近距離攻撃を強化しようとした結果……? 【スキル取得】
「よし、スキルを取るぞ!」
温存していたスキルポイントを使って、コウモリ対策をする!
今、レベルは四まで上がっている。
ゴブリン達を乱獲した時点で三に。
さっきのコウモリ達でもう一つ上がったのだ。
すぐにスキルを振っておけば、さっきのコウモリ戦で楽をできたかもしれないけど。
レベル三になったとき、すぐスキルを振るか悩んだのだ。
【隠密】と【投擲】を試してからにしようと思っていた。
実際、課題は見えてきたのでポイントを残しておいた価値はある。
まあ、結果論だ。
どちらがよかったかはわからない。
レベルが上がってもステータスは上がらないようだ。
敏捷はBのまま変わらず、素早くなった体感はない。
ほかのステータスも同様だ。
変化は感じない。
まさかレベル上がっても強くならないのか……?
いや、そんなことはない!
レベルが上がることで、スキルポイントが増えるのだ。
1レベル当たり、5ポイント増える。
レベルアップでステータスが強化されないとしても、スキルは育つ。
身体能力を高めるなら、前に取得せずに見送った【身体強化】系統のスキルを取ればいいはずだ。
考えること、試したいことが多すぎる!
次のスキルを取るタイミングが難しいんだよな。
気にせずにどんどん取っていけばいいじゃないか、とも思うんだが。
しかしスキルは、ちゃんと確認しながら取っていきたい。
一つ一つをおろそかにしないほうがいいんだ、こういうのは。
だって、最初から楽をしているんだからな。
ダンジョンでは、簡単に力が手に入る。
忍者漫画のような修行をしなくてもいい。
成長の早い小さな苗木を毎日飛び越えて、成長に合わせて高く飛ぶとか。
長いハチマキが地面に垂れないように走るとか。
そんな苦労をしなくても簡単に力が手に入る。
先達の忍者たちに、申し訳なくなるくらいだ。
俺がやるのは手に入った力を確認すること、使いこなすことだけだ。
大した手間じゃあない!
さて。見つかった課題をふまえてスキルを取ろう!
今、残ポイントは10ある。
「まずは身体能力の底上げ! 【身体強化・敏捷】【身体強化・筋力】【身体強化・体力】を取得!」
なぜか【身体強化・知力】は選べなかった。
頭を使っていないわけではないはずなのだが……解せぬ。
忍者にだって知力は必要だろう!?
「それから【暗視】だな。暗くて見えないのが問題だ。見えてしまえばやりようはある」
忍者たるもの暗闇は味方につけなければならぬ。
見えないでつまづいてる忍者とかダメだ。
敵を先に見つけることは命にもかかわってくる。
コウモリ戦で身に染みた。
とにかく、もう痛い思いをせずに行きたい。
コウモリにやられたケガはまだ残っている。
ケガは自然に回復しないし、回復薬もない。
慎重に行かなければ。
一階では【隠密】と【暗殺】でステルスキル特化でやってきた。
これは充分強い。
だが、見つかってしまえば戦闘は避けられない。
そうなったときにステルス特化では身を守れない。
そこで【回避】をはじめとした身を守るスキルで防御を固めていく。
「【回避】【受け身】【危険察知】だ。敏捷に頼って避けるだけでは間に合わない。忍者らしく避けまくっていきたい!」
敏捷のステータスのおかげで、かなり素早く動くことができる。
だが、それだけでは限界がある。
その助けとなるような【回避】には期待大である!
敵の攻撃をスイスイ避けて無傷で敵を打ち倒すのが理想だ。
打ち合うとか切り結ぶのは剣士なりサムライにやってもらえばいいのだ。
とはいえ、俺はぼっちだ。孤高のソロ忍者だ。
火力も自分で出さなきゃならない。
攻撃力が欲しい!
見つかって戦闘になれば不意打ちによる底上げが効かない。
【投擲】も近い距離では力を発揮しにくい。
近距離攻撃のスキルがないのだ。これが俺の課題だ。
ここまで金属バットで戦ってきたが、これは単に腕力で振り回しているにすぎない。
敏捷のおかげで素早く動けているからなんとかなっていたが、ファンタジー的な火力ではないのだ。
そんな攻撃でもゴブリンやコウモリは余裕で倒せてしまうんだけど。
でも、コウモリ戦では対策が足りていなかった。
課題に突き当たってから対策していたのでは遅い場合もある。
先を見こして、スキルを振っておくしかない。
取得できるスキルのリストには【刀剣】や【打撃武器】がある。
日本刀とか忍者刀とかを使いたい……!
しかし、手に入らないのだ。
外で買うにはハードルが高いし、持ち歩いたら銃刀法違反になってしまう。
ダンジョン内で手に入ればいいのだが……。
今のところ宝箱のようなものは見ていない。
ドロップアイテムはゴブリンでもコウモリでも魔石しか落ちない。
今まで倒した敵から手に入れたのは百パーセント魔石オンリーだ。
ドロップ率みたいなものがあって、他のアイテムが落ちにくいんだろうか。
何も落ちない、ということもない。かならず魔石は手に入っている。
そういうわけで、引き続き俺のメイン武器は金属バットだ。
結局、打撃武器としてはこれ以上のものは現代日本には見つからない。
バットは、あまたのゴブリンを仕留めてきた実績もある。
耐久性も悪くない。多少へこんだりしているが、まだまだ使える。
これを生かせるスキルを取ろう。
「【打撃武器】を取ってと……」
【打撃武器】は基礎スキルだ。
これを取得したことで、関連するスキルが解放される。
「さらに【打撃武器・威力強化】、【フルスイング】を取得!」
【打撃武器・威力強化】は、その名の通り打撃武器を使った攻撃に補正がかかる。
金属バットは打撃武器に含まれるはずだ。
【フルスイング】は他とは毛色が違うようだ。
アクションスキル……技のようなものみたいだ。
【隠密】みたいなスキルは常時発動……パッシブスキルだ。
意図して隠密状態を解除することもできる。
パッシブスキルは自由にオンオフすることができるわけだ。
体感としては魔力の消費なく発動しているので、俺はオンにしたままダンジョン探索をしている。
【分身の術】とか【壁走りの術】は意識して発動させる……アクションを起こすスキルだ。
技とか術とか必殺技のようなものだろう。
使うときにちょっとした疲れを感じる。魔力を消費して発動しているようだ。
今取った【フルスイング】もこの仲間だな。
しかし、スキル名って日本語だけじゃないのね。
英語と言うか、カタカナ表記もアリか。
フルスイングって日本語にするとどうなるんだ?
全力打撃とかになりそうなもんだけど。
スキルの説明は以下の通りに表示されている。
--------------------
【フルスイング】
横方向への全力攻撃を行う。威力と吹き飛ばし距離に補正。
--------------------
「まるでバットのためにある技だな。とりあえず試しに……フルスイング!」
バットを構えてスキルを発動させるイメージで振ってみる。
ぶいん、と風を切ってバットがうなる。
「おっ!?」
思っていた以上の勢いで身体が動く。
体が引っ張られるような感じだ。
これは……ただバットを振るのとは違う。
身体とバットが一体になったかのような、自然な動き。
全体重がバットに乗って、そのまま打点に力が伝わる。
ブワーっと振ってズバンみたいな。
これまでの単なる打撃より、ずっと威力が出そうだ!
しかし……どんどん野球忍者になっていくぞ。
別に俺は野球が好きなわけじゃないんだが。
くっ。早く刀を手に入れなければ……!
引き返せなくなってしまう!
俺が目指しているのはスタイリッシュ忍者のはず!
いやだ。キワモノはいやだ!
「ちなみに横方向への全力攻撃、と明言されてるけど、縦方向はできないのかな。……フルスイング! あ、できないや」
バットを頭上に構えてスイカ割りみたいに縦に振る。
しかし、スキルは発動しない。
ただバットを振り下ろしただけだ。
「ふーん。技ごとに制限があるのか。【強打】にすればよかったか」
【強打】は強力な打撃攻撃をくり出す、というシンプルなもの。
汎用性がありそうだ。
【打撃武器】にぶら下がっているスキルの一番上に【フルスイング】があるから取ってしまったぜ。
基本っぽい技を一番上にしておいてくれ。
スキルの順番は俺向けにオススメなものを表示してくるんだろうか。
ネットを見ていると表示される広告が「借金返済」とか「薄毛治療」にパーソナライズされているみたいな、余計なお世話感。
借金はないし、髪の毛はあるんだ。
ほんとうだ。
そしてバットを使っているからといって、野球忍者になりたいわけじゃない。
信じてくれ。
さて。ポイントは使い切った。
宵越しのポイントは持たぬ!
スキルを振った結果を見てみよう。
--------------------
名前 : クロウ ゼンジ
レベル: 4(上昇)
筋力 : C
体力 : B
敏捷 : B
知力 : C
魔力 : C
生命力: C
職業 : 忍者
スキル:
【忍術】1
【壁走りの術】1
【分身の術】1
【隠密】1
【隠術】1
【消音】1
【致命の一撃】1
【暗殺】1
【投擲】1
【歩法】1
【身体強化・敏捷】1(取得)
【身体強化・筋力】1(取得)
【身体強化・体力】1(取得)
【暗視】1(取得)
【回避】1(取得)
【受け身】1(取得)
【危険察知】1(取得)
【打撃武器】1(取得)
【打撃武器・威力強化】1(取得)
【フルスイング】1(取得)
(残ポイント:0)
--------------------
こう見ると、ステルスと不意打ち、忍術、防御、身体強化、打撃攻撃と多彩になってきた。
バランスがいいとも言えるし、器用貧乏とも言える。
まあ、一人でダンジョンに潜っているから一点特化のスキル構成では危険だ。
ダンジョンの存在を知られたくはないから、仲間を作るというのも難しい。
誰にも言いふらさないでくれる人とか、信頼できる友人……居ないな。
ボッチに暮らしてきた報いか?
ソロ忍者としてやっていこう。
うん、寂しくなんかない。
忍者、それは孤独な生きざまなのである!
ブックマーク、評価いただけると作者が喜びます!
ついに日間3位! 総合にも入ってた! ありがとうございます!
スタイリッシュ忍者ならず……!? 野球忍者に一歩近づいた!




