立ち上がれルーシー! 新武器試し切り!
GWだし二話投稿!
オトナシさんは夕食の準備に取り掛かっている。
俺はその間、一人でクローゼットダンジョンへ潜っている。
展示ラックにかけておいた忍者刀を背負う。
相棒だったバットを元に作った忍者刀。
これは相棒の生まれ変わりだ。
新ルーシーの試し切りに行こう!
第一階層のゴブリンでいいだろう。
「よし! ルーシー復活戦だ!」
刀は背中に背負っている。
壁を走りながら、抜刀する。
忍者刀の反りは小さい。だから、ふつう背中に差したら抜けない。
刀身の長さと腕の長さの関係上、鞘から抜け切れず引っかかるのだ。
しかし俺の鞘なら問題ない。
鞘の上部がスリットになっているから、そのまま抜ける。
スリット部分はある程度の締め付けがあるので、勝手に抜けることもない。
俺の場合は飛んだり跳ねたり宙返りしたりする。
激しい動きをしてもすっぽ抜けないような作りにしている。
「うん。抜刀は問題ない。重さもちょうどいい」
バールを持って壁を走ると、ちょっと重い感じがしていた。
持っている側に重心が偏って、バランスが崩れる。
この刀なら、バットに近い重さだ。バランスもいい。
壁を足場に踏み切って、宙返りをする。
空中で刀を振ってみる。
バットやバールよりも、素早く振れる。
空気を裂くような感じだ。
「いいね! 手に馴染む!」
片手で振ってもいい。
両手で振っても様になる。
忍者刀は日本刀だから、両手で構えると様になる。
剣道のような構えだ。
でも、俺の持っているスキルは【片手剣】だ。
基本的には片手で使う。
忍者刀は普通の刀より短くて軽いので、片手で問題なく扱える。
俺の場合は微力ながら【身体強化・筋力】もあるしな。
「ファストスラッシュ!」
片手剣のスキルも当然、発動できる。
鋭く、素早い斬撃がくり出せる。
刀を手の中で持ちかえる。逆刃、峰を使う持ち方だ。
俺の忍者刀の最大の特徴。
それは――峰が分厚く、打撃武器として扱える両面武器であること。
ナタではみねうちが打撃武器として判定された。
この忍者刀でも、そうなるはずだが――
「フルスイング!」
打撃武器のスキルが発動する。
よし、想定通り!
フルスイングも問題ない。
強い横振り攻撃であれば、片手でも発動できる。
俺の主力の武器スキルはどちらも使用可能だと確認できた。
第一ゴブリン発見!
俺は壁を走りながら、すれ違いざまに斬撃を加える。
「うりゃあ!」
「アギャァ!」
ゴブリンの喉を深く切り裂く。
首が飛んだりはしないが、充分な威力だ。
一撃でゴブリンが塵と消える。
「威力も充分だな!」
【片手剣・威力強化】もちゃんと乗っている。
派手に首を吹っ飛ばしたいが、俺は刀の達人じゃないからな。
実際に首や胴を真っ二つにするのは簡単ではない。
たとえば、切腹するときに首をはねる係がいる。
腹を切っても即死しないから、介錯が必要なのだ。
だけど、これが難しい。
下手な介錯人は、一度で切り損じたり刀を曲げてしまったりする。
首を斬るというのは、かなりの高等技術なのだ。
すぐにはできない。
武器のせいではなくて、俺の技量が足りていない。
練習するか、スキルのレベルを上げればいつかできるだろう。
「せっかく刀を使うんだし、練習あるのみだな!」
洞窟を走り抜け、ゴブリンを狩っていく。
刀では、これまで使ってこなかった攻撃方法ができる。
突きだ。
バットやナタでは突きはできない。
忍者刀の先端は鋭い。
そもそも忍者刀は直刀に近いので突きに適する。
片手に持つので剣道の突きとは違う。
右手を突き出すような形になるな。
左手を前に構えて、右手を突き出しながら左手を引く。
空手の正拳突き。
ボクシングの右ストレート。
あるいは新選組のアノ人の有名な技みたいな……。
片手一本突きみたいな感じだな。
これまで分身にさせていた腰だめ突撃とは違う。
あれはどっちかというとドスを構えた鉄砲玉だ。
これはこれで、素人でも仕損じない攻撃方法だ。
分身ならいいけど、スキが大きいから本体ではできない。
俺が使うなら、片手一本突きだな。
カッコよさも大事!
ゴブリンに走りながらの突きを繰り出す。
俺の移動速度は速い。ゴブリンは反応できない。
【歩法】のおかげで足運びはスムーズ。攻撃のタイミングもバッチリ。
さらにスキルを併用すれば――
「ファストスラッシュ!」
突きでも、ファストスラッシュは発動する。
突き込んだ刀身はゴブリンの胸を貫通して背中へ抜ける。
即死して、ゴブリンは消え去る。
俺はそのまま反対側へ走り抜ける。
「おお、これは囲まれたときに便利かもしれないな!」
囲まれたらフルスイングでぶっ飛ばしてもいいけどね。
この武器なら、多彩な戦い方ができる。
忍者刀、いい感じだ!
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