ボスエリアは発光石とともに!
分身に足元の砂ブロックを掘らせる。
すでにボスエリアに入ったことになるが、俺が入る前に分身で様子を見れば、より安全だ。
五ブロックほど下へ掘り進んだが、モンスターは現れない。
動くスペースを確保するため、螺旋階段状に掘っておく。
地上から離れたこともあって、そろそろ光が届きにくくなってきた。
少し暗いが【暗視】で見えているから問題ない。
トウコが拍子抜けしたような顔で言う。
「ミミズ、来ないっスねー」
「雑魚モンスターもいないな」
リンが目を細めて奥をのぞき込む。
「奥のほうは少し暗いですねー」
「わ、私の【暗視】効果も、切れてしまいました……」
魔石を使ってから十分くらい経っただろう。
「効果時間は短めか。
ゴブリンの魔石はまだあるぞ。
暗視効果をつけ直しておくか?」
「は、はい!」
俺は魔石を二個取り出して宝石商へ渡す。
「じゃ、ついでにリンの分も頼む」
宝石商とリンが【暗視】効果を得る。
これで全員が【暗視】を持ったことになる。
リンが感動した様子で暗がりを見つめる。
「わあ、ゼンジさんたちにはこう見えていたんですねー!」
「……」
宝石商が無言で、収納から石を取り出す。
その石が淡く発光を始める。
リンが目を細める。
「少し、まぶしいですねー」
「おおーっ!
ゲーミングストーンっス!」
「なんだそりゃ?
ああ、ゲーミングパソコンみたいに光っているってことか」
それにしても、なんで光らせるんだろうな。
見づらくてゲームしにくいだろうに。
リンと宝石商は光に目を細めている。
この程度の明るさなら、俺の目はくらまない。
「これは照明に使えそうだな」
「し、下のほうはまだ暗いので……。
これは蛍石です」
松明など火を使った照明では酸欠のリスクがある。
これが宝石商の暗闇対策か。
「ブラックライトで光るやつか?」
「本来は紫外線で光るんですが……。
この石は魔力で光ります。
体から離しても、短い間は光り続けます」
といって、光る石をボスエリアに投げ込む宝石商。
下のほうが明るく照らされた。
底でブロックを掘っている分身が照らし出される。
「大ミミズは出てこないようだな」
「分身さんには反応しないんでしょうかー?」
「やはり、人間が下りないとだめか?」
「生餌っスね!」
そのエサは俺なんだが!?
リンがトウコに詰め寄る。
「トウコちゃん……!」
あ、ちょっと怒ってる。
トウコが冷や汗をかいて謝る。
「あ、うそうそ!
店長、ごめんっス!」
「別に気にしてないぞ。
じゃ、ちょっと降りてみるか」
まだ見つかってないだけで、分身でもそのうち食いつくかもしれない。
自律分身を使う手もあるが、ここは自ら飛び込んでみよう。
無理をする気はないが、ちょっと体を動かしたいのだ。
ボスエリアに降りていく。
「気を付けてくださいね、ゼンジさん!」
「おう」
底にたどり着く。
宝石商が投げ入れた蛍石は光を弱めている。
手に取ってみると、少し光が強くなった。
「魔力に反応しているのか?」
上から宝石商の声が降ってくる。
「近くの魔力に反応しています……ハイ」
俺の体から漏れ出る魔力に反応しているのか。
特に魔力を発したり、流そうとしたわけじゃない。
「つまり微量な魔力でもこの石は光るんだな。
……ん?」
石がちかちかと明滅している。
「少し、光が強くなっていませんか?」
蛍石の発光が強まっている。
これは……!?
足元や周囲のブロックがぐらぐら揺れる。
「地震っスか!?」
「いや、これは……!」
背筋に走るびりびりとした危機感!
嫌な感じが足元から迫ってくる!
俺は飛びのきながら叫んだ。
「来たぞ……ボスだ!」
何かが俺の立っていた足場を突き破って飛び出してきた!
岩の塊か!?
いや、巨大なミミズの頭部だ!
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