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五階層再訪! 復活のコウモリ!

 俺は五階層のボス部屋前、巨大な扉の前に立っている。

 ボスを攻略したのは五日ほど前だ。

 普通のモンスターや宝箱は一日で再配置(リポップ)する。


 しかし、ボス戦の翌日に来た時には、まだリポップしていなかった。

 ボスは一度きりで、二度と湧かない可能性もあるが……。


 今日はその確認だ。もちろん、湧いていたら再戦する!


 装備はコウモリ用に準備してある。

 各種丸薬を飲んでブーストしておく。

 ――巨大な扉を押し開ける。



 二回目だからといって、敵が弱くなるわけではない。

 俺が劇的に強くなったわけでもない。

 違いは経験だ。

 大コウモリと戦って勝ったという経験だ。


 同じ敵と戦うなら、俺は負けない。

 なぜなら、忍者に同じ手は二度通用しないからだ。


 バッチリ対策した俺は強い。


 違うボスが湧いてる、というパターンはないはずだ。

 俺のダンジョンはランダム性が低い。

 宝箱の位置すら固定だし、中身も毎回同じだ。


 ザコ敵の配置はランダムと言えるけど、湧いてから動き回るだろうからな。


「ま、考えてもしょうがないことは気にせず! いざ突入!」



 五階層にはザコ敵はいない。

 広い地下空間を進む。

 滝の前の広場あたりまで進む。


 そして……現れた!


 「キィィィィ!」

 「来たな!」


 ちゃんと湧いた。そして、ちゃんと大コウモリだ。


「やはり、お前だな!」


 個体の差も見た限りはない。

 あいかわらず巨大で、羽ばたく姿は俺に威圧感を与える。


 だが、初見の時ほどの衝撃はない。

 デカいが、倒せる。



「判断分身の術! 俺に追従しろ!」


 二体の分身を生み出す。


 まずは、ただついてくるように条件を与える。

 細かい指示は必要に応じてする。

 条件を与えるより、直接操作したほうが早い場合はそうする。

 普通の分身のように扱いつつ、移動の操作を省くためだ。


 前回は戦いの前に荷物を置いたのが失策だった。

 だから、一体目の分身には、リュックサックを背負わせることにする。


 そして、二体目の分身には、(ワイヤー)分銅を持たせる。


 今回、自律分身は温存して戦う。

 必要になったら出す。


 なぜなら、このあと六階層を攻略するからだ。

 ここは通過点……。

 舐めプレイではなく、普通に勝つつもりだ。



「そして初手(しょて)で……逃げる!」


 ひらけた場所での戦いは不利。

 滝前の広場から、巨石の場所まで撤退する。


 コウモリがこちらに気づいて追いかけてくる。

 移動速度は俺よりも速い。追いつかれる。


 すかさず、俺は分身を操作する。


「分身! クス玉だ!」


 リュックサックから取り出したクス玉が投げ上げられる。

 そこへ棒手裏剣を投擲。クス玉が割れて、色とりどりの紙吹雪が舞う。


 コウモリ対策のチャフ。

 反エコーロケーション(アンチ反響定位)だ!


「キィイ!」


 大コウモリはこちらを警戒したのか、紙吹雪を避けて旋回する。

 個体は違っても、慎重さは変わらずか。

 だが、別個体のはずだ。

 こちらの手の内はわからない。


 俺と戦った経験は、相手側にはない。

 つまり、俺の攻撃方法を敵は知らない。


 だから、初撃で大ダメージを与えれば簡単に勝てる。

 そのはずだ。



 俺は巨石前までたどり着く。

 コウモリは紙吹雪に危険なしとみて、勢いよく突っ込んでくる。


 コウモリの飛行能力は高く、巨石や地面にぶつかることはない。


 地面すれすれの低空飛行だ。

 しゃがんでも、跳んでも回避の難しいコース。

 横へ移動することも難しい。


 ――前に見た攻撃だ。対策はある。


 忍者刀を抜いて、峰側を前に構える。

 前回はナタやクナイで挑んでいたが、今回は武器が違う。

 リーチが違う。壊れかけていたバットのように温存する必要もない。


 コウモリが迫る。

 俺は巨石を蹴って、高く前へと跳ぶ。


 コウモリが俺を迎撃しようとコースを変える。

 凶悪な顔が、俺を睨みつけている。

 コウモリは牙をむいて、けたたましい声を上げる。


「キィィィィ!」


 空中で衝突する寸前――

 俺は空中で身をよじりながら忍者刀を振るう。


「――フルスイング!」


 空中で横回転しながら振り下ろした刀の峰がコウモリの顔面を捉える。

 俺が当たり負けして吹き飛ばされるはずのところを、スキルの効果……ノックバックが発生する。


「ギィッ!」

()ちろ!」


 コウモリは下方向へと吹き飛ばされる。

 コウモリ自体の飛行の速度と慣性はそのままに、コースを無理やり下方向へと変える。


 俺は素早く、待機していた分身たちを操作する。


「分身! ワイヤーを張れ!」


 鎖分銅の先端を、二体の分身が握っている。

 硬く鋭いワイヤーをピンと張る。


「ギィイィィァァ!」


 ゴールテープのように張られたワイヤーに、コウモリが突っ込んでいく。

 ひっかけた翼が大きく切り裂かれる。


 勢いに分身達は吹き飛ばされる。

 だが、与えた命令……ワイヤーを張ることを忠実に守り続ける。分銅は離さない。

 これまでの分身と違って、すぐには消えずに耐えている。


 分身を引きずったまま、コウモリが地面に激突する。

 さらに、バウンドして巨石へと頭から突っ込んでいく。

 分銅を握ったままの分身は、そのまま巨石に叩きつけられ、塵と化す。


 俺は空中に打ち上げられた後、巨石の()()()着地している。


「とどめだっ!」


 巨石を駆け下りて加速し、コウモリの頭部に上段から刃を振り下ろす。

 加速と落下速度と俺の全体重をかけた一撃が、コウモリの頭蓋へとめり込む。


 頭部を縦に断ち切られたコウモリが、声もなく地に伏せる。

 そして……コウモリは塵となって散っていく。


 俺は生成された魔石を空中でつかみ取る。


「よしっ! 勝った!」



 普通に分銅を投げてもかわされる可能性がある。

 そこで自分をおとりにして引き寄せ、ノックバックでコースを変える。

 ワイヤーの強度と分身の自重による切断力。

 コウモリ自体の突進の勢いを巨石へぶつけさせる配置。

 バッチリと決まったぜ!



<経験が一定値に達しました。レベルが上がりました!>


「おお! レベルアップのおまけつきだぜ!」


 二戦目となれば、強敵も簡単に倒せるのだ!

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