【コレクター】の効果を聞こうと思ったら、とんでもない事実が発覚してしまう……!?
「あ、そうだ、宝石商さん。
【コレクター】はどういう効果だったんだ?」
宝石商が空中に目を走らせる。
説明文を読んでいるようだ。
「ええと……収納の性能が向上する、とのことです」
「へえ、収納を強化するスキルか。
これは宝石商さんにはぴったりだな」
宝石商は考え込むようにして言う。
「これは【強欲】の効果と似ていますね……。
この場合、重ねて効果が発揮されるんでしょうか……」
ん……?
いま、さらりととんでもないことを言ったな。
「【強欲】だと!?」
「大罪スキル持ちだったんスか!?」
宝石商が目をぱちぱちと瞬かせる。
「あれ……言ってませんでしたっけ?」
「聞いていないぞ!
やっぱり、魔石を自分に埋めたのか?」
「は、はい。
な、なんでそんなに驚くんですか?」
「いや……魔石を埋めるのはリスクがあるんだろ。
それを自分に使うなんて、危険じゃないか!?」
「いえ、自分に合った魔石ならたいていは大丈夫なんです。
石が入ってきて、自分と一つになる感覚は……とても素敵でした!」
うっとりとした表情を浮かべる宝石商。
トウコが引いたような顔で言う。
「うぇぇ……!
ヤバいっスね、宝石商!」
「失敗したら、大変なことになるんですよねー?」
リンの言葉に、宝石商がうなずく。
「相性が良くても失敗する可能性はあります。
そ、それでも石と一つになれるなら……。
もっと石のことを知れるなら、断る選択肢なんてありませんでした!」
きっぱりと言う宝石商。
リンがうなずく。
「そうですよね……。
大切なもののためなら、私もそうすると思います」
「力を得るため、か……。
でも、危険な力だ」
ゴウダのように怪物化しては困る。
宝石商が一つの魔石を取り出す。
おそらくこれは嫉妬の魔石だ。
「もしお望みなら、嫉妬の魔石を迎えてみますか?」
「え……?」
宝石商の言葉に、リンが困惑した表情を浮かべて俺を見る。
俺も少し驚いている。
「宝石商さんが自分から魔石を手放そうとするのは意外だな」
何か裏があるのか?
いや、彼女にそんな器用な真似はできまい。
「石が、そう望むんです。
私が持っているより、ふさわしい場所で輝くべきだと……」
嫉妬の魔石はリンを気に入っている、と宝石商は言っていたっけ。
「ふさわしい場所か。
でも、リンに危険なことをして欲しくない」
「ゼンジさんがそう言うなら……その力は要りません」
リンが首を振ると、宝石商は魔石を収納に戻した。
「そうですか……。
ふ、憤怒の方は、どうしますか?」
宝石商がトウコをちらりと見る。
「あたしっスか?」
「トウコもやめておけよ?」
「【憤怒】なんてあんまし使わないし、要らないっスね!」
【憤怒】を使うと身体能力が向上するが、理性が低下する。
制御を誤ると【狂化】まで発動してしまう。
魔石の力でパワーアップすると、また制御が難しくなってしまうだろう。
ただでさえピーキーなスキルだ。
これ以上尖らせるのは危険だろう。
「というわけだ、宝石商さん。
申し出はありがたいが、魔石の力を頼らなくても俺たちはやっていける」
「そ、そうですか。
要らないのなら私が大切に愛でさせてもらいます、ハイ」
「じゃあ、この話はこれまでだ。
コレクターの効果が気になるな。
収納の能力が向上するんだろ?
なにか変わったところはあるか?」
宝石商が石を出し入れする。
「あ、少し今までと違いますね……出し入れが早いです!」
「へえ、収納速度の向上効果か!」
「地味っスねー!
無限収納とか、派手な効果かと思ったっス!」
「そんなチート能力が身についてたまるか!」
俺が討伐報酬で得たのは【自律分身の術】だ。
低レベルのときに飛び級して【上級忍術】のスキルを得ることができた。
便利だし重宝しているが、チート能力というわけじゃない。
宝石商の【コレクター】も上級スキル相当の効果なんじゃないかな。
「でも、便利そうなスキルでよかったですねー!」
「そうだな。
宝石商さんの戦闘スタイルなら、収納速度は火力に直結する。
いいスキルだと思うぞ!」
「あ、ありがとうございます」
宝石商はうつむき、はにかむように笑った。
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