誘爆は技術点で!
トウコがホクホク顔で言う。
「へへー、やっぱグレはいいっス!
曲がり角のたびにポイポイしていくっスよー!」
「いやいや、大事に使えって。
グレネードでゴブリンを倒しても赤字だからな!」
『熱水晶の熱手榴弾』は赤ゴブリンの魔石十個分だ。
十匹倒さないと元は取れない。
今トウコが投げた『安全装置付き熱グレネード』は俺が作ったものだ。
材料は熱水晶だが、今のところ入手手段が限られている。
「まあまあ、店長!
コスパはさておき、タイパはいいっスよ!」
まあね。
費用対効果は悪いが、時間対効果はいい。
「囲まれそうなときや、敵の数が多いときならいいけどな。
じっくりやれば赤ゴブリンは倒せるんだ。
ほどほどにな」
「へーい。
残りは赤ゴブ手榴弾なんで、うまく使うっス!
あ、リン姉も投げたいっスか?」
「ううん、私はいらないかなー。
魔法とあんまり変わらないし、難しそうだし……」
「そースか?」
「そういえば、リンがモノを投げる姿はあまり見ないな。
もしかして、苦手なのか?」
「苦手というより、あんまりやったことがないですねー。
練習しておいたほうがいいでしょうか?」
ふむ。
苦手というより、経験が少ないのか。
まあ、考えてみれば日常生活でモノを投げることはないからな。
女子はキャッチボールなんてしない……のか?
俺はゴミ箱にゴミを投げ入れたりするが……。
リンはそういうズボラなことはしないんだよな。
「そうか。
まあ、ムリに投げなくてもいいと思うぞ」
「はい。
そうしまーす」
トウコがポーチから熱手榴弾を取り出し、準備している。
さっそく使う気じゃねーか……。
まあ、新装備だし使いたい気持ちはわかる。
岩棚の最上部で使えればよかったけど、とっさには使えないんだよな。
残り数発は赤ゴブリンの引換品の『熱水晶の熱手榴弾』だ。
こっちは安全性が少し怪しい。
この手榴弾を材料にして、安全装置を組み込めばコストダウンになるか。
気をつけて使うなら引換品でもいい。
でも、持ち歩いているときに爆発したら危険だ。
破砕手榴弾ではないから、せいぜい体が燃えるくらい……。
って、まあまあ大惨事だ。
それでも【消火】できるリンか、俺の水忍法があれば大事には至らないだろう。
トウコ自身に火を消す手段がないのが困りものだ。
「あっ、ゴブリンが来たっス!
しかーも、いい感じに壁に水晶があるっス!」
「お、誘爆が狙えそうだな」
「ギギッ!」
ゴブリンの一団がこちらを見つけ、走り込んでくる。
その手前には熱水晶。
「トウコちゃん、がんばってー!」
「ここだっ!
誘爆魔球っス!」
トウコが手榴弾を振りかぶり……投げた。
放物線を描いて飛んだ手榴弾が、水晶のやや手前に落ちる。
床にぶつかり、手榴弾が赤熱。
起爆する。
「――アギッ!?」
熱が放たれる。
戦闘のゴブリンが両手で顔をかばうように覆う。
少し遠いせいか、ダメージは浅い。
だが、その熱は近くの水晶にはしっかりと届いた。
熱水晶がじりじりと赤熱していく。
そして、爆発した!
「ギニャー!」
四匹のゴブリンが誘爆に巻き込まれ、燃え上がる。
トウコがやりぃっと腕を振る。
「やたーっ!
誘爆でダブルポイントっス!」
威力が倍になるわけじゃないが……。
俺は親指を立てて笑う。
「いいぞ、なかなかの技術点だ!」
「なんだか楽しそうですね。
私も練習しようかなー」
リンは少し羨ましそうに笑っている。
そうして進んでいると、下り階段を発見した。
これで今日の目的は達成だ!
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