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過去から忍び寄るモノ!?

 タイミングをはかったように腹が鳴った。

 深刻な話をする空気ではなくなったな。


「あ、お腹すいちゃいましたよね。直ぐシチューよそります!」


 楽しみにしていた角ウサギのシチューが皿に盛られる。


「さあ、どうぞ!」

「いただきます! おお、うまそう!」


 オトナシさんの用意したシチューが皿に盛られる。

 ほかほかと湯気が立っている。


 スプーンで口に運ぶ。

 一口大に切られたウサギ肉は、スプーンで身がほぐれるほどやわらかい。


「うまっ! 口に入れただけで溶ける! ほどける!」

「熱いですから、火傷しないようにしてくださいねー」


 焼いた時とはまた違う。

 ウサギ肉はさっぱりしていて脂っぽさが少ない。

 その分、シチューの味が染みるというか……。


 野菜は……ジャガイモ、ニンジン、タマネギ。

 これもまたうまい。


「ダンジョンでの戦闘の疲れも、調べ物の頭痛も吹っ飛びますね!」

「畑でとれたトマトとニンジンを使っています。もっといろいろ植えたいですねー」

「畑をもっと充実させるんですか? いいですね!」

「ジャガイモとかタマネギ、サツマイモがいいでしょうか? ハーブも結構使うから植えちゃいましょうか」

「ハーブって、めちゃくちゃ繁殖力強いんじゃ? 大丈夫かな?」


 竹とかドクダミとかハーブはヤバいんじゃないっけ?

 繁殖力的に。


 オトナシさんは首をかしげている。


「増えると何かいけないんでしたっけ?」

「えーと、隣の家に迷惑がかかったりするらしいけど……ダンジョンならいいのか?」


 いわゆるミントテロというやつ。

 増えすぎて根絶できなくなるらしい。


「もし増えすぎちゃったら、燃やしちゃいましょう!」

「……ワイルドな解決方法ですね!?」


 増えるなら燃やしてしまえミントテロ。

 だけど、怖いから鉢植えをお勧めしておく。


「そうなるとコメやムギも植えたくなりますね……」

「おコメは田んぼですよねー。水がたくさんないと難しいです」


 などと、たわいのない会話をして晩飯は終わりとなった。



 翌日。

 早起きしてダンジョンでレベル上げを行う。

 日課の朝練である。


「さて、撒いておいたマキビシはどうなったかな!」


 実験中の部屋や通路を見て回る。


 結果。

 湧き潰し目的でバラまいておいたマキビシは効果を発揮していた!


 マキビシの部屋にはゴブリンは居ない。

 湧かなかった分、他の部屋に多く湧いたりするんだろうか。


 予想通りの結果と言える。

 これを使えば、拠点をより安全にできそうだな!


 ゴブリン一匹なんて大したことはないけど、拠点を荒らされたりしたら腹が立つ。

 俺は殴られたらケガをする紙装甲だから、ゴブリンの攻撃だって効いてしまうし。

 ダンジョンに入った直後に攻撃されて運悪く死亡とか、嫌すぎる。


 俺の所有物をバラまいておけば、湧き潰しが出来そうとわかったのだ。

 確実な効果とまでは言えないけど、やらないよりましである!


「よーし。朝練終わり!」


 朝練は無理のない範囲でやる。

 朝飯に十分な余裕をもって引き上げよう!

 今後、本格的な攻略はオトナシさんと二人で挑むんだ。



「ん……?」


 ダンジョンから外へ出ると、スマホがチカチカと明滅している。

 端末を確認する。

 差出人はバイトの子からだ。


 俺が仕事をやめて――有休扱いになっているかは不明だが――二週間ほど経っている。

 それでも、まだバイトからの質問や相談には対応している。

 だが、オーナーは着信拒否済。話しても意味がないからだ。


「未読、5件。また、いつものオーナーに対する不満連発パターンだろうな」


 「オーナーむかつくっス!」とか「早く戻ってきてほしいっス!」とか連続して送ってくるやつだ。

 急いで返す必要はないだろう。

 とりあえず風呂入ってから考えよう。


 ダンジョンから帰ったら、汗を流す。

 もう習慣(ルーティン)のようなものだ。

 汗臭いとか言われたくない。身だしなみは大事である。


 シャワーを浴びていると、チャイムが鳴り響く。

 今日は荷物が届く予定もないし、俺の家に(たず)ねてくる友人はいない。


 ……友人は社畜時代に付き合いが薄れていなくなってしまった。

 友人ゼロ。ぼっち状態の俺である。


 オトナシさんは壁の穴から出入りするので、チャイムを鳴らすことはない。

 ということは、用のある相手じゃないだろう。

 セールスや勧誘の類なら、急ぐことはない。


 何度かチャイムが鳴る。


「なんだ。しつこいな……ちょっと待ってくれ」


 俺はぶつぶつ言いながらシャワーを出て服を着る。


 今度は、オトナシさんの部屋のチャイムが鳴っているのが壁の穴から聞こえてくる。


「ん。こっちは諦めて隣に行ったのか。やっぱセールスか」


 やれやれ……。

 スマホを手に取って、内容を確認する。


 ――前にお願いしてた件で相談したいことがあるっス。返事くださいっス!

 ――見てます? 返事くださいっス!!

 ――無視しないでほしいっス! 返事くださいっス!!!

 ――スルーっスか……。今から、そちらへ向かうっス!

 ――もうすぐ到着っス! 待っててほしいっス!



「なに!? 到着って……ここにか!?」


 嫌な予感しかしない。

 というか、俺の住所を教えた覚えはない。

 店の書類でも漁ったのか?

 無駄に行動力はあるからな、あいつは……。


「店長ぉー! 居ないっスかー!?」


 間違いない。押しかけてきやがった……!

 しかも、オトナシさんの玄関のドアを叩きまくっている。


 おいおい! 俺の新しい生活を壊さないでほしいぞ!?

なんか来た!

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