ブロック崩しはザクザクで!
収納から愛刀を取り出す。
「じゃ、とりあえず掘ってみるか。
刀で斬ってもいいんだよな?」
「は、はい。
大丈夫です。
掘るのが一番いいですが……」
「掘ったほうがいいのは、どうしてなんだ?」
「なぜかはわかりませんが……。
刺したり、突いたりするより、砂を取り除いたほうが簡単に壊れるんです」
宝石商が片手用の園芸用シャベルを砂に突き刺す。
「ほう。
刺しただけじゃ崩れないわけだな」
「こうして、シャベルで砂をかきだしますと……」
シャベルで砂をすくい取ると、ブロックが崩れ去った。
「おお、こうなるのか!」
砂や土みたいなオブジェクトだから、か?
刺したり斬ったりするよりも、掘ることで多くダメージが入るとかね。
「トウコちゃんはジャンプで踏みつけて壊していました。
ということは、叩いても壊せるんですよねー?」
「はい。
硬い地層になると、シャベルで掘るのは難しくなってきます」
「岩はツルハシで砕くのか?」
「はい。
ピッケルやハンマーを使います」
打撃も有効、と。
「つまりダメージを与えればいいんスよね!」
「じゃあちょっと、刀で試してみるぞ」
まずはトウコが開けた穴の横を掘ろう。
もともと開いている穴はニマス分。
ここを基準にすれば、その隣のブロックがわかる。
自分の足場が崩れないよう、刀を地面に軽く刺す。
突き刺すだけでは崩れないか。
これは宝石商が言ったとおりだ。
刀をひねって、刃の腹を使う。
下から跳ね上げるようにして、砂をかき出す。
さして抵抗なく、砂が舞う。
「あっ!
崩れましたねー!
塵になって消えてしまいましたー!」
一メートル四方の砂ブロックが塵になって消える。
「おお、簡単だな!」
「モンスターを倒したときに似てるっス!」
「アイテムが消えるときとも同じですねー」
リンが心配そうに言う。
「魔法でも掘れるんでしょうかー?」
「やってみたらどうだ?」
リンがこくりとうなずく。
「では……ファイアボール!」
手から放たれた炎が、少し先の地面を焼く。
地表が燃え上がる。
火力はいつも通り。
この火力、モンスターならもう焼き尽くせているだろう。
しかし、砂のブロックは崩れない。
「あれっ?
なんで壊れないんスか?」
トウコが宝石商を見る。
宝石商が首をかしげる。
「さ、さあ?
そういえば、炎の魔石を使ったとき、壁は壊れなかったような……」
「火魔法では壊れないんですかー?
ううーん。
それは、困りましたね……」
眉根を寄せるリンに、すっと調理器具盾を手渡す。
「じゃあ、リンは盾でがんばってくれ」
フライパン盾とフタ盾のセットだ。
叩いてもいいなら、使えるはずだ。
「手で掘るよりはマシっスね!」
「ゼンジさんが作ってくれた盾があれば、安心ですね!」
むん、と盾を構えるリン。
「穴を掘りやすいかはわからないけど、がんばってくれ。
ちなみに宝石商さんはどうやって掘ってるんだ?」
「シャベルで少しずつ掘り進みます。
硬い地層に当たったら、スキルを使って……」
「へー!
なら銃で撃ってもいいんスかね?」
「いいけど、足元は撃つなよ!
遠くを撃つんだぞ!」
先に言っておく!
もう穴に落ちる芸はいらん!
トウコが足元に向けかけた銃口を、少し離れた先へ向ける。
「あ、当たり前じゃないっスかー!
あたしに同じ技は通じないっス!」
「誰も技なんてかけてないだろ!
トウコが勝手に落ちてるだけだ。
この即落ち娘が!」
「ううっ!?
反論できないっス!」
トウコはそう言いながら引き金を引く。
銃弾が命中した地面が塵に変わる。
「わあ、いいなー!
うまくいったね、トウコちゃん!」
「弾丸一発でブロック一個っスね!」
「ショットガンでやったらどうなるんだ?」
「んじゃ、どーん!」
銃身の短いショットガンが火を噴く。
地表の広い範囲がまとめて消し飛んだ。
散弾が当たったブロックがまとめて消えたのだろう。
「お、こりゃ爽快だ!
効率がよさそうだな!」
「すごいねー!」
パチパチと拍手を贈るリンと俺。
トウコが照れたように頭をかく。
「いやー、それほどのこともあるっスけど!
へっへっへ!」
ニヤニヤが止まらないトウコ。
「んじゃ俺は分身で!」
「た、盾で掘ってみます!」
ザクザクと地表を削っていく俺たちを見て、宝石商がつぶやく。
「み、みなさんすごいですね……」
まあ、それほどのことはあるけどな!
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