アレを見せ合えるなんて、ドキドキしますね!?
宝石商からいろいろ話が聞けた。
まずは広告屋との関係。
あまり親しい間柄ではないが、以前から付き合いはあった。
魔石を鑑定したり預かる役割を果たしていた。
ホテル事件では、人に魔石を埋め込んだりもしている。
石を保護する能力と、収納する能力があるらしい。
重度のコミュ障である宝石商がなぜ広告屋に協力していたか。
これは利益だ。
貴重な石を貰うため、と考えられる。
石に対する執着は相当のものだ。
会話は不得手のようだが、石の話題では滑らかに口が動く。
魔石の適性についても聞けた。
これは人の適性を見ているのではない。
石に合う人間が分かるらしい。
大罪魔石と俺たちが呼んでいる石も持っている。
強欲の魔石だ。
過去には傲慢や怠惰を所持していた。
これはもう使って手元にはない。
魔石にはいろいろな種類があるらしい。
大罪に関係する虚飾や復讐などだ。
他にも、炎や死といった大罪に関係ない魔石もあるそうだ。
宝石商は魔石だけでなく、変わった石ならなんでも集めている。
彼女は魔石を手放したがらないが、トレードには興味があるようだ。
こちらからは熱水晶や輝水晶のような石素材や、ダンジョン産の魔石を出せる。
悪性ダンジョン産の、もう手に入らないレア魔石もある。
「トレードするにしても、ここではできないな」
魔石を取り出しても消えるだけだ。
「さっと出して、さっとしまえばいいんじゃないっスか?」
「うーん。
それは無理だよ、トウコちゃん」
俺はリンの言葉を補足する。
「収納するには念じてから三秒ほど待つ必要があるからな」
方法を相談し始めた俺たちに、宝石商が割って入る。
「で、では私のダンジョンでどうですか!?
すぐそこです!
あ、石、持ってきてますよね!?」
当然みたいに言うね。
普段から石を持ち歩いている人は、かなり稀だと思うが……。
「魔石なら、少し収納にあるぞ」
「ではそれを!
それを見せてください!」
すごい食いつきだ。
まだ石を見せてすらいないのに、見せたらどうなっちゃうんだ?
そもそも、知らない人たちを自宅に招くのはどうなんだろう。
俺は自分のアパートに人を入れたいと思わない。
生活を乱されたくないんだよね。
公儀隠密の拠点なら、その点は心配ないかな。
こっちには別の問題があるけど。
秘匿性が高い拠点だし、御庭に話を通してからになる。
相手の家に行くなら、そういう心配はない。
罠の可能性は低いだろう。
「リンとトウコはどう思う?」
「ゼンジさんが良ければ、いいと思います」
「いいっスよ、減るもんじゃなし!」
渡したら減るけどな。
まあ、複数持っている石なら問題ないだろう。
「よし、じゃあ受けよう。
宝石商さんのダンジョンにも興味があるしな」
「あ、ありがとうございます!
石を見せ合えるなんて……ドキドキします!」
その感覚はちょっとわからない。
コレクターあるあるなのか?
御庭が忍者グッズを見せたがるのと似ているか。
俺も作った忍具を見せるときはちょっとドキドキする。
まあ、それならわからんでもないな。
会計を済ませ、喫茶店を後にする。
店員に変な客だと思われたかもしれないな。
認識阻害の兆候はないようだし、問題ないだろう。
ダンジョンなどの用語を聞かれたかもしれないが、ゲームや漫画の話だと思われたはずだ。
俺たちは宝石商の自宅へ向かった。
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