肉祭り! 狩りのあとは宴だ!
角ウサギ狩りを終えて、草原ダンジョンの初期エリアへ戻ってきた。
大きな木の下、オトナシさんの拠点だ。
腹減ったな。
もう昼飯時だ。
運動もしたので、腹ペコである。
サバンナエリアで狩りをしながらスライムゼリーをつまんでいたので、まだ我慢はできる。
ゼリーは水分とエネルギーが補給できてなかなかいい食材だ。
「腹減りましたね! さっそく、ごはんにしましょう!」
「クロウさん、何が食べたいですか?」
「ウサギの肉ってどうするのがいいのかな? シチュー?」
「いいですね! 煮込むのでちょっと時間かかりますけど……」
「じゃあ、作ってもらってる間に俺は別の料理作りますね。手頃なヤツを」
「はい。お願いしますね! 私も腹ペコです!」
手分けして料理を始める。
さて、料理だが……。
俺が作るのはシンプルに、ウサギ肉の串焼きだ。
まずは料理するための準備が必要だな。
当たり前だがウサギ肉は外へ持ち出せない。
部屋に戻って調理することはできない。
「というわけで、カマドを作ろう。それと、燃やすための木を集めなきゃな」
「あ、カマド助かります! いつもは手に持つか、下に置いてたんですよねー」
朝ごはんの野菜炒めはエア調理だったな。
手に持ったフライパンを空中に浮かべた火球で熱するスタイル。
煮込み料理の場合、土の上に置いてずっと魔法で火にかけるんだろうか。
「とりあえず、簡易的に作っときますね。魔石が集まったら、もうちょっとマシなの作ります」
「はい!」
さいわい、このダンジョンには石も木もある。
必要な素材を集めて簡易的なカマドを作るのだ。
設置場所はオトナシさんと相談して決めた。
【忍具作成】でも作れるが、今は魔石が少ない。
とりあえずは手作りである。
石を積み上げただけの原始的なカマドだ。
半円状に積み上げてある。
上に鍋を置くこともできる。
シチューの仕込みが終わったら、ここで作れるはずだ。
串は上で焼いてもいいし、手前に刺して炙ってもいい。
「よし、こんなもんでいいだろう」
出来上がったカマドの中に、拾ってきた乾燥した木の枝をくみ上げる。
着火はオトナシさんに頼もう。
さて、串はどうするか。
普通に削って作ってもいいが……ここはスキルで手間を省く。
串なら、魔石のコストも軽い。
棒手裏剣が作れるんだから、串が作れてもいい。
当然作れる。串を武器にする忍者だっている。
少し長めの串をイメージする。
カマドに渡して直火で焼くので、串は少し長めだ。
――忍具作成!
「よし、串の出来上がりっと!」
調理器具を借りて、ウサギ肉をぶつ切りにする。
ウサギ肉は赤みのある肉だ。
それを串に刺していく。
ドロップした肉を二つ分で、四本の串肉ができた。
畑から収穫した野菜も切って、串に刺す。
ちょっとしたバーベキューだな。
「用意できました。火、お願いします!」
「はーい。ファイアボール!」
カマドに火がつく。一発で着火完了だ。
キャンプとかだと火をつけるのが一苦労だからな。
便利である。
「仕込みはできましたが、煮込むのに時間がかかるのでシチューは晩ごはんにしましょう。お昼はクロウさんの串焼きですね!」
「じゃ、上で焼きますね。火加減はいい感じにお願いします!」
まあ俺の料理といっても、切って刺しただけだ。
味付けは軽い塩コショウのみ。
足りなかったら足すスタイル。
素材の味を味わいたいから、最小限の味付けでいいのだ。
カマドの火で、ウサギ肉が炙られる。
肉から滴った脂がじゅうじゅうと音を立てる。
香ばしい香りが食欲をそそる。
「おお、うまそう!」
「いい感じですね!」
野菜は火力の弱い外側で焼く。
「俺はよく焼くのが好きですが、オトナシさんはどうです?」
「私はミディアムウェルダンくらいですね! そろそろいい加減です!」
オトナシさんは前にウサギ肉を食べたことがあるみたいだ。
待たせるのも悪いし、俺も合わせてみるか。
正直、もう待てない。
「じゃ、俺もこれくらいで食べてみますか!」
肉はいい具合に焼けている。
「では、いただきまーす!」
「いただきます!」
ほかほかの肉を口へ運ぶ。
さて、期待通りの味だろうか――
ウサギ肉はやわらかい。
草っぽくない。臭みもない。
肉の甘みが口の中に広がる。
「う、うまい! これは、期待以上……!」
「おいしーい! 甘みがあって……コクがあってホントにおいしいです!」
脂っぽくない。それでいてパサパサしない。
だからどんどん食べられる。
鶏むね肉に近いけど、もっとコクというか……旨味がある。
表面はパリッとして、中はしっとりとやわらかい。
素材の味だけでしっかりと旨味がある。調味料なしでも食べられそうだ。
「しかしここに塩! ……甘みが際立って……これもまたいい!」
「やっぱりおいしいですね! ウサギさんはチクっとされちゃうので、久しぶりに食べられてうれしいです!」
「チクって……グサって感じじゃないんですね」
「チクっとグサっの間くらいかなあ……」
ちょっとわからない尺度だけど……大丈夫ならいいのか。
「ははは……。まあ、大丈夫ならいいんですが、気を付けてください」
「そうですね! また一緒にとりに行きましょうね!」
野菜もやっぱりうまかった。
大満足のバーベキューとなった。
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