害虫駆除と頭の痛い問題……!?
火炎放射で、穴の虫を一掃した。
「じゃ、さっそく降りてみるっス!
魔石がザクザクっスよ!」
「もう敵はいないと思うが、気をつけろ。
着地の衝撃で足元を崩すんじゃないぞ!」
「わーってるっス!」
そう言うと、トウコは残ったブロックにぶら下がるようにして降りる。
着地して、きょろきょろと左右を見回すトウコ。
「ここは空洞になってたみたいっスね。
う……あれ……?」
トウコが頭を押さえてよろめく。
「どうした!
攻撃されたのか!?」
敵はいないはずだ。
飛び道具の類も見当たらない。
まさか酸が消えずに残っていたのか!?
「う……頭がぼーっとして……あだだっ」
顔をしかめるトウコを見て、リンがあっと叫ぶ。
「さ、酸欠です!
私の火魔法で空気が……!」
リンがあわてて下に降りようとする。
俺は肩を掴んで止めた。
「リン、ちょい待ち!
俺が――入れ替えの術!」
大きく息を吸い、術を放つ。
トウコが上へ。
俺が下へ。
入れ替えが成立したと同時、ジャンプして元の場所へ戻る。
「もう一段登れ!
酸欠で倒れるかもしれん!」
「は、はい!」
リンがトウコを支え、穴から身を引く。
二人がかりでトウコをもう一段上へ上げる。
「ふう……。
ここなら大丈夫そうだ。
狭い場所で火を使うときは気をつけないとな」
リンが大きく頭を下げる。
「ご、ごめんなさい。
もっと私が気をつけるべきでした!」
「いや、リンのせいじゃない。
このダンジョンでは、空気にも気をつけないといけないんだ。
これに早めに気付けてよかったよ」
深く潜ってからでは手遅れになったかもしれない。
トウコが元気に笑う。
「そうっスよね!
いやー、身を持ってチェックした甲斐があったっス!」
「いやいや、トウコはもっと気をつけろ!
いちいち心配させるんじゃない!」
俺たちのやり取りを見て、宝石商が気まずそうにしている。
「……あの、私」
「宝石商さんのせいでもないから、気にしないでくれ。
深く掘っていくと、酸素にも気を使わなきゃいけないんだよな?」
「そ、そうなんです……。
暗いところで松明を使ったことがあって……。
その、気づいたら地上でした」
「そうか……。
宝石商さんも苦労してるんだな」
にしても宝石商さん、死にすぎじゃね?
復活なしのダンジョンだったら、到底生き残れていないだろう。
「深く掘ると暗くなっちゃうんスね!」
「うーん。
狭いから、火魔法で明かりを取るのは難しいかもしれませんねー」
明るさか。
酸素、照明、移動経路……。
モンスターだけじゃなく、いろんな問題が出てくるな!?
そういうことは早く言ってくれ!
頼むぜ宝石商!