塹壕と土嚢と岩うんちくん?
「よし、落下中のブロックも消せることが分かった。
とはいえ、上を壊すときは真下には立たないこと!」
トウコが敬礼し、ホルスターから銃をスピンさせて抜く。
「リョーカイっス!
んじゃ、上を掘ってくっス!
ピアスショット-っ!
ありゃ?」
トウコが天井へ貫通弾を放ち、間の抜けた声を出す。
弾丸は命中したが……。
「二ブロックしか消せなかったねー?」
「ちぇー。
一番上まで突き抜けると思ったんスけど!
なんでっスか、店長!?」
いや、俺に聞かれてもわからんぞ。
推測くらいはできるけど。
「貫通効果でも一メートルの砂を貫くのは難しいんだろ。
一ブロック目は貫通できても二ブロック目で止められたんだろうな」
「砂のくせに硬すぎないっスか!?」
「いや、砂は馬鹿にならないぞ。
塹壕や土嚢は戦争でも使われている。
拳銃弾くらい、土嚢一つで防げるんだ」
袋に砂をつめて積み上げれば、銃弾を防ぐ壁になる。
土嚢の防御力は侮れない。
「あー、言われてみればそうっスね!
マグナムかライフルなら貫通できるかもっス!」
「穴掘りにマグナムはもったいない気がするな」
トウコが拳銃をホルスターに収め、勢いよくショットガンを抜く。
「そーっスね!
やっぱこういうときはショットガンでどーんと!」
「おいおい!
上を削るときにショットガンはやめとけ!
ブロックが落ちてくるぞ!?」
「リョーカイっス!
なら拳銃でちまちま削るっス!」
ちまちまと言っても、なかなかワイルドだけど!
おっ!?
頭上から何か落ちてきたぞ!?
「石が落ちてきたぞ!」
といってもブロックではなく、もっと小さい。
こぶし大の石だ。
「こうなるとドロップアイテムが邪魔っスね!」
「下から掘るのは危ないかもしれないねー」
砂ブロックを壊すとまれに石がドロップする。
上を掘れば、当然ドロップアイテムは頭上に振ってくる。
ただの石だが、当たれば痛い。
「こうなると、ヘルメットが欲しいな。
材料があれば作れるが……」
「それでは、お家に取りに戻りますかー?」
うーん、素材や忍具を持ち込めば攻略が捗るだろう。
とはいえ、勢いってものもあるし……。
いや、安全のほうが大事だ。
俺は手元の石を見る。
「石ならあるが……。
これじゃ、重すぎるかな」
忍具収納で加工すれば、なんとかなるか?
かなり加工しないといけないから、コストが高くなるんだよな。
宝石商が言う。
「ええと、軽い石が欲しいんですか?
そ、それならありますよ!」
宝石商の手に石が現れる。
灰色で、表面に小さな穴がたくさん開いた石だ。
「これはなんだ?」
「多孔質の火山岩で、非常に軽くて……。
ええと……軽石ですね、ハイ!」
宝石商は嬉々とした様子で軽石を収納から取り出していく。
どんどん出てくるな!
「軽石か!
軽いのはいいけど、脆いんじゃないか?」
「軽石のほとんどは空洞です。
これは溶岩の中に気泡が生じて……」
「すまないが、今は岩うんちくを聞いていられない」
放っておくと宝石商は石の話を延々と続けそうだ。
トウコが笑う。
「ははっ、岩うんちくんの話なら聞きたいっス!」
「トウコちゃん、邪魔しちゃダメだよー」
小学生みたいなことを言いだしたトウコはリンに任せて放っておこう。
軽石を素材にしてクラフトすれば、なにか作れるか?
うーん。
この石じゃ、ちょっと強度が物足りないんだよな。