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ここ掘れうらうら!

 荒野のダンジョンや、宝石商のスキル……。

 気になることがありすぎて話が渋滞している。


 少し整理しよう。

 ここに来た目的は、情報を得ることだ。


 広告屋と付き合いのあった宝石商は貴重な情報をいくつも握っている。

 それを聞き出すには、こちらが友好的であると思わせなければいけない。


 それには信頼関係の構築が不可欠。

 魔石のトレードはそのための手段にすぎない。

 珍しい魔石や素材が手に入るのは嬉しいが、それはオマケ。


 俺は宝石商を心から信用してはいない。

 だから公儀隠密に誘うこともしない。

 彼女は白銀の部下だし、引き抜くと問題になるだろうしな。


 というわけで、宝石商とは一歩引いた関係でいることが望ましい。

 もちろん、それを口に出したりはしない。

 あくまでも、友好的な態度でね!


 これまでのところ宝石商は協力的だ。

 まあ、石に釣られているだけのような気もするが……。

 ゴブリンの魔石で釣られるとはチョロい。


「私のダンジョンは下方向に続いているので……」

「下方向に続いている?」

「どこかに階段があるんでしょうかー?」


「いえ、そうではなくて。

 足元を()()んです。

 このあたりは硬くて掘れませんが、あのあたりなら……」


 と、宝石商はトウコのいる辺りを指差した。

 それを見たトウコが分かったような顔でうなずく。


「ここを掘ればいいんスか?

 うらっ!」


 トウコが砂を蹴るようにして、足で雑に穴を掘り始める。

 犬かよ……!?

 というか、いきなり掘り始めるな!


 それを見て、宝石商が慌てた様子で声をかける。


「あっ!

 危ないですよ……!」


 トウコが、こちらを見て動きを止める。


「うぇ?

 ……あわっ!?」


 む!?

 トウコの姿が視界から消えた!


「おい! トウコ!?」


 まさか、宝石商がしかけた罠か……!?


 いや、違う。

 俺はその考えを即座に打ち消す。


 さっき、宝石商はトウコへ注意を呼びかけた。

 彼女の顔に浮かんだ驚きと焦りは本物だ。


 もし演技なら大したものだ。

 彼女にそんな器用な真似ができるとは思えない。


 ……だとすると、ダンジョンのトラップか!?


 俺は急いでトウコがいたあたりへ駆ける。

 すると、すぐ近くでトウコの声がした。


「いちち……。

 あー、ここっスよー」


 地面からトウコの顔がぴょこんと出てきた。

 バツの悪そうな笑顔で、頭をかいている。

 どうやらケガはなさそうだ。


 地面に一メートルほどの穴があいている。

 トウコは穴に落ちたのだ!


「無事か……。

 あまり心配させるなよ」


 姿が消えたのは、落ちて尻もちをついたからだろう。


 リンがほっとしたように言う。


「トウコちゃん、大丈夫?

 ケガはしていないみたい……よかったぁ」

「へへ、なんともないっス!」


 トウコが落ちた穴は……深さも幅と同じか。

 ぽっかりと空いた正方形の穴だ。


 宝石商が追いついてきて、言う。


「私のダンジョンは、簡単に掘れるんです。

 上に立ったまま足元を掘ると、落ちてしまいます……ハイ」


 トウコが口をとがらせて言う。


「もー、そういうのは先に言って欲しいっス!」

「なにがもーだ!

 トウコが先走ったんだろ!

 説明されてから動けよ!」


 俺はトウコに手を差し伸べ、穴から引き上げる。

 トウコが歯を見せて笑う。


「へへ、そーっスね!」


 宝石商は俺たちのやりとりを前にオロオロしている。

 俺は宝石商に向き直り、説明を促す。


「宝石商さん!

 すみませんが、先にダンジョンの説明をしてもらえますか?」

「あ、はい。

 そうなりますよね。

 では、トレードは後で……」


 残念そうにため息をつく宝石商。


 うーん。

 この人は石のことしか考えてないな!


 俺はダンジョンのほうに興味が出てきたよ!

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― 新着の感想 ―
「一緒にダンジョン攻略だぁ!(棒読み)」 情報収集ならダンジョンの説明を受けるのも、攻略に協力するのも、有効だよね。 トウコの迂闊さが吉と出るか凶と出るか? 即物的で直情的な行動に磨きがかかっている…
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