落石攻撃の使い勝手と新地層への到達!
宝石商の攻撃手段は、以下の二つだった。
魔石加工による使い捨て魔石。
岩を頭上から落とす質量攻撃。
どちらも強力だが、使える状況が限られる。
使い捨て魔石は弾数が限られる。
岩落としは強力だが回転が悪く、真下の敵しか狙えない。
このスキルでは一人でダンジョン攻略するのは難しそうだ。
岩を二つ用意して交互に落とす作戦は悪くないアプローチだ。
しかし、この方法だけで無双する、とはいかないようだ。
当たり前だが、敵は準備が終わるまで待ってくれない。
こうしている間にも次々とモンスターが現れている。
横穴から虫が這い出てきて、落とした岩にたかりはじめた。
それを見て、リンが残念そうな声を上げる。
「ああっ!
二つ目の岩にも虫さんが……!」
「攻撃と岩の回収をテンポよくやらないとな。
リン、虫を退治してくれ!」
「はーい。
ファイアボール!」
「なぎ払えーっス!」
放たれた炎が火炎放射のように岩に集まる虫型モンスターを一掃する。
横穴の奥にモンスターがいても、一緒に蹴散らせただろう。
俺はリンに声をかけつつ、上から穴へ空気を送る。
「リン、いいぞ。
宝石商、岩を回収してくれ」
「ふふ。
お役に立ててよかったです!」
そう言ってリンがうれしそうに微笑む。
閉所で火が使えない心配がなくなれば、逆に火は強みだ。
虫系モンスターにも火はよく効く。
宝石商は慌てた様子で岩を収納する。
「は、はい。
ありがとうございます!」
「お、二つとも収納できるのか。
容量が足りるのか?」
「材料に使った石のぶん、容量に余裕ができたので……ハイ」
「そういうことか。
容量をあけておけば、いくつか岩を運べるかもな」
「そ、そうですね」
宝石商は気が進まない顔だ。
他の石を収納に入れておきたいんだろうな。
まあ、本人がそうしたいなら無理強いはできない。
他人のスキルの使い方にあまり口出しはしない主義だ。
最適な行動があるとしても、人はその通りには動けない。
趣味嗜好に走ったり、怠けたりしてしまう。
たとえ効率が良くても、やりたくないことはできないのだ。
採掘を再開すると、ほどなく硬い地層が現れた。
四十メートル地点に到達したということだ。
「おっ?
黒いブロックが出てきたぞ!」
「こ、黒曜石のブロックです。
硬いので、何度も叩かないと壊れません……ハイ」
確かに、分身のクナイスコップは硬いブロックを砕けていない。
かきんと音を立てクナイが弾かれている。
何度か続ければ破壊できるというなら、続けよう。
くり返すのは判断分身の得意分野だ。
トウコが勢い込んで言う。
「てことは!
この先のボスがいるんスね!」
「しっかり準備して挑みましょう!
お食事休憩にしますかー?」
リンが俺を見る。
俺はうなずいた。
「そうだな。
休憩しながら、作戦会議をしよう」
さて、ミミズ型モンスターの対策を考えるぞ!
どうやって戦おうかな?