表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

198/1455

ゾンビにもいろいろあるね!?

 トウコから聞き出したことをまとめる。


 二階には靴や資源がある。

 この場所にとどまっていると二階の敵とはさみ撃ちになる。


 トウコから話を聞き出すのは難しい。

 重要なことから順に話してくれればいいんだけど。

 俺も、うまく聞きだせてないんだけどね。

 難しい。


 俺も、はじめての状況に戸惑(とまど)っている。


 ――ともあれ、できることをやるっきゃない!


「来たっス! 下からゾンビが三匹、上から素早いヤツが二匹っス!」


 二階から二体のゾンビが走り出てくる。

 これまで見たゾンビよりも……新鮮だ。腐っていない。


 一階からはよたよたと、腐ったゾンビが歩いてくる。


「よし、踊り場で迎え撃つぞ! 俺は上の奴をやる!」

「じゃ、あたしは三匹の子ゾンビちゃんのお相手っスね!」


 トウコは銃を構えて一階へと降りていく。


 俺は階段の踊り場の花台(フラワーテーブル)を手に持って構える。

 一本足の花台で、天板は丸い。

 少しバランスは悪いが、即席の打撃武器として使えそうだ。


 スキルで作らなくたって、この場にあるもので戦えばいい!


「ウガアァァ!」

「シャアアアッ!」


 二階からゾンビが叫びをあげ、走ってくる。

 俺は花台を構える。


「でたよ……走るゾンビ(ランナー)! ――出てくるの早くない?」

「そりゃ、走ってるんだから速いっスよ!」

「そういうことじゃないわ! 新種が出るには早いだろ!?」


 新種のゾンビ。

 ゾンビモノではよくあることだ。

 ゆっくり歩くゾンビの対処に慣れた頃、新種が現れる。


 まだぜんぜん慣れてないんだよね!

 もうちょっと、チュートリアル的な余裕をくれませんかね!?


 二階の階段のへりまで来たゾンビは、そのまま走り降りてくる。

 転ばずに駆け下りてくる。


 あ、一匹、足を踏み外した。

 勢いそのままに踊り場へ……俺のほうへ転がり落ちてくる。


 もう一匹は勢いをつけて、俺へと飛びかかってくる。

 空中で、ゾンビは俺につかみかからんと腕を伸ばす。


 俺は構えた花台を力いっぱい振る。


「うりゃあ! ――フルスイングッ!」

「シャアア――アガアッ!」


 花台がゾンビの顔面をとらえる。

 スキルが発動し、ノックバック効果がゾンビを打ち返す。


 べきべきと、骨が砕ける手ごたえ。

 ゾンビの首がへし折れ、回転しながら吹き飛んでいく。

 そのまま、転げ落ちてくるゾンビに激突する。


 俺は横に身をかわし、ゾンビたちが転がり落ちてくるのを避ける。


 首の骨が折れたゾンビが、塵と変わる。

 ダメージの与えすぎだ。


「おっと! やりすぎちまったな!」


 転がってきたもう一匹の足に花台を振り下ろす。

 足を砕き、動きを止める。


「ガアアッ!」


 ゾンビが手を伸ばし、俺の足をつかもうとする。

 俺は足を引いて、後ろへ飛ぶ。


「あぶねっ! まだ元気だな」


 でも、それでいい。

 さっきのゾンビはウッカリ倒してしまった。

 ここのゾンビはそんなに強くはない。

 これは朗報だ。


 映画のゾンビみたいに、頭を破壊しなくても倒せる。

 首の骨を折れば死ぬ。胸を踏み折っても死ぬ。

 不死身じゃない。


 ゴブリンよりは頑丈だ。

 走るタイプは動きも早い。

 でも、俺と比べれば遅い。


 物理で殴れば死ぬ。倒せる!


「そっちも済んだっスね!」


 トウコの銃からは硝煙(しょうえん)が立ちのぼっている。

 エントランスホールには三体のゾンビが倒れている。


 トウコは倒れたゾンビに銃を向け、引き金を引く。

 ゾンビが消え、弾丸が残る。


「おいおい! ちょっと待てトウコ!」

「え? なんスか?」


 トウコは次のゾンビへと銃を向ける。


 まるで流れ作業のように考えなしに体が動いているみたいだ。

 いったいどれだけ、同じことをくり返してきたのか……。


「おい、撃つなよ!? ――目的を忘れたか? 弾を集めるんだろ? なら、無駄弾を撃つな!」

「え……? ああ、そうっスね……」


 トウコはぼんやりと頷く。

 ゆっくりと振り向いたその顔にはへらへらした笑みが浮かんでいる。


「おい。大丈夫か? 集中しろ!」

「あー。大丈夫っス。ちょっといつものクセで……。やり方を変えるんスね!」

「そうだ。忘れるなよ」


 ……大丈夫か?


 いつものトウコはもっと元気いっぱいだ。

 今は少し……疲れて見える。


「ほら、これを使え。あっちに転がってるヤツをやっつけてこい。俺は、こっちのにトドメをさす」


 花台を手渡す。

 トドメに銃弾を使っては、弾はなかなか増えない。

 俺が足を砕いて倒しやすいように()()()()()()ゾンビを倒すのはトウコの役目だ。

 トウコが倒したゾンビへのトドメは、どっちがやっても弾丸を生む。


 こういう地道な作業で、攻略は進む。

 ダンジョンが変わっても、それは変わらない。

 コツコツと準備して、確実に勝つ。

 敵がゾンビに変わろうが、難易度が高くなろうが変わらない。


 いや、難易度が高いからこそ、命がかかっているからこそだ。

 命を大事に。安全第一だ!


「……ありがとっス。節約っスね!」


 トウコが花台を振り下ろす。

 ぐしゃり、とゾンビの頭部が砕ける。

 ゾンビが弾丸に変わる。


 俺はトウコが倒したゾンビにトドメを入れていく。


 この先もっと強い敵や多くの敵が出るのかもしれない。

 倒せるうちに、稼いでおこう!


 そうして、十二発の弾丸を回収した。

 四発撃ったから、これで十発近く増えた!


 一歩前進だな!

忍術なしの花台無双!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 一匹はくろうが倒しちゃったんだから弾丸は12発でしょ・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ