宝石商の攻撃手段?
「この下、敵さんがいますねー」
「んじゃ、分身を止めるぞ」
真下に向かって掘っていく分身を移動させる。
落下して敵にやられるのを防ぐためだ。
「んじゃ開通ーっ!」
分身が移動を終えると、トウコが射撃してブロックを崩す。
これで敵がいる空洞につながった。
だいぶ掘ってきたので、こうした連携もスムーズだ。
サクサク掘れるので、なかなか楽しい。
「宝石商さん。
もうすぐでボスがいる階層につくはずだよな」
「もう少しです、ハイ」
「ボス階層へ行く前に、宝石商さんの実力を見ておきたい」
「じ、実力……ですか?」
「攻撃手段ってことだ。
たしか、魔石を加工して、力を引き出すんだったよな。
それを見せてくれ」
「ウィルオウィスプとかトゲがどうとかいうやつっスね」
「もうひとつはブラッディソーンの魔石、でしたねー」
宝石商はやや渋りながら、一つの魔石を取り出す。
もったいない、とか思っているのかな。
「……これはウィルオウィスプの魔石です。
【発火】の効果を選んで……加工します!」
魔石が光り輝く。
【石加工】スキルが発動したのだ。
光が収まると、魔石が形を変えていた。
複雑なカットが入り、美しい輝きを放っている。
「宝石みたいですねー」
「石の中に封じられた力が働きやすいように磨くんです。
こうすることで、魔石が持っている力の一部が、一度だけ使えます」
「どうやって使うんだ?」
「な、投げてぶつけます」
「そうか。
じゃ、やってみれくれ」
「うう……。
は、はずしたらどうしよう……」
宝石商は足元の穴をねらってしばらく様子を見る。
真下に芋虫タイプのモンスターが見えている。
動きは鈍重で、のそのそと遅い。
距離も一メートル程度なので、外すような距離じゃない。
とはいえ、それは【投擲】スキルを持っていて、普段から投げ投げていればだ。
宝石商の運動神経にはあまり期待できそうもない。
緊張したら外すかもしれないしね。
「リン、念のため盾を構えて【防火】の準備をしておいてくれ」
「はーい」
「あ、芋虫が止まったっス!
チャンスっスよ!」
「……えいっ!」
意を決した宝石商が目を閉じて加工した魔石を投げる。
いや、目を閉じないで!?
石は狙いを逸れ、芋虫の横に落ちて転がる。
それを見て、トウコが顔に手を当てる。
「あちゃー!」
「……外れか?」
【発火】のスキル効果だというが……。
何も起きないな。
リンが穴をのぞき込んで、はっと息をのむ。
「魔力の反応がありますよー!」
「は、外れても大丈夫なんです。
の、のぞき込まないようにしてください!」
俺たちは穴から身を引く。
それと同時に、青白い炎が穴の底から立ちのぼる。
「ミィィー!」
芋虫が鳴き声のような音を出し、燃え上がった。
青白い炎が明るく地下空間を照らし出す。
発火スキル!
熱水晶を投げた時に似た現象だ!
芋虫は火の中でしばらく身もだえしていたが、やがて動きを止めた。
炎が収まり、芋虫の死体が塵になって消えていく。
おお、これは面白いスキルだな!
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