戦利品の整理は攻略の醍醐味で!
ボスを倒し、報酬を得た。
あとは戦利品を手に、拠点へ凱旋するだけだ。
「いやー、大漁大漁!
ボス魔石とスキルオーブ、ゲットっス!」
「きれいな黒曜石もいただきましたね!」
ミミズ釣りは大成功だった。
トウコとリンはご機嫌で言うが、問題はどうやってこれを持ち帰るかだ。
俺は【石収納】を持たないので、石のままでは持ち帰れない。
忍具に加工するひと手間が必要になる。
「まずは【忍具収納】の枠を開けないとな」
俺は収納からリカバリーポーションをしみ込ませた手拭いを取り出す。
収納から出してしばらくするとポーションは揮発して消えてしまう。
「あ、ゼンジさん。
いつも私の盾をしまっていただいて、ありがとうございます。
私も自分で収納できたらいいんですが……」
「ああ、大丈夫だ。
盾はいつものことだし、ポーションは帰れば補充できる」
俺は手拭いを素材にしてクナイポーチを作成する。
続いて、手に入れたばかりのスノーフレーク黒曜石でクナイを作る。
さらに普通の黒曜石のクナイもいくつか作ってポーチに収めた。
「まとめて……【忍具収納】!」
「セット扱いにして一枠に収めたんですねー!」
「そういうこと!
よーし、問題なく収納できた。
これで持ち帰れる!」
「あとは魔石っスね!」
「そっちは魔石収納に入れるぞ」
俺は【魔石収納】の限界まで、価値の高いものから順に魔石を詰めていく。
「まずは大アースワームの魔石、と。
ボスの魔石は容量が大きいが、これは外せないからな」
「そうですねー!」
「続いてザコ敵の……サンドクロウラーとサンドリーチの魔石。
それから、宝石商さんとトレードしたブラッディソーンとウィルオウィスプの魔石だ」
「わ、私の魔石も、お役に立てそうでよかったです……ハイ」
宝石商がはにかみながら言う。
彼女との縁で手に入れた魔石だ。
これも大事な戦利品だ。
俺は持ってきた魔石を全部出したが、損はない。
自分のダンジョンの魔石はいつでも手に入る。
「それ以外は……この軽石ヘルメットと石のクナイスコップはこの場に置いていこう。
宝石商さん、ここで預かってもらってもいいか?」
「は、はい、もちろんです!」
「そうすれば次に来たときにまた使えるからな。
助かるよ」
そして、最後にして最大の問題が残っている。
「スキルオーブは持ち出せないから、この場で使うしかないんだが……」
俺は二つのスキルオーブを手に、リンとトウコに向き直る。
「俺たちの分は二つだ。
どう分けるかだが……」
「リン姉にあげればいいんじゃないっスか!
あたしはいらないっスよ」
「今回もそうしよう。
俺たちは熟練度で成長できるからな!」
「ゼンジさん、トウコちゃん……ありがとうございます!
なんだか、いつも貰ってばかりで……」
「いいってことっスよー!
お礼はもみもみ券でいいっス!」
「肩もみ券みたいなものかなー?
うん、いいよー」
「いや、リンが思ってるのとは違うと思うぞ」
「うへへ。
帰ったらさっそく使うっス!」
「それはさておき……決まりだな。
じゃあリン、遠慮なく使ってくれ」
「はいっ!
ありがとうございます、ゼンジさん、トウコちゃん!」
リンは受け取った二つのスキルオーブを、祈るように胸の前で握りしめ、砕いた。
柔らかな光が彼女の体に吸い込まれていく。
「スキルポイント、増えましたー!」
「おめっス!」
「んじゃ、帰るぞ!」
よし、これで全ての準備が整った。
あとは家に帰るだけだ!