事情聴取は喫茶店で!
御庭たちはまだ後始末があり、ホテルに残っている。
用件を終えた俺たちは、宝石商へ聞きこみに行くことにした。
ついでに、後回しにしていたことを片付けてしまおう。
ハカセがちょちょいと調べて、彼女の自宅は割れている。
俺とリンとトウコの三人で、ハカセから聞いた住所の付近に到着した。
宝石商に連絡して、近くの喫茶店へ呼び出す。
呼び出したのだが……。
「約束の時間を過ぎたが……来ないな」
「遅いですねー」
「ビビッて逃げたんじゃないっスか」
連絡先を交換したわけでもない相手が、急に電話してきたのだ。
誰だってびっくりするし、怖いよな。
別に脅して無理やり呼び出したわけじゃない。
普通に頼んだだけだ。
出てきてくれるとのことだったが……。
俺は席を立つ。
「しかたない。
ちょっと家まで行って……」
と言いかけたところで、宝石商の姿が目に入った。
地味な普段着姿だ。
店の入り口前でうろうろして、店内をちらちら見ている。
近づいて声をかける。
「どうも、宝石商さん」
「ど、どどど……どう」
目を泳がせてうつむく宝石商さん。
とりあえず、席に案内する。
「えーと、改めて。
クロウゼンジです。
こちらはリンとトウコだ」
手で示すと、二人が挨拶する。
「よろしくおねがいしまーす」
「よろっス!」
「よ、よよよ……」
宝石商はリンとトウコを交互に見て、うつむいた。
重度のコミュ障か。
リンだってもうちょっとマシだぞ。
待っていても始まらないので、話を進めよう。
「よろしく。
俺たちに君を害するつもりはない。
安心してくれ。
といっても、難しいと思うけど……」
「は、はい……」
宝石商は席についたものの、うつむいていて顔は見えない。
リンが笑いかける。
「ゼンジさんは優しいから、大丈夫ですよー」
「店長はやらしいけど、大丈夫っスよー」
「は……えっ」
リンの言葉にうなずきかけた宝石商が、トウコの言葉にぎょっとする。
「トウコ、話が進まなくなるから余計なこと言うな!
で、宝石商さん。
さっき白銀と会ってきたんだ。
例の店のシェフを雇うとか言ってたな」
まずは共通の知人の話でも振ってみる。
知人と言うには距離感が微妙だけど。
「へ、へえ。
そうなんですね……ハイ」
一応返事はしてくれたが……視線は手元に落としたままだ。
態度はほぐれないか。
まあ、しかたない。
もともと敵対していた勢力の相手だ。
こちらは三人で、なんとなく囲んでいるような雰囲気だし。
俺が一人で相手をするより、リンたちが居たほうが安心だろう。
トウコがいると話が脱線しそうだが、和みはするし。
さらに話を振ってみる。
「その後、白銀やゴウダとは会いましたか?」
「し、白銀さんとは一度ご飯を……。
その、おごっていただきました」
「スゴいお店に連れていかれそうっスね!」
「その……す、すごかったです、ハイ」
白銀は店へのこだわりが強そうで、ちょっとめんどくさそうだ。
「じゃ、今日は店長のおごりっスね!」
「まあ、いいぞ。
喫茶店じゃ、スゴい店とは比べられないけどさ」
机の上を滑らせ、メニューを渡す。
何を頼まれようが、料金はたかが知れている。
「じゃ、じゃあこれで……」
宝石商がメニューの一点を指さす。
「チョコレートパフェですね」
リンとトウコも便乗した。
「あ、私もいただいていいですかー?」
「あたしはパンケーキとメロソーにするっス!」
店員を呼び、注文する。
俺はアイスコーヒーを飲みながら続ける。
「で、宝石商さん。
聞きたいことが色々あるんだ。
いいかな?」
「は、はい。
あの、私にわかることでしたら……ハイ」
よし。
やっと話が進んだ!
聞きたいことはいろいろある。
広告屋のこと、魔石のこと、ホテル事件のこと。
さて、なにから聞こうかな。
ご意見ご感想お気軽に! 「リアクション」も励みになります!