一狩りいこうぜ! お肉を求めて……!?
草原ダンジョンには俺の装備品はない。
そこで、外から持ち込んだ素材と手に入れた魔石でクラフトする。
ちゃちゃっと作ってしまおう。
せっかくなので、オトナシさんに実演しながらやっていこう。
魔石の地位向上のためだ。
魔石は、はずれじゃあないぜ!
「これが俺のスキル、忍具作成です。素材と魔石をつかって――作成!」
「わあ! 光った!」
素材と魔石が発光し、俺の望む忍具を作り出す。
作ったのは手裏剣ポーチだ。
ここに、持ち込んだ五寸釘……棒手裏剣を入れて腰につける。
「すごい! すごい! ポーチができちゃいました!」
オトナシさんは手をたたいて喜んでいる。
「魔石がもっとあれば、クナイを作れるんですが……」
「魔石にこんな使い道があるなんて、すごーい!」
魔石の地位向上、成功!
「そうなんです! 魔石がたりないから今日は手裏剣で行こうかと」
「あっ! 手裏剣! あの時のシュババ! 本物が見れるんですね!」
前に現実世界でタバコを投げた件だな。
その時はダンジョンのことや忍者のことは隠していた。ダーツが趣味とか言ってごまかしたんだ。
「ちなみに、狩る敵ってどんな感じですか? もし強敵ならもうちょっと装備整えますが……」
俺のダンジョンにある装備はほとんどクラフトしてしまっているので、外に持ち出せない。
腰袋とかナタくらいは、手を加えていないので持ってくることもできる。
「いえ、そんなに強くないです。でも、ちょっとすばしっこいんですよ!」
「じゃあ、手裏剣で充分かな。さて、行きますか!」
手裏剣で無理なら、分身か体術でなんとかしよう。
オトナシさんは普段、一人で狩ってるんだろうしな。
火力不足ということはないだろう。
オトナシさんの案内で草原ダンジョンを進んだ。
少しして俺たちは、そのポイントへたどり着いた。
「お……? ここからいきなり、景色が違いますね」
「不思議ですよねー! 急にカラッとした感じになりましたよね」
これまでは緑と花が鮮やかな草地だった。
線で引いたみたいに、地形が変わっている。
この先は砂地に枯草の生えたような土地だ。
「……サバンナみたいな感じですかね。乾燥して少し暑いですね」
「そうなんですよー。日差しも強くなるんですよねー」
空気は乾燥していて、日差しが強い。
土も水気は少なく、草木は丈が低い。
枯れた稲やススキのような植物がところどころに茂っている。
「一歩踏み込んだだけで気温も湿度も変わるんだな……太陽の位置は同じなのに、日差しが強くなるとか……!」
「不思議ですよねー!」
めちゃめちゃ不思議だわ!
両手を広げて日差しの強さを感じる。
体感温度も明らかに違う……。
俺は何度も、境界線を行ったり来たりする。
「あはは、クロウさん! なんで踊ってるんですか?」
「いや……不思議だな、と思って……」
まるで空気の膜でもあるかのように、体感温度が変わる。
この違いは、俺のダンジョンで言えば、階の違いにあたるのか……?
「オトナシさん。この境界って……階層の違い?」
「システムさんはこれのことをエリアって言ってました」
エリア……領域とか地域か。
俺の場合は洞窟とか迷宮のようなダンジョンだ。
だから、深さ……階の違いがある。
そして、深く潜るほど敵は強くなる。
「オトナシさん。この先は敵が強くなったりしますか?」
「うーん。そういえば……スライムより当たらない気がします」
オトナシさんの場合、魔法を当てれば敵は死ぬ。
当たるか当たらないかが敵の強さの基準みたいだ。
ちょっと、参考にならない。
この草原ダンジョンは平面だ。
地面に穴が開いてたり階段があったりはしない。
一定の距離を進むと、こうして区切りの位置が現れる。
そうして、階層のように次段階のエリアになるんだ。
システムさんに確認してもらったところ、おおむね認識は正しかった。
「つまり、ここから先は草原ダンジョンの第二エリア……ってことかな?」
「そうなの? システムさん?」
<この先は第三エリアになります。第二エリアはフィールド設定としては第一エリアと同じです>
「あ、そうなんだね!」
「どこかにエリアの違いがあったけど、見た目や気温が変わらなかったからわからない感じか……」
このダンジョンは境界があいまいな場合もある。
そうなると、境界に気付かずに、強敵がいるエリアに踏み込んでしまうリスクもあるな。
敵の強さは俺のダンジョンに比べて強いようには思えない。
ゴブリンやコウモリと、ここのスライムの強さは大きな差はない。
相性や個性は違うが、難易度の差が大きく違ってはいないはずだ。
俺は自分のダンジョンでは六階層まで進んでいる。
同じ難易度なら、ここの第六エリアまではいけるはず。
出現するモンスターの種類や相性にもよるけど、戦えないことはないはずだ。
強くなくて素早いモンスターか。
俺は素早さ特化型だから、なんとかなるかな。
オトナシさんは、顔の前に手をあてて影を作り、何かを探している。
「あ、いた! いましたよ! あそこです!」
「お? あれは……ウサギか!」
オトナシさんが指さす先――草の影に見えたのは、少し大きめのウサギだ。
全長は六十センチから八十センチの間くらいか。
体毛は茶色系。枯葉色の背景にとけ込んで、かなり見つけにくい。
そして、普通のウサギとは違う特徴を持っている。
それは――角だ!
「はい! ツノウサギさんです!」
ファンタジーのザコ敵代表……角ウサギがエントリーした!
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