表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

167/1446

ブラック労働で店を支えている俺をクビ? 戻ってきてと泣いて謝ってももう遅い その2

一話に対応する話。

史上最遅のざまぁ展開か!?

「店長! 今日は相談があって来たっス! 話を聞いてくれるまで帰らないっスよ!」


 部屋の外で騒いでいると近所迷惑になる。

 シモダさんが怒鳴り込んでこないのが不思議なくらいだ!


 仕方がない。

 俺の部屋へ移動するか。


「うーん。……じゃ、ちょっと上がってけ。あ、オトナシさんもよければ同席してください」

「え? お仕事のお話なら……お邪魔じゃないですか?」

「いえ、ぜんぜん。一応こんなんでも未成年だから、一人で俺の部屋に上げるのはちょっと」

「あ、わかりました! もちろんです!」


 オトナシさんは心地よく了承してくれた。機嫌も直ったみたいだ。

 トウコが口をとがらす。


「こんなんってなんスか!」

「こんな、ちっちゃくてうるさくて空気が読めないアホですが、万が一にも俺が法的に不利になるのはイヤなので!」

「うぐっ! 具体的に言われるとなんかへこむっス!」

「ふふっ」


 トウコが墓穴を掘る。

 オトナシさんはそれを見て笑っている。

 さっきまで不安定だったのに、突然の安定感!

 なにか、オーケースイッチが入ったんだ。


 一応俺にもデリカシーがあるので、部屋に若い女を一人で通すわけにはいかない。

 というか、オトナシさんがまたヘンな反応しても困る。


「とりあえず紹介からか。こちらはオトナシさん。――最近、お付き合いすることになった俺の彼女だ」

「ま、マジっすか!? 仕事が恋人の店長についに彼女が……!?」


 トウコがオーバーなリアクションを取ってのけぞる。


「こっちのがトウコ。俺の元勤務先のバイトだ」


 トウコに向かってオトナシさんが頭を下げる。


「……クロウさんにはいつもお世話になってます。オトナシリンです」


 トウコの視線はオトナシさんの胸部にくぎ付けだ。

 視線が揺れている。

 まあ、そうなるよな。うん。


「そのエロエロボディでどんなお世話をしてるんスかっ!」

「下世話だよ! 変なノリをやめろ。オトナシさんが困るだろ!」


「いえ、大丈夫です。その……よろしくね。トウコさん」

「呼び捨てでいいっス! 姉さんと呼ばせてくださいっス!」

「え? はい。……どうぞ?」


 なかなか話が進まないので、トウコへ水を向ける。


「で、トウコ。何の相談だ? 店の件か?」

「そうっス! 前からお願いしていたとおり、早く戻ってきてほしいっス!」

「戻るもなにも、オーナーが俺を要らないって言ったんだ。俺の一存で決まるもんじゃない。今はやりたいこともできたしな」


 これは前から何度も話していることだ。

 何度言っても、トウコはあきらめない。


「それが、すぐ戻ってもらわないと一大事っス! もうすぐ給料日っスよね。だけど、オーナーは……」

「まさか、経理が(とどこお)ってるのか? 給料がヤバいとか?」


 ありそうな話だ……!

 引継ぎを要らないとか、全部自分でやるとか大口叩いたくせに……。


 そもそも店はちゃんと成立してるんだろうか。

 前に見たときは大丈夫そうだったけど、外から見ただけじゃわからないか。


「そうっス! そういうのは全部クロウに任せてたから知るわけないだろ――とか言ってたっス! このままだと給料がちゃんと支払われないっスね……」

「あのクソオーナーめ……」


 知らないって! 他人事かよ!

 できないから払わなくていいワケじゃないぞ。

 なんとかしろって話だ!

 さすがオーナー。想像の上を行くクソさだ!


 あと、オーナーの口真似するのむかつくからやめて!


「で、それがバレて皆はカンカンっス! 今ストライキ状態っス!」

「ええ? なにそれ!? 店は営業しているのか?」


 ちょっと、ブラックを通り越して漆黒企業じゃないか。

 給料不払いて。

 バイトの皆の生活が……。

 店の存続も怪しいレベルじゃねえか!


「今日なんて臨時休業っスよ!」

「おお……マズイ状態だな!」


 俺は頭を抱える。


「というわけで、店長を呼び戻そうって皆で話したっス。やっぱり、店長が居ないと無理っス! ちなみにあたしが皆を説得して、店長が戻ってこないなら皆でやめてやるってオーナーを脅してるっス!」

「というわけでって、どういうワケだよ!? 俺の意志はどうなっちゃうの! しかも脅迫したらダメだよ!?」


 ツッコミどころが多すぎる。

 まず、俺はクビになった身だ。

 有給使う宣言はしているから、まだ在職中扱いかもしれない。

 というか、オーナーは何の処理もできていないだろう。


 そして、すでに店で働きたい気持ちがない。

 今はダンジョンに専念したい。

 収入面では仕事は必要だけど、数か月は先でいい話だ。


「オーナーはまさかホントに辞めるとは思ってなかった……って言いだしたっス」

「クビって言われたら、辞めるよね普通」


 なんだ、その勝手な言い草は!


 一度切れた気持ちは……なかなか戻らない。

 自由なダンジョン暮らしを続けたい。


 あー。仕事したくねえ。

 仕事が恋人だったというなら、もう破局してしまった。

 今はダンジョンが新恋人になっているんだ。

 ……ほんとの恋人もできたしね。はっはっは!


「だから、オーナーには謝るから戻ってきてほしい……って言わせたっス!」

「言わせたのかよ! 自発的じゃないのかよ!」


 トウコはふざけた表情を改めて、俺の目をじっと見る。


「オーナーは置いといて……。店にはやっぱり店長が必要っス! バイトの皆は店長に……クロウ店長に戻ってきて欲しいって言ってるっス……!」

「いまさら戻ってきてくれと言われてももう遅い……!」


 俺はもうやめた人間だ。

 都合が悪くなったから戻ってきてくれと言われてもな。


そのセリフ(追放ネタ)はもう何回もきいてるっス! でも……それでも戻ってきてほしいっス! 皆が待ってるっス!」


 だけど、やり直しのきかないことなんてない。

 いつだって、やればできる。


 意地を張っても仕方がない。

 ……俺だけの問題じゃないしな。


「もう遅い……こともない。やりなおすチャンスがあってもいい。はあ……しかたないな」


 本当は戻りたくない。

 だけど、バイト達に非はない。

 悪いのはオーナーだとは思うが、元管理職として俺に責任が全くないとも言えない。


「えっ!? いいんスか? マジっスか!?」


 トウコが目を見開く。その目からは涙があふれそうだ。

 トウコがまた俺に飛びかかろうとする。頭を押さえて阻止する。


「……正式には仕事に復帰するつもりはない。だけど、給料の処理くらいはしないとな」

「やったっス! 店長が戻ってくるっス! お店を続けられるっス!」

「おい、ここで跳び跳ねるな!」


 はしゃぎだすトウコをなだめる俺を見て、オトナシさんが笑っている。

ざまぁ展開はほとんどない!?

トウコは8話「おうちに帰るまでがダンジョン探索です! そして続く日常」の電話相手として登場済です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ