルか。
早撃ちや命中精度もスキルによるものだろう。
「だけど、スキルだけじゃなくて練習しただろ? ちょっと驚いたよ」
「ははっ! そう言ってもらえるとうれしいっスね! さんざん死にながら覚えたっス!」
スキルは補助をしてくれる。技術を身につけてくれる。
だけど、それだけで使いこなせるものじゃない。
練習やセンスが必要だ。
このダンジョンは敵がどんどん襲ってきて練習するヒマがない。
俺のダンジョンのようにじっくりと練習はできない。
血のにじむような鍛錬……それこそ血を流しながら習得したんだろう。
「……がんばったな」
「ちょっと……しんみりはやめてほしいっス! 泣くっスよ!」
「頭でも撫でてやろうか」
「あたしは頭ポンポンしたら落ちるチョロインじゃないっスよ!?」
といいつつ、にやけた顔で頭を差し出してくるトウコだった。
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