宝石商の攻撃手段? その2
芋虫が燃え尽き、後には魔石が残った。
「おお、こうなるのか!」
「【発火】の魔法に似ていますねー」
「リン姉のと違って、一匹燃えただけっスね!」
穴の中にはほかにもモンスターがいる。
燃えたのは一匹だけだ。
熱グレネードやリンの範囲火魔法とは違う。
宝石商がこちらとは目を合わさず、ごにょごにょと言う。
「ち、近くの敵を燃やす効果ですので……」
「すごい能力だな!
魔法職じゃない宝石商さんが火を扱えるところがすごい!
別の魔石……ブラッディソーンの魔石を使えば植物系もいけるんだろ?」
「そ、そうです。
でも、もったいないんですよね……。
ウィルオウィスプの魔石はまだいくつかありますが、もう手に入らないので……」
「悪性ダンジョンで手に入れたのか?」
「そうなんです……ハイ」
となると再入手は難しい。
同じ種類のモンスターが湧く別のダンジョンが運よく見つかればいいが……。
それは難しいだろうな。
そもそも悪性ダンジョン自体を見つけるのが難しい。
ゴブリンなら、ほかのダンジョンでも見かけたけどな。
ありふれたモンスターなんだろう。
「このダンジョンで手に入れた魔石は使えないのか?」
宝石商は残念そうに首を横に振る。
「それが……。
この階層のモンスターでは、魔石が弱すぎて使えないんです……」
四十メートル掘ってボスがいるなら、一階層が十ブロックぶん。
今俺たちがいるのは、俺のダンジョンでいう三階層か四階層に相当するはずだ。
「ふーむ。
それなら俺が持ってきたゴブリンの魔石ならどうだ?」
ゴブリンといえど、二十一階層のモンスターだ。
しかし宝石商さんは露骨に顔を引きつらせて首を振った。
「ま、まだ調べていないので……!」
「じゃあ、別の魔石を出すからさ。
……これでどうだ?」
魔石収納から新しいゴブリンの魔石を取り出して、宝石商に渡す。
宝石商はそれを収納にしまい、別の魔石を取り出した。
先に渡した魔石を使うようだ。
手の上に乗せ、真剣に見つめている。
「で、では……加工してみます。
この魔石は【採掘】と【暗視】の力があります」
「てことは、ゴブリンが持っているスキルってことか?」
「そうなります……ハイ」
「おお、やはりゴブリンは【暗視】持ちか!
これで長年の疑問が解消したぞ!」
「よかったですね、ゼンジさん!」
鑑定能力がないので、敵のスキルは予想するしかなかった。
これでゴブリンの生態がまた一つ理解できた!
「【採掘】とか【暗視】の石を投げたら、どうなるんスか?」
「それは気になるな。
だけど敵に【暗視】スキルが発動しても意味がない」
「そうですよねー?」
俺たちの疑問に宝石商が答える。
「自分を対象に使えば、一時的にそのスキルが身につきます。
あの、私が【暗視】を試してもいいですか?」
「もちろん、試してくれ。
俺も結果が気になる」
「では……」
宝石商が魔石を加工する。
そしてそれを握って、祈るように目を閉じた。
「あ……!」
宝石商は目を開けると、驚いた表情を浮かべる。
「どうだ?」
「見えました!
ぼんやりしか見えなかった横穴の奥まで見えます!」
「あとは、効果時間がどれくらいあるか、だな」
「リン姉の料理は一時間くらいっスよね!」
「うん、そうだねー」
強いモンスターの食材があれば、一時的なスキルが付与できる。
火鳥の卵なら【火耐性】が付与される。
強いモンスターの食材を使う必要がある。
これはめったに手に入らないが、効果時間は比較的長い。
魔石はどうだ?
宝石商はボス級の素材でなくても付与できるようだ。
となると……制限時間やスキルの強さが気になるところだ。
あまり弱い素材では使えないようだし……。
「毎回消費アイテムで戦っていると、かなり厳しいだろ?」
「そうなんです……。
でも、こうして上から敵を見つけたときなら他にも方法があります」
さきほど【発火】で一匹倒したが、まだ奥にモンスターがいる。
ヒル型モンスターがうねうねと姿を見せているのだ。
これで試してもらおう。
「加工した魔石とは違う方法か?」
「んじゃ、それで!
今がチャンスっスよ!」
サンドリーチが狙いやすい場所に来ている。
宝石商が穴の上に手を伸ばし、目を閉じる。
「で、では……えいっ!」
「おおっ!?」
突如、目の前に大きなものが現れた。
それは岩石だった。
収納から一抱えほどある大きな石を取り出したのだ!
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