事件現場に戻る習性!?
部屋に戻ると、端末がちかちかと光っていた。
御庭からのメッセージだ。
「なに!?
白銀ユウヤが事件現場に現れた?」
「この間のホテルに現れたみたいですねー?」
リンも端末に目を走らせている。
「うむ、そうらしい。
でもなんで今更、現場に戻ったんだ?」
高層ホテルの事件からは日が経っている。
いまさら、何の用だ?
トウコが確信に満ちた顔で指を一本立てる。
したり顔で言う。
「それは犯人だからっス!
事件現場に戻ってくる習性があるんスよ!」
「放火魔じゃあるまいし、あの男がそんな小物じみた真似をするか?
一応、事件の黒幕……だっただろ?」
言っている途中で疑問を覚える。
黒幕のような、違うような……。
体よく祭り上げられていただけのような気もする。
「顔が良くて強いだけのポンコツっスよね!」
「よくわからない人でしたねー」
なんか評価がひどいな。
顔が良くて強い、よくわからないポンコツ……。
でも、だいたい合っている。
俺はリンたちより長く前半戦から見ているから、もう少しマシな印象だけど。
流れた妙な空気を破るように、俺の端末が鳴動する。
「お、御庭から電話だ。
出るぞ……もしもし?」
リンとトウコに断ってから通話を繋げる。
端末から、御庭の明るい声が聞こえてくる。
「やあ、クロウ君!
ダンジョンから戻ったばかりで済まないね。
今、大丈夫かな?」
「ああ、大丈夫だ」
「ちょっと、会議室に来てくれるかい?」
「わかった。すぐに向かう」
そう言って俺は電話を切る。
「俺は御庭と話してくる、待っててくれ」
リンとトウコをアパートに残して、俺は会議室へと向かった。
ダンジョンを経由すれば会議室はすぐだ。
会議室に入ると、御庭とナギさんが待っていた。
御庭は軽くうなずき、話し始める。
「さっそく本題に入るよ。
白銀君が以前の事件があったホテルに現れたんだ。
そこで、少しもめごとになっていてね。
クロウ君に対応してもらえると嬉しいんだけど、どうかな?」
「それはいいけど、詳細を聞かせてくれ。
もめごとって、どういう種類のものだ?」
「助かるよ。
現地は前回の事件の後処理がまだ続いていて、公儀隠密と特異殲滅課のスタッフがいたんだ。
そこに白銀君が現れて、特異殲滅課のスタッフと争いになってね。
今はサタケ君たちが話を聞いているところなんだ」
「白銀とトクメツがもめてるってことか。
放っておけばいい気がしてくるな……」
すごく面倒そうだ。
関わり合いになりたくない。
御庭が人のいい笑顔を浮かべる。
「まあ、そう言わないで欲しい。
僕も同行するから、なんとか場を収めてくれないかな?」
「いいけど、俺が言って聞くような奴じゃないぞ」
御庭のほうが交渉事は得意だろう。
わざわざ俺が行く意味があるのかな?
いざというときの戦力として、ってところか。
御庭が真面目な顔を作って言う。
「それが、クロウ君をご指名なんだよ。
そうでなければ僕が話すつもりだったんだけどね」
「へえ?
まあ、一応顔見知りだからな。
ちなみにキリトやキリカさんは来ないのか?」
奴らだって顔見知りだ。
「トクメツからの情報では、別件で手が空かない、ということだった。
キリカ君に確認したら、休養中ということだったよ」
すぐバレる嘘だな。
まあ、本当のことをこちらに教えるつもりがないんだろう。
トクメツと公儀隠密の仲は、あまり良くない。
休養中か……。
ポーションのような一発で回復する手段がないのかな。
そういえば、癒し手がどうとか言ってたっけ。
回復能力を持つ味方は居るはずだよな……。
「入院中ってところか。
キリトはひどいケガだったし」
御庭がうなずく。
「そんなところだろうね。
さて、急ですまないけど、これから現地に向かう。
十分後でいいかな?」
「いいぞ。
リンとトウコも連れていくつもりだ」
「うん。
よろしくね」
ということで、俺たちは車で現地に向かった。
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