実戦! 回避盾と魔法アタッカー!
時系列整理
■前日の出来事
・朝練
・朝ごはんタイム(チート野菜)
・中級忍者
・昼ごはん(角ウサギ串焼き)
・五階層コウモリ戦
・宝箱罠ピンチ展開
・リアダン調べて頭痛気絶
・晩ごはん(角ウサギシチュー)
■当日の出来事
・朝練
・トウコ相談
・クロウのダンジョン攻略開始~この話
ハードスケジュール!
三階層までの攻略でオトナシさんの課題が見えてきた。
ダンジョン攻略の経験不足。
動揺すると魔法の火力が一定しないこと。
魔力が切れると何もできないこと。
これは俺が声をかけたり攻撃タイミングを指示することで対策する。
といっても、やる事は単純だ。
怖がらせたり焦らせたりしないように気を使ってエスコートする。
女子の扱い……気づかいだ。
あれ、単純じゃなくて無理ゲーなのか?
役割も決めた。
俺は前衛。彼女は後衛。
場合によっては分身を前に出して俺は中衛になる。
自律分身を出す場合は後衛として配置してオトナシさんの護衛役を務める。
三階層と四階層で連携の練習をして、準備は整った。
五階層のボスはまだ復活していない。倒したのは昨日だ。
「いざ、六階層へ!」
「はいっ! がんばりましょう!」
階段で準備を整え、六階層へ降りる。
「ここから、敵が強くなるから気を付けて。職業持ちのゴブリンが四体、連携してくる」
「私は盾を持ってるゴブリンか魔法使いを狙うんですよね」
「そうです。いない場合はどれを狙うか言います」
説明しながらダンジョンを進む。
一人で攻略するときのように松明を消しながら進む作戦はとらない。
【暗視】状態で【ファイアボール】が飛ぶと目に負担がある。
片目を明かりに慣らしたとしても、本格的な戦闘は難しい。
この階層ではきっちり距離感をつかんで回避しないとね。
「いた。ゴブリンだ。こっちに気づいている! 戦闘準備!」
「はいっ!」
敵は四体のゴブリン。斥候、剣士、剣士、盾。
二人での攻略では【隠密】には頼れない。
隠れずに正面から突破していく!
「リン! 盾に包み焼き!」
「――ファイアボールっ!」
迷宮の通路を明るく照らしながら、ファイアボールが飛んでいく。
ゴブリンは盾を構える。
「ゴブっ!」
火球は盾に防がれる。
ゴブリンが得意げな顔を浮かべる。
――だが、狙い通りだ。
盾に命中した火球が燃え広がる。
炎は盾だけでなく、そのままゴブリンへと燃え広がっていく。
「――ギャアア!」
火炎瓶や焼夷弾のようなイメージだ。
直線的な打撃力を持った火球とは違う。
これは盾では防げない!
炎に包まれてもがく盾持ちの前に剣士が走りこんでくる。
「アギっ!」
「ギャギャ!」
距離を詰められる前に、連続して手裏剣を投擲する。
ゴブリンはナイフでそれを迎え撃とうとして――失敗する。
飛んでくる手裏剣を打ち落とすなんて、そうそうできるもんじゃない。
俺にもできるかどうか……。
飛び道具を打ち落とすのは高度な技なんだ。練習がいる。
忍者の先輩たちは結構、簡単にやってのける。
サイボーグな忍者さんは銃弾もキンキン弾く。
俺も上級忍者になればできるだろうか。
むしろ剣士系のスキルを育てればいいのか……。
【片手剣】スキルは技術面ではあまりサポートがない。
【片手剣・威力強化】は攻撃の威力に補正がかかるけど、技術は補正しない。
俺の近接戦闘は動画で見た動きをもとにしたニワカ剣術だ。
実戦経験と練習の積み重ねだ。
ガチの剣士と切りあうなんて無理だろう。
俺は剣士じゃないからね。
でも問題ない。俺は忍者だ。
こうして手裏剣を【投擲】すれば、敵は倒れる。
「ゲゲッ!」
苦悶の声をあげて、何本もの手裏剣が突き立ったゴブリンが倒れる。
遠、中距離の間に敵を減らせるのが俺たちの強みだ。
「これで、残り二体! 魔法は温存で!」
「はいっ」
残った剣士が喚きながらこちらに迫る。
「ゴギャーッ!」
ここからは近接戦闘の間合いだ!
俺は忍者刀を抜いて前へ出る。
突っ込んでくるゴブリンへ刀を後ろへ引いて構える。
突きの構えだ。
ゴブリンがナイフを突き出してくる。
俺はその動きだしを捉えて、刀を突きだす。
「ファストスラッシュ!」
スキルを乗せた片手一本突きだ。
ゴブリンのナイフは俺に届かない。
刀が喉を貫き、ゴブリンは即死。すぐさま塵と化す。
そのまま俺は【歩法】で加速して駆け抜ける。
狙いは斥候ゴブリンだ。
ナイフを投げようと構えている。
俺はわざと大声をあげて注意を引く。
「おおおっ!」
「ギッ!」
斥候が投げナイフを投げる。
狙いは俺だ。
距離も近く、戦闘で目立っている。
自分に向かって走ってくる俺を無視はできない。
ゲームじゃないから、いわゆるヘイト値のパラメータはない。
ないはずだ。
……敵を引き付ける【挑発】スキルも存在するだろうか?
俺の選択できるスキルには今のところない。
こうして立ち回りで注意を引き付けるしかない。
「――ゼンジさん、危ない!」
「大丈夫!」
【回避】がナイフの軌道を予測する。
その軌道上にオトナシさんは入っていない。
俺は大きく踏み切って跳躍する。
ナイフが体の下すれすれをすり抜け、迷宮の壁に当たって金属音を立てる。
空中で前回転し、そのまま刀を振り下ろす。
回転の勢いと体重の乗った一撃が、ゴブリンを肩口からザックリと切り裂く。
一刀両断とはいかないが、内臓まで達する一撃だ。
ゴブリンが塵と化す。
ふう。すぐ塵になってくれてよかった。
グロい切断面とか見なくて済む。
オトナシさんにも見せたくないしな。
「よし! 全滅! 増援なし!」
「やりましたねー! すぐに三匹も倒しちゃって、すごいです!」
「リンが厄介な盾を倒してくれたからね。助かったよ!」
「えへへ……」
「もっと攻撃してもらってもいいけど、ここは魔力を温存しておいてね」
「はいっ!」
この調子なら、俺も術を使わずに済む。
【自律分身の術】も使用可能な状態で温存している。
一人で戦うより、ずっと楽だ。それに張り合いもある。
連係プレイ、楽しいわ!
■翌日の予定
・昼からトウコと約束で店へ行く