射撃陣地とオトリ役!
これまでの情報から、頭の中に一つの作戦が浮かび上がった。
「よし、作戦を説明する。
まず、今俺たちがいる螺旋階段の真下、この黒曜石の床に、分身を使って大きな穴を開ける。
明かりと空気のためだ。
ただし、全部は壊さない。
俺たちが立つための足場を、穴の周囲に残しておくんだ」
既に黒曜石ブロックの破壊は進んでいる。
いくつか破壊したところで、黒曜石がドロップした。
これは素材として使えそうだ。
黒曜石の厚みは一ブロック分で、その下はこれまでと同じ砂ブロックだ。
ボスエリア内は空洞ではなく、砂ブロックが詰まっているようだな。
「穴の周囲を足場にするということは、
黒曜石のブロックにあける穴は、螺旋階段より少し小さくなるんですねー?」
「そうなるな」
「上から一方的に撃ちまくれるんスね!」
「その通りだ。
リンとトウコは、その足場から魔法と銃で援護射撃。
俺だけが下に降りて、ボスを穴の下まで誘い出すオトリ役をやる」
「ゼンジさんだけが下に行くのは心配ですが……。
大丈夫ですよね?」
オトリ役の避けタンク役はいつものことだ。
それでもリンは心配してくれる。
俺は安心させるように笑みを浮かべる。
「もちろん大丈夫だ。
リンたちの援護があれば、いつでも逃げられる」
「ミミズさんに足場を壊されるかもしれません!」
「そうしたら、壁を登ればいいさ」
「そうですよね。
ゼンジさんなら、大丈夫ですね!」
「うむ。
さて、宝石商さんは、さっきの岩石落としの準備をしておいてくれ。
ただし、そこらの石じゃ硬いボスには効かないかもしれない。
この黒曜石を使うのはどうだ?」
「尖らせて、槍みたいにしたら強そうっス!」
「は、ハイ!
やってみます!」
宝石商は黒曜石のブロックの欠片を拾い上げると、真剣な顔で加工を始めた。
俺はリンとトウコに尋ねる。
「というわけで、質問はあるか?」
「ありません!」
「ないっス」
宝石商が作業を終え、出来上がった品を見せてくる。
「杭のような形にしてみましたが……。
ど、どうでしょうか?」
宝石商が、先端を鋭く尖らせた、長さ一メートルほどの杭を作り上げていた。
先端だけが黒曜石で、ほかは普通の石を使っている。
「よし、いい出来だ。
あとはそれをいくつか作ってくれ」
落下攻撃に使っていた岩を材料にして作業を進める宝石商。
黒曜石の杭が計三つできあがった。
「……準備、できました!」
「よし。
分身も、穴あけを完了したようだ」
ちょうど分身が掘削を終えた。
四十メートル地点の黒曜石ブロックを一部取り除いたのだ。
その下に砂のブロックがのぞいている。
この砂を掘れば、ミミズが巣くうボスエリアに入れる。
「リンとトウコは足場から降りずに攻撃してくれ」
「はーい!」
「りょ!」
「宝石商さんは、合図するまで岩を落とさないように頼む!」
「は、ハイ!」
宝石商の狙いは怪しい。
俺の頭上に杭が落ちてきたらたまらない。
巻き添えを食うリスクは減らしておきたい。
「よし、始めるぞ!」
作戦は決まった!
あとは実行するだけだ!