荒野ダンジョンは穴掘りで!
「わ、私のダンジョンは地面を掘って下へ進みます。
このあたりの地面は色が薄くなっていてですね……。
色が薄いところは、すぐに掘れます……ハイ」
足元の砂を手ですくってみる。
乳白色で、砂のような材質だ。
乾燥していて、さらさらした感触だ。
あまり掘ると足場が崩れてしまうから、ほどほどにしておく。
「へえ、砂場みたいだな」
「荒野なのに赤くないんスねー」
トウコの言葉に、リンが首をかしげる。
「荒野だと、赤いのー?」
「たしかに赤っぽいかもな。
西部劇とかドキュメンタリーで見たくらいだけどさ」
モニュメントバレーとか。
まあ、荒野といっても、場所によって違うだろうけど。
「あたしがやってたゲームだと、荒野は赤色っス!」
あ、そっちの話ね。
「いや、まてよ?
ゲームの話か。
正方形の穴といい……そういうルールか」
「どういうルールなんですか?」
「有名な、穴を掘るゲームがあってな。
壊したブロックでものを作ったり、トンネルを掘ったりするんだ」
「いろんなゲームがあるんスよ!
街を作ったりするのもあるっス」
「そうなんですねー」
レトロゲームの時代から、穴を掘るゲームはあった。
バリエーションもさまざまだ。
宝石商は戸惑っているようだ。
「え、ええと。
ゲームのことはよくわかりませんが……。
似ているんじゃないでしょうか」
「ああ、説明を遮ってすまない。
推測するより、宝石商さんの話を聞いたほうがいいな。
続けてくれ」
「は、はい。
ここの地面は、先ほどのように簡単に崩れてしまいます。
砂や土、岩のかけらは消えてしまって……。
でもたまに、石が手に入ります!」
「へえ。
必ず手に入るわけじゃないのか」
「モンスターはいないんスか?
ゾンビとか!」
「どうして土の下にゾンビさんがいるんですかー?」
なんでだろうな?
「ぞ、ゾンビはいません。
その、虫のようなモンスターがいます」
「虫タイプか……。
地表にはいないみたいだな?」
先ほどから、モンスターは一匹も現れていない。
「少し掘ると出てきます、ハイ。
む、虫は石を食べてしまうんですよ!
ひ、ひどいんです!」
嫌悪の表情でぷるぷると震える宝石商さん。
トウコが指で銃の形を作って、明るい表情で言う。
「それなら、倒しちゃえばいいっス!」
「倒そうとはしたんです。
でも、どんどん増えてしまって……。
もう手が付けられないんです、ハイ」
宝石商が肩を落とし、悔しそうな顔でうつむく。
「間引きが間に合っていないんだな……。
それはよくないな。
このままでは、このダンジョンが悪性化してしまうぞ」
「そ、そうなんです!
広告屋さんにも言われていたんですが……。
た、倒しきれなくて……」
宝石商はごにょごにょと、だんだん小声になっていく。
まあ、戦闘は苦手みたいだし、そうなるか。
トウコが手を上げてぴょんぴょんと跳ねる。
「じゃあじゃあ!
あたしが退治してあげるっスよ!
……おわあっ!?」
飛び跳ねた勢いで地面が壊れ、トウコが穴に落ちる。
「おいっ!」
何回落ちるんだよ!?
落下オチはもういいって!
しかし同じ結果にはならなかった。
トウコは落ちた先でうまく着地する。
そして体操選手のように手を上げてバランスを取った。
「とうっ!
華麗に着地っス!」
なかなかの敏捷性!
でも、それ以前に落ちるなよ!
学習しろ!
「足場が弱いんだから気をつけろって!」
「着地した衝撃で、また落ちちゃいそうですねー」
「そしたら連鎖で二枚抜きっス!」
「奈落の底まで落ち物ゲームする気か!」
「下に行くほど硬くなるので、どこかで止まると思います……ハイ」
冗談にマジレスしてくる宝石商さん。
でも、情報が出てきたな。
表層は柔らかく、深層は固い地層。
地下には虫型モンスターが増殖している。
ふむ、面白そうなダンジョンだな!
ご意見ご感想お気軽に! 「リアクション」も励みになります!