未知との遭遇! SFなのか? ファンタジーなのか!?
なぜなぜ回!
「あれ、階段か。調子に乗って二階を走破してしまった……!」
二階はゴブリンとコウモリしか現れなかった。
二階はもう、問題なく攻略したと言えるだろう!
しかし、今日はこれ以上進む気はない。
家に帰ってちゃんとした飯を食う。
安全第一のダンジョン攻略を目指すのだ。
働きすぎは危険だ。
仕事じゃないから、無理に働かなくてもいいんだ。
休んでもいいんだ……!
冒険者でもないから、危険を冒して険しい道を行くこともない。
「ん、あれ……なんだ?」
階段の奥、行き止まりの通路の先に何か見える。
【暗視】がなければ見過ごしていたかもしれない。
黒い金属のような板が通路の行き止まりに直立している。
まるで光沢がなく、暗闇に紛れている。
光を吸い込んでいるかのような黒。
サイズ感はアパートのドアくらいで、それよりもぶ厚い。
テレビゲームだったらセーブポイントっぽい。
まさか、現実にそんなものはありえないよな。
まさかな。
前々から気になっていたことがある。
ダンジョン内で死んだらどうなるのか?
普通に考えたら死ぬ。終わりだ。
でも、ダンジョンの中なら……?
ゲームみたいな世界だ。ステータスもスキルもある。
死んでも生き返るゲームはたくさんある。
そうであれば、気楽にダンジョン攻略ができるというものだ。
でも、試してみるわけにはいかない。
結果、生き返れませんでしたとなっては目も当てられない。
わからないことに期待してはいけない。
だから俺は、ケガ無く安全に攻略を進めていくことにする。
方針は今まで通りだ。
安全第一! 命を大事にしよう!
謎の板に注意を戻す。
これはなんなんだ?
「うーん……モノリス? SF的なものか? ファンタジー的には……ドア?」
【暗視】を切って、ろうそくに火を灯す。
何本かろうそくを設置して視界を確保する。
暗視状態だと白黒視界になってしまうからだ。
じっくり観察する。
通常の視界で見ても、やはり黒い。
いや、不自然に黒すぎる。
洞窟の壁はろうそくの炎に照らされて赤く染まっている。
ちらちらと揺れる炎に、影が躍る。
しかし、モノリスの表面はまったく揺るがない。
光が反射していないようだ。
すごく……得体が知れない。
見つめていると不安な気持ちがわいてくる。
現実世界にはありえないなにか。
クローゼットからダンジョンの出入り口となっている黒い水面に似ているともいえる。
黒い水面はゆらゆらと揺らめいているが、モノリスは微動だにしない。
似たものだとすれば、何かの出入り口だろうか。
あるいは、階層移動するためのスイッチとか?
触ったら地上にワープして帰れるとかね。
それなら楽でいいけど……。
そういうギミック、ゲームではよくあるよね。
しかし、うかつに触って変なことになると怖い。
いきなりボス戦突入とか、いやだし。
とりあえずは小石を投げてみる。
反応は……特にない。
放物線を描いて飛んだ石は、モノリスの表面に当たってこつんと乾いた音を立てる。
跳ね返った石は何事もなく洞窟に転がって、止まる。
何も起こらない。
石が消えたり、壊れたりすることはなかった。
「……金属とか石みたいな硬い材質だな。小石はなんともない」
とりあえずは安全そうだ。
劇的な何かなんて、そうそう起こるものではない。
いきなり爆発するとか、消えるみたいな結果だと怖いしな。
石をぶつけても何も起こらない、オーケーだ。
安全が確認できただけでも十分な成果だ。
人間や生き物が触れたときにだけ動作するという可能性は残る。
触ってみるか?
セーブポイントとか、回復ポイントだったら見逃すのはもったいない。
「うーん。保留!」
気になるが、ちょっと危険すぎる。
とりあえず後回しにする。
迷ったら安全策。鉄の掟だ。
今どうにかしなきゃならない問題じゃない。
三階への階段を見つけただけでも十分な成果だ。
次来るときは、ゴブリンでも連れて来よう。
ぶつけてみたら劇的な何かが起こるかも?
爆発したりして。
ないない。ないはず。
ダンジョンの出入り口まで戻ってきた。
今回の成果は――
まずはコウモリへのリベンジを達成!
攻略方法が確立されてしまえば、ケガ無く倒すことができる。
二つ目は三階へのくだり階段を発見!
二階は充分に探索したと言える。三階へ進んでも大丈夫だろう。
三つめは謎のモノリスを発見!
これは、課題でもある。よくわからない物体だ。
なんとか、謎を解き明かしていきたい。
四つ目は大量のドロップアイテムだ。
コウモリ漁がはかどって、たくさん魔石をゲットした。
ざらざらと収納ケースへ流し込んでおく。雑な管理だけどしょうがない。
前回入れた分も消えずに残っているので、保管方法はこれでいいだろう。
とはいえ、この部屋は敵が入ってこないわけではない。
ゴブリンがひょっこりやってきて箱を破壊されたら腹が立つ。
出入口くらいは安全地帯にならないものか。
ゲームだと街や拠点にはモンスターが入ってこないんだけどな。
自分で安全地帯を作るしかないのか。
そういうのを作れるスキルは持っていない。
物理的な壁を作ってしまえばいいだろうか。
DIYするか。
店の備品を直したりしていたし、結構得意なのだ。
クローゼットも中身ごと消えてダンジョンの入り口になっちゃったし、ダンジョンの中にクローゼット代わりの収納スペースも作っちゃうとか。
この部屋を秘密基地みたいに拡張していくのは楽しそうだ。
家が広くなったみたいでラッキーかも。
要らないモノをダンジョン内の倉庫にぶちこんでしまえば、アパートの部屋が広々するな。
……そんなことしてたら、ある日突然にダンジョンに入れなくなったりしてね。
収納したまま入れなくなったら大損だな。
というか、閉じ込められて出られなくなったらヤバいよなあ。
ダンジョンに居るだけでも危ないことなのかもしれない。
いや、フラグではない。
ちらっと頭をよぎっただけだ。
根拠はないが大丈夫なはずだ。
検証できることでもないので、そう思い込んでおく。
大丈夫なんだ。ダンジョンを信じろ。
モノリスが正体不明の謎の存在だとか言ったけど……。
ダンジョンのほうが謎の存在なんだよなあ。
読んでくれてありがとうございます!




