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ミスのあとは冷静にならないと、とんでもないことに!?

前回のあらすじ

「目がぁー グワーッ!」


・閃光+轟音の罠による視力聴力の一時喪失

・音に引き寄せられてゴブリン2チーム

・自律分身がボコられて解除する

・ダメージフィードバック。燃やされる。ナイフで刺される。盾で殴られる。

・魔力酔い


色々食らってる……!

 俺はからくも階段へとたどり着いた。

 ここは安全地帯だ。

 敵は来ない。

 瞑想しながら体を休める。



「どうするか考えよう。帰るか、もう一度戦うか……」


 判断分身に背負わせていたリュックサックは宝箱の部屋に落としたまま。

 リュックサックに自律分身用の装備であるトンファーや鎖分銅も入っている。


 自律分身が使った忍者刀も回収できていない。


 俺の持ち物だからダンジョン内ですぐに消えることはない。

 そのはずだ。

 だが、ゴブリンがそれを拾った場合はどうなる?


 ゴブリンの持ち物になってしまうのか?

 ゴブリンの所有物とみなされたなら、消えてしまう可能性もある。

 落としたり忘れたりしたら……。


 ゴブリンを倒したとき、その武器も塵となって消える。

 ゴブリンと武器はセットだ。

 俺の武器を拾った場合にもそうなる可能性は捨てきれない。


 つまり、ゴブリンを倒す前に武器を奪えばいいのか?

 これまでにもゴブリンの武器を倒す前に落とさせたりしたことはある。

 その場合もゴブリンを倒せば塵になっていた。


 一度ダンジョンの外に出て、出直すのでは時間がかかりすぎる。

 忍者刀はこれまで苦楽を共にしてきた相棒(バット)の生まれ変わりだ。

 材料やスキルを揃えるのだって苦労したんだ。


「――回収しよう。せめて、忍者刀(ルーシー)だけは取り戻したい!」



 視力も聴力も回復した。

 魔力はだんだん回復してきている。

 負傷はない。体力はもう万全だ。


 【自律分身の術】はクールダウン中で使えない。

 最大の手札はない。

 でも、さっきの場面で使わなければ俺がやられていた。

 使いどころはあれでよかった。


 負傷した状態での意識のフィードバックは、思った以上にキツかった。

 でも、自律分身が殺されるよりはマシだったはず。


 今でも、火で焼かれる熱さ、痛みが残っている。

 冷たいナイフが肉に埋まる感覚……なぜか熱いと感じた。

 流れ出る血が身体を伝う……。


 俺自身が負傷したこともある。

 ストーカーに背中を刺されて失血死寸前だった。

 あの時の傷みは、じわじわと命が流れ出ていくような感じだ。

 それと比べると……瞬間的にはこちらのほうが痛い。


 意識のフィードバックは完全ではないから、痛みも減っている。

 だけど、痛みと恐怖は想像を絶するものだった。


 何度も何度も攻撃を受ける……受け続ける。

 そんな状態ではまともに戦えない。



 ゲームのようだけど、このダンジョンはリアルだ。

 俺にとっての現実だ。

 痛みや感覚は、ダンジョンの外でケガすることと同じだ。


 ヒットポイントが減るだけ、数字が減るだけじゃない。

 そもそも俺にはファンタジー的な防御力も耐久力もないんだ。

 普通の人間と変わらない。



 ケガをすれば血が流れる。

 そのままいけば死ぬ。


 それはわかっている。

 だから油断はなかったはずだ。

 ちゃんと警戒して、宝箱から距離を取っていた。

 それでもこのありさまだ。


 このダンジョンは殺意が高い。

 たまに、本気で殺しにかかってくる。


 思えばボスコウモリは強すぎだったし、今回の罠も普通なら回避不能だ。

 罠を事前に発見するスキルや解除するスキルがある前提なんだろうか。

 そうは思えない。


 罠を食らっても倒せる戦闘能力がある前提なのか?

 六階層だから適正レベルに俺が足りていない可能性はある。

 それにしても、目と耳が使えない状態で多数相手に立ち回れる気はしない。


「まさか、死ぬ前提なんてことないよな?」


 ゲームや創作ではダンジョンの中で死んだ場合、復活できる場合がある。

 デスペナルティがあるかもしれない。

 装備品を失う(ロスト)。あるいはレベルや経験値が失われる。


 これを前提にしているなら、死んでも本当には死なない。


「でも……試しに死んでみることはできない」


 前にも考えたことだ。結論は変わらない。

 死なないように安全第一で攻略を進める。


「何か新しい手が必要だ。中級忍術は取得のコストが重くて実用的なレベルにできない……となると」


 今あるスキルのレベルを上げるか。

 【忍術】で後回しにしたものを取得するか。


 残ポイントは3ある。


 【反発の術】【吸着の術】あたりも使い方によっては戦えそうだ。

 でもしっかり検証しないと使えない。



 ならば……今こそ、封じ手にしてきたアレを取る!

 効果が予測できて、強いと確信しているスキルだ。


「ついにこれを使う日が来ちまったか……」


 ポチり。

 ステータスウィンドウから【毒術】を選択する。

 レベルは一気に2まで上げる。


 残ポイントはゼロだ。



 --------------------

 【毒術】

 毒の調合、使用するための知識を得る。

 原料と魔石を消費し、毒を作成する。


 レベル1:簡易な毒を作成

 レベル2:普通の毒を作成

 レベル3:複雑な毒を作成


 レベル3への必要ポイント:4

 --------------------



 さて、クラフトだ!

 さいわい、 五階層と六階層をつなぐ階段には、要らない荷物が置いてある。

 いざという時のための補給スポット、中間キャンプだ。


 一階層の拠点ほど充実していないけど、最低限の素材はある。

 準備しておいてよかった。


 【薬術】の場合は、薬草を素材にいろいろ作れた。

 【毒術】もきっとできる。


 ダンジョンの外なら、毒物を手に入れることもできるだろう。

 だけど……ヤバい人になってしまう。

 毒の素材をネットで買ったり毒草を摘んだり育てたりするのは、ちょっと遠慮したいんだよね。


「作成可能なリストは……」


 【毒術】も【薬術】と同じように親切設計だ。

 作成できる毒物のリストが表示される。

 毒と薬は表裏一体なんだな。

 使い方も似た感じだ。


 とりあえず薬草と魔石、水を対象に【毒術】でリストを表示させてみる。


「お、やはり薬草万能だぜ! 腹下し……麻痺毒。これだな!」


 即効、遅効、強力も選べる。さらに粉末と液体が選べる。

 【薬術】と違って丸薬じゃないんだな。


 まあ、丸薬を敵に飲ませるのは無理がある。

 粉末ならさらさらーっと風に乗せることができそう。

 投げモノに加工すれば、投擲もできる。


 液体にすれば、武器に塗りつけることができるだろう。

 手裏剣やマキビシ、クナイに塗りつければいい。


 腹下しは、いわゆる下剤だろう。

 戦いの前日に水源に毒を投げ込んでおくとか、そういうこともできそうだ。

 ゴブリンは水飲んだりするんだろうか。

 どっちにしろ、今できることじゃない。


 ここは麻痺毒一択だ。

 そして、液体で即効性にする。


 材料から光が集まっていく。薬草ひとつ、魔石五つだ。

 光が空中に集まる。

 粘度の高い黒っぽい液体が生成されて――階段の床に落ちる。


「――うおっと! いれ物はないのかよ!」


 俺は飛びのいて回避する。


 液体にしておいてよかった!

 粉末だったらうっかり吸い込むところだ。


 【薬術】の場合は丸薬だから、困らなかったんだな。


 毒を使う時はマスクをしておいたほうがいいな。

 いつもは投げモノを使う時しかしていない。

 ゴーグルを常にしているのは視界を妨げるし……見た目がね。


「さて、いれ物を用意しよう……忍具作成!」


 ペットボトルの水を飲み切って【忍具作成】で容器に加工する。

 インク壺のような感じだ。


 こぼれた麻痺毒をクナイで空の容器に移す。

 ちょっと減ったけど、まあしょうがない。


 クナイには毒液が付着した状態だ。

 棒手裏剣数本分にはなる。


「次回は、容器に入った状態で作成されるように工夫しなきゃな……」


 どの程度の効果があるのかは不安だ。

 効き始めるまでの時間、痺れの強さ。


 現実の麻酔銃だって、何発も撃ち込んだりするからな。

 それが、どの程度必要かを知っておく必要がある。


 というわけで、これは試さねば。

 あまり時間をかけると装備が失われるかもしれない。

 だが、最低限の検証は必要だ。


 なにより、命が大事だ。

 自分の命を守る。そのための時間は惜しめない。

 死んだらお終いだ。

 安全第一で行くんだ!


 俺は検証のため、四階層へ向かった。

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