VSボス戦! 巨大ミミズは岩肌で!
俺の足元から巨大ミミズが飛び出してくる。
あぶねえっ!
俺はギリギリのところで空中へ飛ぶ。
空中を蹴って壁に張りつく。
壁にはりつきながら、巨大ミミズの姿を観察する。
見えているのは頭部だけ。
ミミズの場合、どこまでを頭部と呼んでいいのか……。
表皮は黒曜石に似た光沢のあるガラス質の岩石で覆われている。
宝石商が言っていた、石が生えているとはこのことだな。
これは岩なのか、肌や鱗の類か……。
砂から頭を出したチンアナゴのように、首めいた部位を伸ばして頭を動かす。
その先にいるのは分身だ。
俺から分身へ標的を変えたようだ。
岩塊めいた頭部が、がぱりと開く。
丸い口が大きく広がる。
口内に歯は見えない。
だからと言って、安心できるわけじゃない。
その恐ろしさはすぐに理解できた。
分身が頭から飲み込まれていく!
そのまま肩から腰まで口の中へと飲み込まれていく!
リンが悲痛な声で叫ぶ。
「ああ! 分身さんがっ!」
「このっ!
ピアスショットっ!」
銃声と共にまばゆい弾丸が走る。
大ミミズの頭部で火花が散る。
「グググ……」
大ミミズがうめき声めいた不気味な音を立てる。
本来ミミズに発声器官はない。
空気の動きか、岩がこすれる音か……。
大ミミズが体をうねらせる。
ずりずりと、飛び出した頭を土中へと戻していく。
咥えられた分身がそのまま穴へ引き込まれた!
なかなかの速度!
分身は棒立ちで、なすがままだ。
抵抗しないのは俺が穴を掘る条件しか与えていないからだ。
俺は壁に張りつき、それを観察している。
分身を操作して抵抗しないのは、ミミズの攻撃力を見るためだ。
どうやら噛みつき攻撃にたいした威力はない。
口にくわえこまれても分身は残っている。
ふむ……即死はしないか。
分身の強度は人間並みに設定している。
これで消えないということは、威力はそれなりだ。
だが分身は呼吸を必要としない。
頭から飲み込まれたら、人間はひとたまりもないだろう。
それに、このミミズは酸を吐くらしい。
体内に飲み込まれたら溶かされてしまうだろう。
「店長、ミミズが逃げるっス!」
分身を咥えたミミズが穴へ戻ろうとしている。
俺は刀を振りかぶり、投擲する。
「ていっ!」
鋭く飛んだ刀は、狙いたがわず頭部に命中。
がきん、と音を立てて刀が弾かれる。
効いていない!
硬いぞ!?
岩のような表皮は刀の投擲では貫けない……!
空中でくるくると回転する愛刀を引き寄せ、掴み取る。
大ミミズが土中に潜る。
地響きとともに姿が消える。
「硬いな!
次に備えろ!
よく狙って攻撃してくれ!」
「はい!」
「りょ!」
俺は壁の一部を破壊して、そこに掴まる。
【壁走りの術】の持続時間をリセットして、再度壁に立つ。
水噴射の準備をしつつ、機をうかがう。
奴は現れない。
地響きに耳をすます。
「来ないな……?」
俺は少し拍子抜けしてつぶやく。
やっと体を動かせると思ったのに、どういうことだ!?
もっとガツガツ襲ってくるものと思っていたんだけどな。
どうやら、このボスは特殊な行動パターンを持っているらしい!