表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

164/1445

認識しないといけない。認識し過ぎてはいけない!

「クロウさん!? ど、どうしたんですかっ!?」

「う……?」


 俺は床に倒れている。

 オトナシさんが必死に俺を揺さぶっている。

 なんとか身を起こし、頭を押さえる。


「いてて……頭いてえ……」

「だ、大丈夫ですか? 具合悪いんですか!?」

「いや……ちょっと調べ物をしてて。急に頭痛がして……」


 考えると頭痛がひどくなる。


 ――考えるな。

 ――ここでは、考えてはダメだ。


 オトナシさんが不安げな表情で俺を見つめている。


「病院行って診てもらいますか?」


 これは、病気じゃない。

 病院に行っても治らないだろう。


「いや……ダンジョンへ行きましょう。……頭痛にも効くのかな、ポーションって」

「あ、そうですね! じゃあ、私のダンジョンに行きましょう! 歩けますか?」

「大丈夫。ありがとう」


 それでも、少しふらついた。

 オトナシさんに支えられながら草原ダンジョンに入る。


 転送門を通り、ダンジョンに入る。

 とたんに、頭痛はおさまった。


「あ、頭痛治ったな……」

「……よかった! もう! びっくりしましたよ!」

「すいません。ちょっと、予想外のことが起きて……」


 俺はさっきの出来事を覚えている。思い出せる。

 オトナシさんに、いま起こったことを打ち明ける。


 リアダンを調べて、激しい頭痛に襲われたこと。

 リヒトさんの書いていたこと。

 ダンジョンの品物を売ろうとすることを止めようとしていたこと。

 ダンジョンによっては死んでもリスポーン可能な場合があること。

 そのあとの読み取りにくい部分のこと。


「そんな怖いことされちゃうなんて……」

「外でリアダンのことを考えたり調べると意識が攻撃される感じですね。たぶん、ストーカーが言っていた禁則事項の関係だと思います」


 あのサイトはヤバい。

 知ってはいけない情報が含まれているんだ。


 リアダン自体は便利なサイトだ。

 悪意はない。攻撃する意図で書かれたものじゃない。

 管理人のリヒトさんもいい人だとも思う。

 だけど、扱っている情報が強すぎる。


 おそらく禁則事項に触れすぎているんだ。

 ダンジョンやスキルの情報を隠そうとする謎の力……強制力。抑止力。

 禁忌を侵しているかのようだ。

 ダンジョンやスキルについては触れてはいけないタブーなんだろう。


「でも……前は頭を痛くされたり、そういうの大丈夫だったんですよね?」

「いや、思えば前もちょっと……疲れのせいだ思ってましたが違いますね。その時は普通に記憶を書き換えられていたんだと思います。今回はそれに抵抗しようとしたから、こうなったのかもしれない」


 前回は、リアダンのことをしばらく忘れさせられていた。

 今回は、認識を強く持っていたために抵抗できた。

 ……抵抗できてしまった。


 そのせいか今回はこれまでよりも反応が強かったのだろう。


「え? 抵抗したら普通より酷いこと、されちゃうってことですか?」

「たぶん。あるいは、俺側の問題かもしれない。あのサイトの情報を、ダンジョンの情報だと確信して読もうとしているんです。心境の変化というか、前よりもっとしっかりと認識してしまっているから……」

「それって、クロウさんの気持ちがわかるの!? だからすごーく頭を痛くさせて記憶を消そうとしたってことなんですか?」

「そうだと思います」


 リアダンはゲームの情報のていで、ダンジョンとは関係ない情報として書かれている。

 掲示板でもそういうフリをしてやりとりをしている。

 だが、俺の心境が変わってしまって、軽く受け取ることはもうできない。

 完全にダンジョンの情報だと確信してしまった。


 そして、ストーカーの事件のせいだ。

 謎の情報統制、強制力のようなものがあると認識した。

 そうとわかって情報を得ることが、記憶の改ざんのトリガーになるのかもしれない。


 良くも悪くも認識の問題だ。

 認識しなければ、知ることも考えることもできない。

 認識してしまえば、記憶を消されてしまう。


 ダンジョンのことを人に知られるのはタブーだ。

 だが、人に聞いて知ってしまうこともタブー。


「もう、調べるのやめた方が……クロウさんに何かあったら、私、心配で……やっぱり、危ないからやめた方がいいと思います!」

「そう、ですね。今は……。リヒトさんもこちらを心配していたようですし、あまり調べるのもやめておきます」


 リヒトさんは「今の段階では」と言っていた。

 つまり、次の段階がある。


 読み取ることができなかった情報は抜けてしまっている。

 けど、ダンジョンの深層を目指すように示されている。

 そこで、何かが得られるはずだ!


「無理して調べるのやめてくださいね!」

「そうですね。外で調べるのはやめておきます。でも、ダンジョンの深層を目指してみたいと思います!」

深層(しんそう)? ダンジョンをどんどん進むんですか?」

「リヒトさんは、まずは一定の階層を攻略するように言っていました。それが十階なのか五十階なのかはわかりませんが、やるだけやってみようと思います」


 俺のダンジョンの深さがどれほどあるのかはわからない。

 リヒトさんの言い方からすれば、一定階層の先、深層があるはずだ。


「それじゃあ、私もお手伝いさせてください! 絶対に一人で無理なことしちゃダメです!」

「はい。ぜひお願いします」


 ……今日ちょっと無理して死にかけたなんてことは到底言えないな!

ご意見ご感想お気軽に!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ