麻痺毒の効果は期待通りです!?
四階層。毒の検証のためにゴブリンを探す。
クナイと棒手裏剣に即効麻痺毒を塗りつける。
どのくらい即効性があるのかがキモだ。
そして、一撃でどの程度の効果があるのか。
「のんきに歩いているゴブリン発見! いざ、検証!」
四階層のゴブリンは四体だ。職業のない普通のゴブリン。
六階層と比べると弱いので、こいつらに通用したからと言って同じとはいえない。
だが、ある程度は毒の効果がわかるだろう。
隠密状態から麻痺毒を塗った棒手裏剣を投擲する。
前を歩く三匹にそれぞれ一本の棒手裏剣が命中する。
それぞれ、腕、足、胴体へ命中する。狙い通りだ。
「アギャア!」
「ギギッ!」
ゴブリン達が悲鳴を上げる。
足に命中したゴブリンは転倒する。だが、死なないし動いている。
腕と胴体のゴブリンは傷口をおさえるような動作をしている。
倒れたりはしないようだ。
俺は【隠密】を解かずにそのまま物陰で観察する。
「……ゴブ……」
「ギ……」
しばらくすると、胴体に命中したゴブリンは座り込んでうつむいている。
足に命中させたゴブリンは立ち上がろうとして、できずにいる。
腕のゴブリンは腕を押さえて立っている。
無傷のゴブリンは混乱してうろうろしている。
「効果を発揮するまで十秒程度か。ちょっと長いな。動きが鈍る感じか」
さらに、同じ個所に棒手裏剣を投擲する。
今度は動きを止めているから狙うのはもっと簡単だ。
ゴブリンが悲鳴を上げる。
手加減して投げているから、投擲だけで倒してしまうことはない。
さらに五秒ほど待つと、胴体のゴブリンが横たわって動かなくなる。
立ち上がれないようだ。
両足に被弾したゴブリンは立ち上がれないが、上半身は動かしている。
両腕に被弾したゴブリンは、座り込んでいる。
「二発当てればおおむね動かなくなるな。いいぞ」
俺は【隠密】を解いて姿を現す。
無傷の一匹が俺に気づいて歯を剥いて威嚇してくる。
「ゴブアア!」
「よし、来い! お前はクナイで切らせてもらう!」
麻痺した仲間たちを置いて、一直線に俺に飛びかかってくるゴブリン。
俺はやすやすと攻撃を回避して、すれ違いざまに胸を切り裂く。
クナイには手裏剣よりも多くの毒が塗ってある。
サイズの分だけ、毒の量は多くなる。
さて……どうだ?
「ギギ……」
ゴブリンは切られた胸を押さえて、何歩か歩いて立ち止まる。
手加減したので傷は致命傷ではないはずだ。
ゴブリンが膝をついて倒れる。
およそ八秒。手裏剣一発よりはちょっと早い。
ここのゴブリンなら、一撃入れれば十秒もあれば無力化できるはずだ。
さて……効果時間はどうだろう。
最初の三体はまだ動かない。立ち上がらない。
しばらく観察する。
検証のためとはいえ、なにか非人道的な感じがする。
だが、相手はゴブリンだ。モンスターだ。
罪悪感は感じないのだが……。
「グェェ」
「ググゥ……」
三十秒ほど経っても、まだ立ち上がるゴブリンはいない。
「なんとなく……悪役感がしちゃうんだよなー」
忍者のダークサイドに落ちてしまった……。
俺の手はもう汚れちまったぜ!
一分ほどで、ゴブリン達が立ち上がり始める。
その動作はのろのろとしていて完全に抜けてはいない。
その三体へ毒を塗っていない手裏剣でとどめを刺す。
再び【隠密】して姿を消した俺は最後に残った一体を観察する。
一分ほどで立ち上がって歩き出す。
さらに一分ほどでほとんど普通に動き回るようになる。
胸の傷のために多少鈍って入るだろうが……麻痺の効果は長くは続かないようだ。
「ともあれ、一分も動きを鈍らせられるなら充分だぜ!」
【隠密】を解いた俺に、ゴブリンが突っ込んでくる。
学習も警戒もしない原始的なゴブリンは楽でいい。
「ファストスラッシュ!」
今度は深く胸を切り裂く。
ゴブリンが絶命し、塵と化す。
「よし! 麻痺毒は充分つかえる!」
これで、六階層の荷物が回収できるぞ!
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